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【電子書籍化】騎士様と厩番  作者: 市川 ありみ
第7章 馬を訪ねてどこまでも
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馬を大量に王子買い

「いいっ! いいっ!! 何これ最高! この子達に馬車を轢かせたら……カッコイイ……ウルトラスーパーカッコイイ! ああぁもう想像するだけでヨダレが……はっ……ふっ、不整脈が……っ」


 これまであの特徴的な歩様をするのはフィンダスだけなので、1頭立ての馬車しか轢かせられなかった。ずっと多頭立てで馬車を轢かせられたらと思っていたので夢が現実に近づいてきた。


「この人頭大丈夫かい?」


「ええ、気になさらないでください。無類の馬好きでして」


「おじさん、この馬1頭幾らですか?! 例えばあの左端にいる牡馬は?」


 もちろんアリシアは見る為だけじゃなくて、買い付ける為に遥々キシュベルからやって来た。予め幾らまでなら出せるか父と相談してある。


「んん? アイツならそうだな。この位か」


 おじさんが指を2本立ててみせる。


「2フォリント!? それなら3頭くらい買える!」


「はっはっはっ、2フォリントなんて冗談だろう? 20クーナルだよ」


「ににに20クーナル?! おじさん正気ですか?」


 1フォリント=20クーナル


 普通、荷車用の馬の相場は20~30クーナル。軍馬で最上級クラスだと60フォリント、つまり1200クーナル程する。


 軍馬としての調教がされていなくても、アリシアの見積もりでいくとこの馬なら荷車用で貴族向けに3フォリントで売れるのに……! しかもパッと見た感じ、軍馬の素養を持っていそうな子も沢山いる。20クーナルなんてこの馬の質からすると投げ売り価格だ。


「キシュベルの馬の価格とそんなに大差ないだろう? それともなんだい、もっと高値で買ってくれるって言うのかい?」


「え、いやー、えーっと……20クーナルでお願いします」


「って奥さんは言っているけどね。旦那は良いのかい?」


 奥さん……?

 旦那と呼び掛けたおじさんの目線はフェルディナンドに向かう。


「え、おじさん、私は奥さんじゃ……」


「ええ、あちらの馬は20クーナルで買わせて頂きたい」


 満面の笑みを浮かべてフェルディナンドがアリシアの言葉を遮りずいっと前に出てきた。

 後ろでヴァルテルが口元を押さえて笑いを堪えている。


 おじさんの目はさっきから確かなんだろうか?


 馬を見る目がないし、私が奥さんに見えるなんて……。

 いくらフェルディナンドがごく普通の服を着ていて、アリシアがお出かけ用にちょっと良い服を着ているからってそれはないでしょ。なんならヴァルテルは夫婦にくっついて来た下男か何かに見えるのだろうか。


「それから他に売っても良い馬は何頭くらいいる?」


「今すぐならざっと30くらいかね」


「全て買ってしまっては島の人が困りますよね。それなら性別をなるべく半々で20貰おう、騸馬抜きで」


「ええぇ? フェル……アドリアン様何言ってるんですか?!」


 なに大人買いならぬ王子買い? しようとしてるの!?

 馬だけの値段でも予算を大幅にオーバーしているのに、キシュベルにある牧場まで連れて行くとなると相当なお金がかかる。連れて行くまでにかかる人件費や餌代、厩舎代はまた別なのに!


「ほおー、気前がいいね。でも船代やキシュベルまでの連れていくのに随分と運賃がかかる事になるけど、その辺は大丈夫なのかい?」


「ええ、構いません」


「そそそそんなお金出せませんよ」


「何を言うんだい、奥様? 商売の為に《《私が》》買うんだから問題ないよ」


 空いた口が塞がらない。


 フェルディナンドはポンポンとアリシアの肩を叩くと、商談を進めに牧場主と事務所の方へと行ってしまった。





 空は曇っているのか星も月も見えない。


 たんまりと馬を買ってくれたアリシア一行を快くおじさんは泊まらせてくれた上、上機嫌でもてなしてくれた。

 御馳走をいただき、湯浴み用に風呂まで沸かしてもらって至れり尽くせり。


 アリシアは寝る前に、船酔いをしてしまったクルメルの様子を見に厩舎へやって来た。


「うん、大丈夫そうだね。良かった」


 調子を取り戻していそうなクルメルを撫でると、気持ちよさそうに鼻づらを擦り寄せてきた。


「あれ、アリシアちゃん?」


「ヴァルテル中尉、どうしたんですか」


「クルメルの様子を見に来たの? 僕は気分がちょっと……外の空気でも吸ってこようかと思って」


 ヴァルテルが暗闇の中からお腹を擦りながらやって来た。今は2人きりなので、偽名のイムレではなくヴァルテルと普通に呼んだ。


「海の幸、私は美味しかったですけどね」


「あはは……あのタコとかいう奴はちょっと引いたよ」


 この牧場主のおかみさんが振舞ってくれたのは、魚介類をふんだんに使った料理だった。

 内陸国のキシュベルではほぼ畜肉と乳製品で、魚介をほとんど食べない。食べても川魚や小さなカニ・エビくらいで、ロブスターと言う巨大なザリガニ風のエビが出てきた時には驚愕した。


 ヴァルテルはタコと言う、ぐにゃぐにゃした気味の悪い生き物がダメだったようだけど、人様が用意してくれたものを残すなんて事はしない人柄なので、青ざめながらも必死で食べていたのが笑えた。

明日は投稿お休みします( -_-)zZZ また金曜日にお会いしましょう〜

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