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元天使は今を生きている  作者: なぁさん
ただの特別な一日
8/12

これからも私…いや、私達の『今』を見守っていてください。

 皆で昼食を食べた後、イオンとグレイ、ビットはローテーションを組みながら一対一で戦い、私はエミリアの魔法の勉強を見てあげていた。途中でイオンが混ざり、更にその後グレイも参加しだして結局訓練所からギルドの食事処へ移動し端の席を借りて私が講師役として魔法の勉強会をして過ごしていた。

 いくらか経った頃にグレイとエミリアは街の散策の続きに戻ると別れ、私達はギルドの掲示板にある依頼をだらだらと物色していた。


「うーん……これは違うなぁ……」


 数ある依頼書を眺めながらイオンが呟いた。違うとはいったいなにが違うのだろうか…


「違うってなにがだよ。」


 ビットも疑問に思ったのだろう。ストレートに疑問を口にした。


「今からパパっと出来るものないかなぁって見てたの。こう……これだ!ってものがなくてさぁ?」


「さすがにそうゆうものは朝の内に他の人が持ってっちゃったんじゃないかな?」


 掲示板にある依頼は我先にと皆朝から取っていくので、今貼り出されているものはそんな血気盛んな人達が取らなかった雑用事や厄介な仕事などの俗に言う『旨味がない』ものばかりなのだ。

 イオンの言うパパっと出来る依頼はパッと見あるにはあるのだが、ここには今彼女が魅力的に感じるものはないようだ。


「それはわかってるんだけどさぁ?なんとなく探したくなるじゃん~?」


 本人もそれは分かっているみたいではあるが……まぁ、探したくなる気持ちは個人的には分からなくはない。


「そうか?ならないだろ、無いと分かってるのに。」


「「……………」」


「な、何だよ………ヘデラさんまで何なんですか…」


 私たちが周りの邪魔にならない程度に掲示板の前で雑談してると、今朝森の前で会ったガレットが声をかけてかた。


「よう、おふたりさん。と、うさぎ野郎。」


 様子を見るについ先程帰ってきたのだろう。他の人達も受付カウンターの方に見えた。

 ちなみに、うさぎ野郎とはビットの事だ。


「リーダー!おかえりなさい。」


「おう。イオンと天使様のおかげでいい薬草が取れたわ。ありがとうな。」


「いえ。ミカちゃ……あ、お兄さんに捕まってるのね。ミカちゃんにも怪我無さそうでなによりだよ。」


 ミカの兄はギルドに勤めている。妹のミカが大好きみたいでスキンシップが少し激しく今回もミカは捕まってしまったようだ。

 すぐさまイオンが救出に向かっていった。


「ミカの嬢ちゃん様々だな。……畑からは目的の薬草を最低限しか採取してないからそこは安心してくれ。」


「ふふ。気を使ってくれてありがとう。でもそれで数は足りてるの?」


「森からも採ったからそこは大丈夫だろうよ。まぁ質は段違いだったけどな、本当に助かった。」


 そう言ってガレットは軽く頭を下げた。

 カウンターでのやり取りが終わったのだろう。イオンが兄から解放したミカを連れてきて、ニックがガレットに呼び掛けてきていた。


「おう!じゃぁ、俺はもう行くわ。うさぎ。今晩店は開けるのか?」


「やるぞ。臨時バイトもやる気だしな。」


 ビットが帰ってきたイオンの頭をポンポンと叩きながら答える。当の本人は疑問符を浮かべているし、私も聞いてない。


「そうか。じゃぁ寄らせてもらうわ。」


「えっ、何で?!私聞いて…「おう。腹空かせてからこい。」…ちょっとぉ!?」


 ガレットが戻っていくのを確認してからイオンがビットに詰め寄った。


「ビットさん私聞いてないよ!」


 いつもなら数日前ぐらいには話を通すはずだが、どうしてか急に手伝う事になってるのだろうか…


「だって午前中の時ににお前が言い出したんだろ?『負けたら勝った方の言うことを何でも1つ聞く』って。今その何でも1つを聞いてもらうわ。」


「うぐっ……!」


 イオンが私に目で助けを求めてくる。


「………今日のお夕飯はビットくんのところでだね。ミカちゃん一緒にどう?」


「いいんですか?やった!ごちそうさまです!お兄ちゃんにも言ってきます。」


 そう言ってミカは兄の元へ駆け出して行った。


「……さて。俺もぼちぼち準備始めるんで失礼します。ヘデラさんこの後は墓参り行くんですよね?いつもの用意しておくんで。」


「…うん。ありがとう。」


 私が毎年この時期に頼むものをもうすっかり覚えてくれてるみたいで嬉しいが少し恥ずかしい…


「イオン…逃げるなよ?」


「逃げないよ…逃がしてくれないし…」


 そう言ってチラッと私を見る。もちろんですとも。頷いて返す。


「ふふ。少し急いで行こうか?」


「いえ!ゆっくり向かいましょうお母様!」


 ビットと別れ、二人で目的の場所へ向かう。

 朝見たありもしなかった夢と昔の旅していた日々を思いながら。

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