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【電子書籍化】騎士様と厩番  作者: 市川 ありみ
第2章 王宮軍部
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ヴァルテル中尉とトリクシー

「アリシアちゃんも程々にしておかないと、いくらフェルディナンド中佐が女性には優しいからって調子に乗るとあとが怖いよ」


 クスクスと笑いながら、先程までバームスがいた洗い場に黒髪の男性が馬を連れて入ってきた。


「ヴァルテル中尉、遠征お疲れ様でございました。トリクシーもお疲れ様」


 男が連れてきた馬にも労いの言葉をかけてよしよしする。


ヴァルテルはフェルディナンドの下についているというのと同期と言う事もあってよく一緒にいる。


 士官ともなると自分の地位に確固たる物があるからか、下級兵と違いアリシアにも気軽に話しかけてくれる。

 特に女性の厩番はアリシアしかいないので、士官達は割と優しく接してくれるのが他の厩番や下級兵達は余計に気に食わないらしく更なる不興をかっている。悩ましい。


「フェル様は私の事を女性として見てないですよ。からかっているだけです」


「そんな事ないと思うよ。その服だってアリシアちゃんのために用意した特注品でしょ?」


 軍部へとやって来たアリシアに用意されていた作業服は、他の厩番たちと同様、ブラウスにベスト、ズボンだった。そこまではいい。


 他の人のは無地なのに、アリシアのだけベストとズボンに可愛らしい花模様の刺繍が施され、ベストの脇なんてご丁寧にレースアップまでされている。


「どう考えても遊ばれているとしか思えませんけど……。ヴァルテル中尉、戻られたばかりでお疲れではないですか? トリクシーの担当を呼んできますか? それとも私でもよければやりますよ」

 

 ヴァルテルは隣でトリクシーの馬装を外して手入れをし始めた。


 専属の厩番が付くのは上級士官からで、中級士官のヴァルテルに専属はいない。


 馬の馬装や手入れは自分でやるか、その馬の担当になっている厩番に任せるか、なのだが、ヴァルテルは割と好んで自分でやっている。


「アリシアちゃんに手入れを頼んだなんて知られたら、フェルディナンド中佐に今度はボコされちゃうよ。あんな独占欲の強い方だとは思わなかったなー」


 以前、手入れの終わったヴァルテルの馬を洗い場から馬房へと連れていこうとしただけなのに、ヴァルテルはフェルディナンドに「勝手に俺の厩番を使うな」とか言って怒られていた。


 どんだけ度量が小さいんだ、まったく。


「それにその中佐の方はと言えば、帰ってきて早々に調教付けてるし。今朝の帰りの道中でも魔獣と一戦混じえてきたって言うのにね」


 「体力バカですね」という言葉をすんでのところで飲み込んだ。そんなこと言ったら鞭打ちにでもされてしまう。


「普通遠征から帰ってきたらまず上官に報告するものじゃないんですか?」


「会議中で終わるまで暇だから、らしいよ」


 ヴァルテルが苦笑しながら肩を竦めてみせる。


 こう言う所がこの男とフェルディナンドの差なのかもしれない。


 ヴァルテルはフェルディナンドと同期だけど、フェルディナンドよりも何歳か年上に見える。


 ヴァルテルの胸元に群青の騎士の証である瑠璃がはめ込まれた勲章が付いている所を見ると、決して出来ない側の人間ではなく、むしろ活躍しているんだと思う。

 それなのに3階級下。



 普通なら妬んだり、疎ましくすると思うんだけどなぁ。



 そんな様子もなく、むしろ軍部で1番仲が良さそうだ。


 ヴァルテルの心が広いんだな、きっと。

 

 心の中でうんうんと頷きながら、ヴァルテルとトリクシーのイチャコラする様子を眺める。



トリクシーは正真正銘、ヴァルテルの馬だ。



 軍部にいる馬は基本的に軍のもの。

 ただし例外があって、騎士の称号を得た者の特権として自分の馬を軍で所有できるようになる。

 馬自体の購入費用は自分で出さなければならないものの、軍の厩舎で置いて世話をして貰えるので餌や人件費といった費用が全く発生しないのだ。


 金持ちのフェルディナンドなんて10頭の馬を所有している。しかも馬車に乗るより直接馬に乗る方が好きだからと、比較的安く手に入る荷車用の馬はいない。常用馬と物凄く高値で取引される軍馬ばかりだ。


 訓練された軍馬の値は庶民の年収のウン十倍。


 王子様はいいよなー。と思う一方で、フェルディナンドやヴァルテルの様な人に使ってもらえる馬は幸せだと思う。



 兵の中でも馬をただの道具としてしかみなさないような輩もいるけれど、ヴァルテルやフェルディナンドは馬を物凄く可愛がる。



 馬好きに悪いヤツはいない。



 単純思考のアリシアはヴァルテルの事を好意的に見ている。



 ま、好意的に見ていると言うだけでそれ以上の感情は無いし、この人には奥さんいるんだよね。


 ヴァルテルは伯爵家の次男で、跡取りのいない伯爵家のお嬢さんと結婚したらしい。正に逆玉の輿の成功例。伯爵家に生まれたって次男じゃ家督も爵位も継げないもんね。


 伯爵家の跡取りになったのに軍部にいていいのか聞いたら、既に2人の男子に恵まれているので割と自由にやらせてくれているらしい。


 そもそも論として結婚していようがいまいが、アリシアは全く対象外だろうけど。


 厩番仲間からも下級兵士からも疎まれているし、父の「孫を抱いてから死にたい」と言う願いは養子にきた兄さんに叶えてもらうとしよう。

評価や感想、ブクマありがとうございます∩(´∀`)∩ワァイ♪

読み専さんはなかなか分からないかも知れませんが、そのワンタップ、ワンアクションが執筆の大きな糧になります( *˙ω˙*)و グッ!

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