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捜索2

「長谷部さん、建設業に従事している高橋の伯父ですが、どうやら、彼の管理する機材倉庫が漁られていたようです」

「なんだと……何か無くなっている物は?」

「それが、もともと管理が杜撰だったようで何が無くなったのかすらも……」

「くそっ」

 私は振り降ろすように机に拳を打ちつけた。

「それと、これはあまり役には立たないとは思いますが……例の女子高生の証言がとれました」

 神谷は書類をデスクに置くと、そう言った。

 例の女子高生とは、三名の遺体が発見された黒いバン発見のきっかけとなった少女のことだ。

「女子高生の証言によりますと、三人を殺害した男は高橋で間違いないようです。当初、高橋も殺害された少年たちと仲間のように見えたと。しかし、途中で急に仲間割れを起こし、三人を襲いだしたとのことです」

「そのあとは?」

「いえ、少女は一人目が刺されたのを目撃して気を失ってしまったようで、目を覚ました時には、現場付近の公園のベンチに寝そべっていたようです」

「誰かが車内から運んだ、ということだな」

「ええ、それが本人もほとんど曖昧にしか覚えていないようで、証言としては役に立たないのですが、高橋らしき男に抱きかかえられているとき、男がボソリとつぶやいたことが聞こえたようなんです」

「ほう、それは?」

「すまない、と」

神谷の話を聞き、私はあごに手を当て、考え込んだ。

集められた情報によると、高橋に殺害された少年たちは日頃から婦女暴行を繰り返していたと見て間違いない。その中に高橋が含まれていたかは定かではないが、高橋が少年らと同行し、参加するほどに打ち解けていたのなら、もともと顔見知りであった可能性が高いだろう。とすると、高橋らしき人物と少年ら三人が数日前に一緒にいたという主婦の目撃証言が信憑性を帯びてくる。しかし、それならばなぜ、高橋は仲間割れを起こしたのか。それに、女子高生の記憶が正しいのであれば高橋はなぜ謝罪などしたのか。多くの矛盾を抱えた情報に、私は事件の本質が掴めずにいた。

「それにしても、高橋は最低な野郎ですね。少女をレイプし、その上、仲間まで殺害するなんて」

「おまえの中では、いつでも悪人が犯罪者なんだな」

「当然ですよ!悪人が罪を犯すんです」

「……そうだと、楽なんだがな」

「どういうことですか」

「おまえは真面目な新人だ。嫌でも、いずれわかる日がくるさ」

すると突然、ドシドシと大男が会議室に駆け込んできた。

「堀田か、どうしたそんなに慌てて」

「長谷部さん、新たな証拠が見つかりました」

 堀田は三十代半ばの中年太りの大男で、その巨体に似つかわしくない、繊細でマメな仕事をする。そして、そのマメなところが、堀田の刑事としての強みだった。

「これを見てください」

 堀田はノートパソコンをデスクに開くと、そのディスプレイを指した。

「新横浜駅の新幹線乗車口に設置されている、監視カメラの映像です」

そういって、堀田は動画の再生を開始した。一見すると、何の変哲もない駅のホームの映像だ。大阪行きの新幹線が到着すると、一気に人がなだれ込む。そして、一分のズレもなくダイヤ通りに新幹線は出発した。

「これが一体どうしたっていうんですか堀田さん」と神谷。

「これは……」

「流石ですね、長谷部さん。ここです」

堀田は大きな手でマウスを握ると、多くの乗客が新幹線に乗り込んでいる場面で、映像を一時停止した。

「え、どういうことですか、堀田さん」

神谷が不思議そうにたずねた。

「よくみてみろって」

堀田が指した箇所を拡大するとそこには、青南高校の制服に身を包んだ少年がいた。まさしく、高橋奈津だ。

「やるじゃないか、堀田!」

「敬語、そこ敬語!」

動画を再生しながら、堀田が突っ込みをいれる。

「それじゃ、さっそく大阪府警に連絡しますかね……」

「でも、高橋もやはり子供だなあ。何で目立つ制服姿で逃げるんだか。これじゃ見つけてくださいって言っているようなもんですよ」

「まて」

「なんですか長谷部さん。何度もチェックしましたが、もうあとはこのまま新幹線が発車するだけですよ」

「今のところ、もう一度再生しろ」

そういうと、初めから再生が繰り返される。制服姿の高橋が列車に乗り込み、そして、発車のベルの直前に他の乗客がなだれ込んでいくところだった。

「止めろ」

再生が停止する。

「ここだ、ここを拡大してくれ」

少し不満げに、堀田が私の指した部分を拡大していく。そこには、なだれ込む客の中、ひとりだけ別の車両から列車を降りている男がいた。黒いフードを被ったその男の顔を見て、その場にいる全員が目を見開いた。

「こいつは、高橋……!」

「はい、仕事、仕事」

 神谷は手の平を返したように書類を持って部屋から出ていった。堀田は自分の見落としにうなだれて、まだデスクに顔を伏せたままであった。


皆が部屋を出ていった後も、私はタバコを咥えながら自分の抱える違和感の正体を考えていた。

「高橋の目的は、いったいなんなんだ……」

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