終焉3
「これで、この事件も完結ですね」
「ああ、そうだな」
私と神谷は、首都高速をとばしながら、あの事件を振り返っていた。
「長谷部さん、僕、今でも疑問に思うことがあるんです」
「なんだ」
「高橋はどうして、警察に通報しなかったのでしょう。あれだけ手掛かりがあれば、全員逮捕できただろうに」
「……たとえ捕まったとしても、彼らはまだ十八にも満たない子供だった。少年法が適用され、少なくとも死刑にはならなかっただろう。高橋は、それがゆるせなかったのかもしれない。いや、なにより、自分の手で、果たしたかったんだろうさ」
「……結局犯人は、齋藤だったんですよね、僕はなんだか、それがピンとこなくて」
「高橋と齋藤、両方がいなくなって得したものなんていないだろう。犯人は、齋藤さ」
高橋によると、誰かが青石川に高橋と仲村汐海を突き落としたことになる。確かに、近隣の住宅からは、聞き込みの中で原付の目撃証言があった。齋藤の所有する原付の特徴が最も一致することからも、結果的に齋藤が行ったものとして考えるのが妥当だろう。
「そういえば長谷部さん、高橋の精神鑑定の結果はどうだったんですか……?」
「……いたって正常だったよ」
「そんな、正常な人間にあんな真似ができるっていうんですか。彼には罪悪感ってものがなかったのでしょうか。僕なら気持ち悪くなって、逃げ出しちゃいますけどね」
「……あったん、だろうさ。おまえと同じで気持ち悪くて、怖くて、逃げ出したくても、それでも、赦さないと決めていたのだろう」
神谷は、ゴクリと唾を呑みこんだ。
「あいつには、それが自分が一番苦しむ道だと、分かっていたのかもしれない……結局、あいつは、大切な人を守れなかった自分が、一番赦せなかったのさ」
「歯がゆいです、高橋が、あんな終わりを迎えるなんて。彼の心はとても、悪人とは思えないのに」
「善人に見えても、罪を犯すことはある。その逆もまた然り、だ。本当の悪人なんてもの、俺にだってわからん。小説じゃないんだ、お前の言う典型的な悪党なんざ、滅多に出くわさない。だから、俺たちが止めてやるんだ。人生に迷い、道を間違えた人間が、これからも、この世界で生きていけるように……」
通り過ぎていくビルの姿を眺めながら、私たちは前に前にと進んでいった。胸に渦巻くかすかな違和感から、そっと目を背けるように……。




