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四日目

奈津がいなくなってから、四日が経っていた。

あれから毎日、隆二と圭介、そして美玖は私の家へ集まっている。みんな、一人でいるのが不安なのだ。

「ねえどういうこと!どうなってるの!説明しなさいよ!」

美玖が叫ぶように言った。

「静かにしろ。まずは落ち着いて、状況を整理するんだ。四日前、仲村汐海が誰かに殺されて、それから奈津は行方不明だ。警察は奈津のことを血眼になって探している」

隆二がみんなを落ち着かせようと声をかける。こういうときの隆二は、誰よりも頼もしく、自然とみんなの柱になっていた。

「どうして奈津が……」

「おそらくだけど、疑われているってことだろう。奈津が仲村汐海を殺したかもしれないって」

「うそ、そんなのうそよ……」

「わかってる。おれだってそんなの信用しちゃいない」

奈津の氏名が行方不明の少年として、写真と共に報道されるようになっていた。

私はテレビに映る奈津の写真を見て、自分の胸になにやら黒々としたものが渦巻いているのを感じた。どうしてこうなったのかなんて、考えても分かる訳がない。でもどうしても、私には奈津が人を殺すなんて信じられなかった。刑事さんの言うように奈津にも人には見せない陰があったのだろうか。あんなにやさしかった奈津の義伯母さんは、報道陣の前で、自分たちは無関係だと必死に主張している。親族すら奈津を信じていないのなら、いったい誰が奈津の味方をするのだろう。それとも、本当に私の見ていた奈津は、偽りの姿だったのだろうか。私は、呆然とテレビを眺めながらそう考えた。

「でも、もし……」

ずっと考えるようにうつむいていた圭介が、口を開いた。

「もし、奈津が本当に人を殺していたら、みんなはどうする?」

「圭介」

「わからないだろ。僕たちは誰も、あの日何があったのか、何一つ知らない。覚悟はしておいて損はない」

誰も何も言わず、あたりの空気は静まり返った。

すると、隆二が覚悟を決めたような表情で言った。。

「もし、奈津が犯人だったら、おれが奈津を捕まえる。そして、自首をさせて、罪を償わせる」

「それじゃ奈津が……」

「それが一番奈津のためなんだ。罪を隠したまま、逃げつづけたとしてもどうせまともな人生なんておくれねえ……!」

「真由子は、どう思う?」

「私は……わからない。今だってどうしてこんなことになっているのかわからないの」

「奈津だよ!?そんなことするわけないじゃん!だって、今まで奈津が怒っているところも、悲しんでいるところも、ウチ、みたことないもん!」

美玖が言った。

「おれたちだけでも、奈津を信じよう」

隆二が力強く言い放つ。こういう時の隆二は頼もしい。奈津の一番の親友と言われるだけあった。

「でも、奈津はどうしてこんなにも逃げつづけているのだろう」

圭介が続けた。

「いったい何を、そんなに怒っているのかな」

「奈津は人を殺してねえ、ぜったいにそんなことしねえ、あいつはそんなことができる人間じゃない。それは小さい頃からずっと一緒にいる俺たちが一番わかっていることじゃねえか」

「それなら、警察に行って全てを話せばいいじゃないか。でも、奈津はそれをしない。いったい奈津の目的はなんなんだろう」

「……誰かが奈津を陥れた。だから、奈津はきっと逃げているんだ。そして、真実が明らかになるのをじっと待ってる」

 ユラユラと揺れる暖炉の火を見ながら、隆二が続けた。

「そうだ、おれたちが捕まえよう、犯人を。そして警察に突き出すんだ。奈津の疑いを晴らすために」

「僕は、真由子や隆二のように、幼稚園のころから奈津と一緒に過ごしてきたわけではないけど、奈津と初めて会ったとき、すぐに僕たちとは何か違うと感じたよ。それが何とは今でもわからないけど、奈津にそれを言ったら、よく言われるって、さびしそうに笑ってた」

 私は最初、圭介が何を言っているのか、よくわからなかった。

「でも僕は、だからといって奈津を警戒することはなかった。一緒にいてすぐにわかったんだ。奈津は僕たち一人一人のことをよく見ていて、大切に思っていてくれたし、いつだって穏やかに、僕たちの話を聞いてくれていた」

「その通りよ、だからウチはずっと……」

「美玖はさっき、奈津の怒っているところも、悲しんでいるところも見たことないって言ったよね。けど本当に、奈津は、怒ったり、悲しんだりしていなかったのかな。ただそれを表に出さないだけで、本当は色々なことを抱えていたのかもしれない。それを、僕たちがもっと気にかけてやるべきだったんだ。奈津ほど、僕たちの理解者はいない。でも僕たちは、奈津のことをどれだけわかってやれていたんだろう」

「圭介は……奈津がやったと思うの?」私は聞いた。

「そうじゃない。たとえば、みんなは、誰かに陥れられていたとしたらどうする?自分にとって大切な人を奪われ、その罪を被せられ、すべてを失ったとしたら……?」

圭介にそう問われると、その場にいる全員、凍りついたように黙り込んでしまった。

「もし、僕が奈津だったなら……きっと、どこまでも追いかけて……どんな形であれ復讐をするだろうな。そう、たとえば……殺す、とか」

「奈津はそんな奴じゃねえ!」

「わかってるよ、もしもだ、もしも。でも僕なら、ゆるさないだろうな、絶対」

圭介の言葉に、私たちは息をのんだ。

どうして仲村さんが殺されたのかは分からない。でも、これだけは絶対わかる。奈津は人を殺したりなんかしない。じゃああの日いったい何が……そう考えようとすると、頭が痛くなる。事件以来、いつもこうだ。

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