手紙に書くネタとしては良いのではないか、なんて考えてみたり…
冒険者ギルドには多くの冒険者が来ていた。軽い飲食もできる食事所を併設してるため、ちらほらとそちらにも冒険者がたむろしていた。
たむろしてる人たちの一部は見慣れない…おそらく他所から来た人達だろう。
「あ、ヘデラ様!こんにちは~!イオンちゃん達はまだ訓練場にいますよぉ~。」
「こんにちは、ありがとうルカちゃん。」
ギルドの新人受付嬢…ルカが私を見つけてすぐに教えてくれた。
「いえ~。私もさっきまで見学をさせてもらってたんですけど…凄いんですよぉ~!お二人ともこう…シュババッて!サッとしてガッて!もう…凄かったですよぉ~!!!」
「そ、そっかぁ…」
ルカが目をキラキラさせながら二人の様子を勢いよく教えてくれる。まだ少し興奮してるのか、語彙力が酷いことになってる…
「それで更にですねぇってあぁ……!あたしもうお仕事に戻らなきゃなので…失礼しますねぇ~。」
「う、うん。またね。」
嵐のようなってあんな感じなんだろうなぁ…
元気だったルカと入れ替わるように訓練所の方から目に見えて疲れてる様子のイオンとビットが歩いてきた。
……なんか二人を見てると落ち着いてくる気がする。
「あ、母さん!やっと来た!」
「イオンちゃん、ビットくん。お疲れさま。これから向かうところだったのだけれど……その調子だとイオンちゃん、ビットくんをコテンパンにはできなかったみたいだねぇ。」
「うぐっ…ま、まだ本気じゃなかったし?これからだし?」
「……そのわりには後半は結構ムキになってなかったか?」
「そ、それはビットさんの気のせいじゃないかな…?と、とにかく!少し休んだらもう一回だよ!」
「はいはい。………ん?あれって…」
「どしたのビットさん?」
「あぁ…ほらあそこ」
ビットがなにかに気がついたのかギルドの入り口の方を指差した。私達がそちらを向くと、イオンと同年代ぐらいの少年と隣に小さな女の子がいた。
「あれ?グレイくんとリアちゃんじゃん。なにしてるんだろ?」
領主の息子…グレイと妹のエミリアがギルドに来ていた。屋敷で会わなかったのはすでに出掛けていたからなのか…
「あ、お兄様!天使様とイオンお姉様がいらっしゃいました!」
私達が気が付いて間も無く、兄妹達もこちらに気がついたようで、こちらに合流してきた。
「道すがらイオン達がギルドに居ると聞いたから来てみたが本当だったな。」
「わざわざ会いに来てくれたの?」
「ああ。リアが二人に会いたいと聞かなくてな。」
「お兄様こそ訓練を観たいとおっしゃっていたではありませんか!」
「まあな。まだ訓練はしていないのか?」
「いや?ちょうどさっきまでやってて、今は休憩しに来たところだよ。」
「ふむ……………ならば……ヘデラ様。」
イオンの回答を聞いてグレイが少し考え事をした後、私に話しかけててた。
「なにかな?」
「俺と一戦してくれませんか?」
何となくわかってはいたが、実際に言葉にされるとそれはそれで驚いてしまう。
「えーっと………うん、私でよければ。でもあまり期待はしないでよ?」
『今日はあまり調子がよくないから』なんて実戦では言い訳にもならないだろうし…なにより、子ども達の前では少しくらい格好つけたいなんて思ったりもする。
ほんと今日は情緒が不安定かなぁ……私。
「お兄様、天使様と訓練なさいますの?なら私、天使様を応援しますわ!」
「母さんファイトー!」
「なら俺もヘデラさん側で。」
「君たち……少しくらい俺にもついてくれたっていいんじゃないか?」
「あはは……じゃあ行こうか。」