傷心と支え
隆二が、入院した。
精神的ストレスが原因で貧血を起こしたらしい。何者かによって、三人の少年が殺害されたと報道されてからというもの、少しずつ隆二は精神的に不安定になっていって、生気が感じられなくなっていった。当然だろう、一番の親友が連続殺人事件の容疑者だなんて、堪えられるはずがない。私ですら、ニュースを見るたび何度も昏倒しそうになった。
「僕たち、奈津に騙されていただけなのかな」
圭介が、約束を破られた子供のように、うつむきながらつぶやいた。
「本当に、奈津が仲村さんをレイプして、たくさんの人を殺してまわっているのかな」
「そんなわけないわ!変なこと言わないで!」
私は圭介を睨みつけるようにして怒鳴った。
「しょうがないだろ!奈津は今も見つからないままだ!ネットで奈津がなんて言われてるのか見てみろよ!だいたい、奈津が逃げつづける理由だって分かってやしないじゃないか!奈津の誤解が解けるどころか立てつづけに人が殺されて、奈津の疑いは深まるばかりだ!」
「あんた、次そんなこと言ったら承知しないわよ!」
「なんだよ!おまえだって本当はそう思ってるくせに!」
「二人ともやめてよ!」
美玖が声をあげた。
隆二だけじゃない。私も圭介も、まだ何も整理できていないのに、立てつづけに報道される事件に、精神的にも、肉体的にも疲労困憊だった。夜、ちゃんと眠れている者は誰一人としていない。美玖も、明日また誰かがいなくなっちゃうと思うと眠るのが怖い、と毎晩電話をかけてきていた。
「ごめん……美玖、君の言う通りだ」
圭介は何か考えるようにフウと鼻で溜め息を漏らして立ち上がると
「ちょっと、外の空気を吸ってくるよ」
と玄関の前まで進み、振り返らずに言った。
「いや!いっちゃやだ!」
圭介の言葉を聞くと美玖は圭介に駆け寄り、そのまま背中に額をうずめた。
「いかないでよ。奈津が消えちゃって、隆二まで入院して、圭介までいなくなっちゃったら、ウチはどうすればいいの!」
美玖は隆二と付き合う前、奈津のことが好きだと漏らしていた。でも、奈津にその気が全くないことが分かると、数日もたたないうちに隆二の彼女になっていた。美玖は誰かに依存しないと生きていけないのだ。
「……僕はいなくならないよ」
「いや!」
圭介は振り返ると、自分の服を掴んでいた美玖の両手をそっともどして、にっこりと笑った。
「誰が美玖のもとからいなくなっても、僕は必ず帰ってくるよ」
美玖はうつむいたまま、首をフルフルと横に振った。
「全部終わったら、また昔みたいにみんなで笑えるさ」
「やくそくだよぅ……?」
「うん、約束だ」
そういうと、圭介は向きなおって足早に家から出ていった。




