追う者
十月十八日二十三時頃、青石川、堀之内橋より一〇〇〇メートルの下流にて、仲村汐海の遺体が発見された。少年の劈くような叫び声を耳にした近所の主婦が救急車を呼んだ。搬送後、乱れた服装と暴行された痕跡より病院自ら一一〇番通報。遺体の首には強く締め付けられたような圧迫痕があり、暴行されたのち何らかの方法で首を絞められ、殺害されたものと推測して捜査を進めることとなった。少年は病院まで同行したものの、仲村汐海の死亡が確認された後、警察が到着したときにはすでに姿を消していたそうだ。
「ふむ……」
「長谷部さん、どうですか今度の事件は」
「さあ、検死も終わっていない今の段階ではまだなんともいえんな。ただ今の段階では、強姦致死の線が濃厚だが……」
私は、わずかに蓄えた顎髭をさすりながら答えた。
「して、この少年の消息は掴めたのか、神谷」
「いえ、ですが、この少年が高橋奈津であることはほぼ間違いないようです。高橋の義伯母によると、事件後、高橋は一度帰宅し、朝四時頃、再度外出したようです」
「朝四時……か、よく時間帯までわかったな」
「同居している義伯母が早朝に大きな物音を耳にしたそうです」
「ほう、義伯母ねえ……」
高橋の両親は高橋が八歳の時すでに交通事故で他界しており、その際に高橋を養うため、義伯母一家が高橋の家へ移り住んでいた。
「まずは、高橋少年の身柄の確保からだな……」
「やはり、高橋が犯人でしょうか」
「そいつはまだわからんさ、しかし、姿を消したのには何か理由があるはずだ。それを突き止めることが先決だな。それと、現場付近での目撃証言と録画映像有無の確認、関係者への聞き込みも忘れるな」
「はい!」
神谷はハッキリと元気よく返事をした。
少女暴行事件は珍しいことではない。報道されなくとも、いたるところで多発している。かくいう私も、同様の事件を何度も取り扱ったことがあった。




