私は元気にしています。
夢でうなされた挙げ句娘に起こしてもらうだなんて、他人には言えないな恥ずかしい……
部屋から出た私はリビングへと歩を進める。台所でごはんの準備をするあの子…イオンは手際よく料理を進めているみたい。いつもは私か二人で一緒に準備するから、なんだか手持ちぶさたでそわそわする。
「改めておはよう、イオンちゃん。」
「おはよう母さん。…もう大丈夫?」
「ありがと。心配かけちゃったかな?」
「うーん、少しね。毎年この時期の母さんはなんかこう……変だもん。」
「……変な母親でごめんなさいねーだ!ごはん楽しみにしてますよーだ!」
「急に拗ねないでよ……もうすぐでできるから騒いでないで待っててよ。」
「なに作ってくれてるの~?」
「オムレツ!ビットさんにコツ教わったの♪」
ビットは時々イオンに料理を教えてくれているバーテンダーだ。彼だけでなく、 竜人族と人族の間に生まれ落ちた元孤児のイオンに辺境の街の人達は優しく受け入れてくれた。
そのおかげもあってか彼女は強く、なにより優しい子に育ってくれた。ただ、言葉に多少毒っ気があるのは同業でもある街の冒険者達の影響であって、決して私の影響ではないと信じたい…
「はいおまたせ~!ビットさん直伝オムレツ!」
「おぉ~、綺麗にできたじゃん!」
直伝だけあって見た目はそっくり。イオンちゃんの覚えがいいのか、ビットくんの教え方が上手なのか。まぁ、そのどっちもなんだろうね!
「見栄えもよいけど早く食べて。ほらほら!」
「では、いただきます。………んん!美味しいよ!」
「よかった。では私もいただきますっと。………うん。我ながら良くできてると思うけど、ビットさんが作ったのに比べると…さすがだよね本職。」
「ふふっ。ビットくんはイオンちゃんがここに来る前から料理してるんだもん。最近料理の勉強し始めたような小娘に負かされたら、さすがの彼もへこんじゃうよ。」
そんな話をしながらごはんを食べ、片付けをしてから二人で街へ出掛ける準備をする。
「それじゃぁ、そろそろ行こうか。」