自分が関わった子供達の成長は嬉しく感じるものですね。
軽く体をほぐしてから、お互いに向き合い自分の得物を構える。
グレイは訓練所に貸し出されている刃を潰してある直剣を両手でしっかりと持ち、正面にかまえる。一方、私も同じく貸し出されてる短剣を右手で持ち、左手はフリーに。もちろん。刃は潰してある。
「さて…っと。どこか「あれ?」…イオンちゃんどうかした?」
これから始めようとしてた時に観戦に回っていたイオンが声をあげた。
「いや……なんでもない。」
「そう?じゃぁ改めて……グレイ君、どこからでもいいよ。」
「では……行かせてもらいます!」
開始直後にグレイが接近して私との距離を詰めてくる。一撃ずつの威力は軽いものの、手数で攻めてくる攻撃は本来魔法を主体に戦う私にとっては正直つらい。
グレイの攻撃をいなしつつ隙を窺う。一回一回の動きの隙を最小限にして私の動きを抑制してくる動きになかなか攻撃に転じることができない。
…毎回相手をする度にしっかりと強くなってるのがわかって少し嬉しくなるなぁ……
「………グレイ君も強くなりましたね。」
「!ありがとうございます…それなりに鍛えてはいますから。このまま押しきらせてもらいます!」
「……っ!」
グレイの剣撃更に速く重くなってきた。自身の魔力を体に巡らせ身体能力を上げて宣言通りこのまま押しきるつもりのようだ。
「身体強化の魔法も淀みなく使えていますね…」
「攻撃魔法は不得手ですから……その分、身体強化はしっかりと訓練していますっ!」
何とかグレイの猛攻を凌いでいく。
そして、私が剣を弾いた時にグレイが少しぐらついた。
(―――今っ)
左手に魔力をタメすぐに放ち、グレイを押し飛ばして距離を作った。
「…くっ!」
「『聖氷』っ!」
また距離を詰められる前にグレイの上半身を狙って魔法で作った氷を飛ばして牽制する。
あくまでも訓練なので威力は下げているが、当たり所が悪ければちょっと痛いから気を付けて欲しい。
「……『魔法付与・フレイム』っ!」
氷を弾いていたグレイが剣に炎を纏わせた。威力が低い氷は剣を振るっただけで溶けてしまった。
グレイは炎を纏った剣で氷を消しつつ再び接近しようと奮闘していたが、8、9回剣を振った直後に魔法付与を解き膝をついてしまった。
「ハァ……ハァ……ここまでのようです…参りました……」
魔法を解きグレイに近づく。
「お疲れ様。手を貸すよ。」
「あ、ありがとうございます。」
戦闘が終わり、観戦してた皆も寄ってきた。
「お兄様大丈夫ですか?天使様もお怪我されてないですか?」
「ああ、大丈夫だ。ただ魔力を使いすぎたな…不甲斐ない…」
「グレイ君は元々体内の魔力が少ないからね。それにしても、身体強化はホントに上手になったね!魔力の流れが綺麗だったよ。それに、少しずつではあるけど体内の魔力量も増えてるね。」
「ねぇなんでグレイくん魔導具身に付けてなかったの?」
グレイは生まれつき体内の魔力量が極端に少なく、それを補うために専用の魔導具を常備していた。魔法を使う補助として体外から魔力を集めるものだ。
ただ、今回は魔導具を装備していなかった。
「四六時中魔導具を身に付けてる訳ではないだろう?それにいつまでも魔導具頼りでは格好がつかないしな。」
「ふ~ん…気にしすぎじゃない?」
「ああ。そんなに焦らなくても大丈夫だろ、グレイ様もイオンとこれから学園に行くんだから。まぁ、格好つけたいって気持ちはわからなくもないがな!」
「お兄様も男の子ですわねぇ。」
「茶化さないでくれリア…」
「!…………よしっ。少し早いけどお昼にしようよ!いいよね、母さん!ビットさん!」
「…イオンちゃんもうお腹すいたの?」
「せ、成長期だからね私は!!」
「フフ…そうだね。成長期だもんね。いいかな?ビットくん。」
「ええ。グレイ様とエミリア様はどうされますか?」
「お兄様!私ここの食事気になります!」
「そうか。では昼はここで皆と一緒に済ませようか。」
「よし、席押さえにいくよリアちゃん!ビットさんが奢ってくれるみたいだからいっぱい食べるよ!」
「は!?そんなこと言ってねーよ!待てコラ!」
ビットに奢らせようと急に元気なったイオンとエミリアの後を追うように私たちも訓練所を後にする。