娘の成長には驚かされてばかりです。
英霊祭。過去の大戦で死していった者達、そして終戦へと導いた英雄達を讃える為の祭りであり、今を生きる者達にとっても過去を忘れないためにも大切な祭典である。
この辺境の街には英雄が骨を埋めたのもあってか、毎年他所からも多くの人が訪れる。
その英霊祭が近々開催されるため、前乗りで来る人たちで宿屋は満室の所がちらほらと出てきてるみたいだ。
門を通って街へ入って、街の人たちに挨拶をしつつビットの店へ向かう。イオンがビットと戦闘訓練をする約束をしていたので、その訓練を見学をさせてもらう予定だ。
ビット=シークイーンは自分の店を持っているが元々冒険者である。今でもその腕は落ちていないため、時々こうしてイオンに料理だけでなく戦闘の練習相手もしてくれている。
私達が着く頃には彼は自分の店…『うさぎのなごみ亭』の前で待っていた。ちなみに、店名はイオンが考えた。
「おうイオン、待ってたぞ。ヘデラさんもおはようございます。」
「ビットさんおはよー!今日はよろしくお願いします!」
「おはよう。今日はお店がお休みの日なのにごめんね、ビットくん」
「いや、いいんですよ。夜にバーはやるので。それに、たまには俺も体動かしておきたいんで。」
「ふっふっふー。ビットさん!今日こそコテンパンにしてあげるから覚悟し「ギルドの訓練所を貸してもらえるよう、予め許可は取ってあるので。行きましょうヘデラさん。」
「ちょっと!無視しないでくれます?!ま、待ってよ~!」
3人で冒険者ギルドへ向けて歩きだす。
「そういえば、今日の朝にイオンちゃんがビットくんから教わったオムレツ作ってくれて。美味しかったんですよ。本人は納得しきれてないみたいだけど。」
「ほう?そうなのか?」
「なんかビットさんがお手本に作ってくれたのとは違う気がして…」
「さすがに最近料理の勉強を始めたような小娘に負かされたらこっちがへこむわ。」
「母さんとまったく同じこと言ってる!」
「は?」
「ね?言った通りだったでしょ?イオンちゃんも頑張って続けていけば良いものが作れるようになるよ。」
「もちろんだよ!料理も戦闘も打倒ビットさんだもの!」
「…バカ言ってないでさっさと行くぞ。」
世間話をしつつ歩いていると、突然声をかけられた
「ヘデラ様!ちょうどよかった。」
「あら?メイリークさん。」
この街の領主の執事であるメイリークが話しかけてきた。朝から何の用だろうか…
「我が主人からヘデラ様への伝言を頼まれてました。『話があるから街に来たら領主邸へ来てほしい』と。この後ギルドに行くつもりだったのですが、すぐにお会いできてよかったです。」
「領主様が直々に話とは珍しいですね………わかりました。それで、今からでも大丈夫なのですか?」
「はい。街に来次第とのことでしたので。」
「それほどの要件なんですね。………というわけだから、ちょつと行ってくるね二人とも。」
「うん…でも早くしないと私がビットさんをコテンパンにし「こいつは俺が見てるので行ってきてください。」
「ビットさん?!私が話してたじゃん!」
「うんありがと。よろしくねビットくん。」
「母さんも!?酷いんですけど!」
「メイリークさんもこの後は領主邸へ戻るんですよね?一緒によろしいですか?」
「はい。では行きましょうか。」
「……いってらっしゃ~い。」
本来の予定が変わって、イオンとビットから別れてメイリークと領主邸を目指す。領主様直々に話とはいったい何なのだろうか…