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エピローグ

力の限り一人の人を愛した彼は、文字通りその命を燃やし尽くした。

そして――彼が亡くなってから一年の時が過ぎた。

私は高校を卒業して、動物看護専門学校に進んだ。奈津の夢は、いつしか私の夢になっていたから。隆二のママは、奈津を刺した後、自首をして、今はまだ裁判中だ。


今日は、奈津のお墓参りだ。圭介の運転する車で、私と梨奈ちゃんは、山道を登っていた。圭介は今、美玖と付き合っている。そしてなんと、美玖は今圭介との子供を身籠っていた。美玖が子供を産むことに、周囲は、初めこそ反対していたのだけど、二人のあまりに幸せそうな様子にいつの間にかほだされて、今では誰もが祝福していた。美玖のママなんて、圭介といることで美玖の心の傷が癒え、元気になっていくのを見て、むしろ彼に感謝しているくらいだ。

そういえば今朝、奈津から私と美玖宛てに郵便が届いた。バレーボールくらい大きさの四角い木箱だ。綺麗にラッピングされたそれは、一目で私たちへのプレゼントだとわかった。誕生日が近い私たちのために、今日届くように、前もって奈津が準備していたんだ。私は跳び上がるほどうれしかったけれど、今日は特別な日なので、まだ、開けていない。帰ったら、美玖と一緒に見てみよう。

「ついたぞー」

圭介が車を止め、後部座席にいる、私と梨奈ちゃんに向かって言った。

「ほんとにここでいいのか?道、ないけど……」

「いいから、黙ってついてきて」

草地を踏み分け、道なき道を進む。一年前はまだ踏みならされた跡があったが、一年も来ないと、さすがに草木が生い茂って人の気配を感じさせなかった。

「なあ、今日は奈津たちの墓参りだろ?なんでこんなところに……」

「けーすけうるさいー」

「おいこらがきんちょ、圭介さんだろ」

圭介が梨奈ちゃんにそう言いかけたところで、途端に視界がひらけた。

まばゆい光が世界を照らし出す。

「うわーお」

圭介が思わず感心すると、そこには私たちの住む町が広がっていた。そして、その町に住まう全てを見守るように、一本のケヤキの木がたくましく根を張って小さな丘にたたずんでいた。

涼しい風にきれいな黒髪をなびかせて、梨奈ちゃんが言う。

「ねえ、まゆちゃん」

「なあに」

「幽霊って、いるのかな」

「さあ……どうかしらね」

「もしいたらさ、あたしね、きっと、二人ともここにいると思うの」

 梨奈ちゃんは、新芽が風に揺れる涼やかな景色を、やさしい瞳で眺めていた。

「……そうね」

私は、そういってやさしく微笑んだ。


太陽がまばゆい光を放ち世界を照らしている。


大木は自らの幹に刻まれた相合傘と、二人の少年と少女の名を、そっと見守るようにそびえたっていた。


この大木は、これから何十年、何百年先も、この美しい町を見守りつづけるだろう。


そして、大木の一枝には、風にゆらめく小さな黄色いリボンが、ひとつ―――。


                             黄色いリボン  完

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