一日
その後、奈津は控訴をした。法廷で奈津が真実を口にすると、裁判官も、傍聴席の人々も皆、驚きを隠せず、神妙に聞き入った。
それから一ヶ月が経ち、奈津は一日だけ、保釈が許された。事件の内容に世間が同情したこともあり、義伯母さんも保釈金を出さざるを得なかったのだ。圭介も誘ったのだけれど、彼は今、美玖から離れられない。
隆二が死んでから、次は美玖まで心を病んでしまった。今は塞ぎ込んでいて、部屋からも出て来られない状態らしい。圭介は、美玖の看病につきっきりだった。
おかしな話で、一日だけ好きな場所へ行けると言われた奈津が選んだのは、町はずれにある、あかねヶ丘だった。もう季節は冬になっていて、少し肌寒い山道を歩きながら、梨奈ちゃんは一生懸命、奈津に話しかけていた。奈津はそれをうん、うんと穏やかな表情で聞いていた。その姿はまるで、年の離れた兄妹のようで、私と同じ年だというのに、奈津は幾つも年上の青年のように大人びてみえた。
「梨奈ちゃん、ほらあれ、ソフトクリーム屋さんだよ」
「ほんとだ!奈津くん、まってて!」
私と梨奈ちゃんは、奈津をおいて、ソフトクリームを買いに行った。
「ここは僕がおごりますよ」
付き添いで来ていた神谷さんが笑顔でお財布を取り出す。
「おいおい、神谷、俺たちは仕事で来てるんだぞ」
「大丈夫ですよ。長谷部さん、彼は逃げるような人間じゃない」
神谷さんがそう言うと、長谷部さんも、穏やかな表情で笑い、歩いていく奈津の後姿を眺めた。




