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強い日差しが、僕の皮膚を刺す。僕のどんよりとした心境など知ったことではないとでもいうかのように、皮肉にも、空はカンカン照りだった。

「なーつくん」

 背後から、僕を呼ぶ声がする。ついこの間までは、この声は何よりも僕を幸せにしてくれるものだった。けれど、今は、ただ、僕の中の憎しみをあふれさせる。

「なつくん?ほら、一緒にかえろ」

 何も、返事をしなかった。できなかった。

「もう、冗談はやめてよね。わかった、わたしがふざけて冷たくしたの、真似してるんでしょ」

 汐海は無邪気な子供のように、前のめりになって僕の顔を覗き込んだ。

「なつくん、あさっての遊園地楽しみだね」

「わるい、そこ、どいて」

「え、え、どうして……」

 おまえの父親のせいで……と悪態のひとつでもついてやりたかったけれど、彼女を前にすると、ただひたすら悲しい気持ちになってしまい、何も言えなくなってしまう。

彼女は状況が呑み込めなくて、困惑しているのだろう。オロオロとしながら、いつもより早足で歩く僕に遅れないよう、一生懸命についてこようとした。

「な、なつくん、あのね、聞いてみたらあさって……」

 僕は何も聞こえなかったかのように歩きつづけた。

「なつくん、あのあさっては……」

僕は彼女のポケットに遊園地のチケットを差し込んだ。

「それ、やるよ。僕はもういらないから」

僕がそう冷たく言い放つと、彼女はとてもさびしそうな表情になり、それ以上ついてくることはしなかった。

振り返るようなことはしなかったけれど、彼女はきっと悲しい表情をしていただろう。親の仇の娘とはいえ、僕は彼女の傷つく姿をみたくなかった。


だから、僕は彼女から目を背けたんだ。


次の日、汐海は駅の出入り口でうつむいたまま僕を待っていた。僕が視線すら交わさずスタスタと通り過ぎると、誰かが僕の袖をつかむ。その手はかすかに震えていた。振り返らずとも、誰かは分かっていた。汐海は、袖を掴んだまま消え入りそうな声で言った。

「ねえ、まって……おねがい」

僕は振り返りもせず、迷うこともせず、ただ無言で、その手を振り払った。

もしかしたら、彼女は何も知らないのかもしれない、彼女の父親がどんな人間であれ、彼女には何の責任もないのかもしれない。そうわかってはいても、僕はどうしても彼女がゆるせなかった。

 その日、僕は家に帰らず、あかねヶ丘に行った。

 僕は泣いた。汐海の大好きな景色を前に、やり場のないあふれ出る感情を、地面にぶつけるようにして泣いた。汐海のことが好きだった。自分でもどうしてこんなに好きなのかわからないくらい、好きで好きで、どうしようもなかった。汐海が親の仇の娘だろうが、どこの誰だろうが関係ない、今すぐにでも駆けもどって、この手で抱きしめたかった。

けれど、父さんと母さんとの思い出が、僕の足に重い鎖をつけていた。僕は何もできないまま、夕陽を前にくずおれた。あざやかな夕焼けが、涙で濡れた僕の頬を照らした。

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