表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/65

僕は、いつもどおり駅で汐海を待っていた。毎日のことなのに、今日はなんだか、そわそわして落ち着かなかった。すると、一人の女の子が階段を下りてくるのが目に入った。

「しおみ」

 僕が声をかけると、汐海は聞こえなかったのか、うつむいたままスタスタと通り過ぎてしまった。あれ……?いつもなら、にこっと笑い返してくれるはずなのに……。

「汐海、どうしたの?」

 汐海は僕の言葉を無視して、黙々と歩きつづける。

「あのさ、僕、汐海に見せたいものがあるんだよね。今度、時間あるかな?」

 今までも、汐海が急に冷たくなることは時々あったので、僕は慣れたように話しはじめた。黙っていても、いつも汐海は僕の話をちゃんと聞いている。

すると、途端に汐海は立ち止まって振り向かずに言った。

「もう、ついてこないで」

予想もしていなかった言葉に僕はびっくりして、理由をたずねようとしたけれど、そんな間もなく汐海はつづけた。

「奈津くんの家がお金ないなんて嘘でしょ!この町で一番立派な家に住んでるくせに!私が貧乏だから、見下してたんだ!」

 一瞬、汐海が何を言っているのかわからなかった。何で汐海が怒っているのかがわからなかった。そしてすぐに、僕が汐海のクラスに行ったことを知られたのだと気づいた。

「そうじゃない、僕は君が……」

「うそ!どうして嘘つくの!」

汐海の目からハラリと涙がこぼれ落ちる。

「汐海、ちが……」

「ちがわない!クラスには来ないでって言ったのに、約束したのに!同情なんかされたくない!!」

そういって汐海は小走りになって橋を渡っていく。このまま行かせてはいけないと思った。行かせたくないと思った。僕は、汐海を追いかけて、そして、橋の中腹で僕は彼女の小さな手をつかんだ。振り返って僕を睨みつける彼女は、泣きながら、震えていた。

「もう放っておいて!いったでしょ!もしクラスにきたら嫌いになるって!」

「嫌いでもいい!」

僕は精一杯声を張り上げた。

「君を守れるのなら、いくらだって嫌われてやる!」

「でも、わたしといたら奈津くんまで傷つくんだよ!気づいてるでしょ、奈津くんまで、悪口いわれてるの」

「そんなことはどうだっていい、君がいなきゃダメなんだよ。僕にはもう、君がいない世界なんて考えられない」

泣き崩れそうな汐海を、僕は抱き寄せて言った。

「悪かった、もう二度と嘘はつかない。そばにいてほしい」

「……うん」

橋から町を眺めると、そこには、汐海の大好きな夕焼け色に染まった青石川と黄金の田んぼの風景がいっぱいに広がっていた。


そばにいてほしかった。ただ、それだけでよかった。その笑顔がみられるのなら、他には何もいらなかった。同情なんかじゃない、僕に、君が必要だったんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ