予感2
最近、私の話はほとんど奈津の耳に入っていないようだった。それも、奈津が仲村さんと一緒に帰るようになってからずっとだ。私は、奈津のことが心配だった。仲村さんに影響されて、悪い道へ進んでいかないか。幼馴染として、私が奈津を守ってあげなくちゃいけない。
「奈津、最近どうしたの」
「べつに」
奈津は素っ気なくそう言った。
奈津はいつも明るく暢気で、他人の怒りなどどこ吹く風とのらりくらりとかわしてしまうような人だった。落ち込んでいるところも、本気で怒っているところも見たことはない。能天気に見えることもあるが、私はそんな奈津が好きだった。けれど、今日の奈津はいつもの奈津とはまるで別人だ。険しい表情で、何かをずっと考え込んでいる。こんな奈津は、今まで見たことがなかった。
「汐海は、どうして今日学校を休んだんだろう」
「また仲村さんの話?最近いつもそれじゃん」
「美玖、そういえば仲村と一年の頃仲良かったよね?」と圭介。
「えー、そんな子知らなーい」
美玖はそういって隆二の腕にしがみついた。
「あたしね、この前B組に行ってみたの。でもあの子、授業中も休み時間も、机に丸くなって寝てばかりなのよ」
「あっそ」
「なにそれ、奈津まで陰で変なこといわれてるんだよ!仲村さんを奈津がストーカーしてるって!」
「ほっときゃいいんだよ、そんなもん」
「それにあの子、行動も色々と変なんだから!休み時間にあの子がゴミ箱あさってるところをいろんな人が見たっていってるし、天馬にも目をつけられてるし!」
私が当てつけのようにそういうと、奈津の表情が一変した。
「天馬?天馬が、あの子に何かしたのか?」
私は、しまったという風に口をつぐんだ。
奈津は不安そうな表情で私をジッと見ている。
「真由子、話してやれ」
圭介が促すと、私はあきらめて、口を開いた。
「この間、放課後のチャイムが鳴ったあとね、天馬がうちのクラスに来たの。仲村さんの机を男子数人で囲って、遠くてよく聞こえなかったけどなにか話をしているみたいだった」
「どうして天馬が……」
「それでね、急に天馬が顔を真っ赤にして怒鳴って、仲村さんのバッグからなにかを取りあげて、それを足で……」
そこまで話すと、奈津はなにがあったのか、理解したようだった。表情の強張る奈津に、私はつづけて言った。
「ねえ奈津、お願いだからもうあの子に関わるのやめてよ。これ以上関わったら奈津まで……」
「ごめん、先に帰って。確かめたいことがあるんだ」
私は、走り去っていく奈津の後姿を見つめながら、やっぱり話さなければよかったと、そう思った。




