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森の中は危険がいっぱい。チート能力者も準備はしっかりと

 依頼完遂のために再び南の森へとやって来た大地。ここの森の中に蜂の巣があるらしい。

 いや、どこにあるんだよ!見渡しても木と草しかねぇから場所なんてわかんねぇよ!


「木、木、草、草」


 大地はしばらく歩き続けた。見渡しても変わらない景色にうんざりし始めるが、そうは言っても景色を変えることはできない。


 ただ、この状況で一つだけ確かな情報がある。

 そう、迷ったのだ。

 森をぐるぐる回っていれば方向感覚が狂い始め、時間もわからなくなり、焦りと不安が生まれる。

 こうなってしまえばいくら力が強かろうと、いくら足が早かろうと無意味であり、逃げたしたくなる衝動は大人であれ子供であれ心の内から生まれてしまう。


「これは、参ったな」


 努めて軽口を叩くようにする大地だが、その言動はまさに不安から来るものだ。そして、普通であればこのまま森をさ迷い続けて餓死もあり得る。


 どれくらい歩いたのだろう?疲れが出てはいないがそれは女神サポートによるものだ。だからこそ、疲労による予想は全く出来ない。


「まさかモンスターより厄介なのが自然とはな」


 不安と衝動から何度も『一度帰るか』という言葉が頭をよぎる。そしてその度に頭を振って思い直すのだ。

 討伐対象探して倒さないと強さの証明も……アイツへ謝ることも出来ないからな。


 だが、今歩いている道があっているのか間違っているのか。それもわからないのは辛い。


「あー、いっそこの辺りを焼け野原にしてしまおうか?」


 兵器召喚使えば恐らく容易く出来るだろう。

 ……そんなことして犯人が俺だとわかったら危険人物として捕まりそうだけど。


 腹が鳴り、そのタイミングでふと空を見上げると陽が落ち始めていた。もうそんな時間になったのか。


 それが聞こえたのは途方にくれていたところだった。転生前の世界でそれが聞こえる度にびびっていたことを思い出す。蜂の羽音だ。


 その音を聴くかぎり近い……。

 大地が真上を見上げるとそこには全長3メートルはありそうな球体状の蜂の巣だ。その蜂の巣からテニスボールくらいの大きさがあるスズメバチに似たモンスターが出てきた。


 そのモンスターは歯をガチガチとならして如何にも威嚇しているようすである。

 まじ怖えぇ。あんなのに刺されたら死ぬんじゃね?毒とかじゃなくてショック死とかで……。


「威嚇、どうもありがとうよ。お礼に殲滅させてもらう」


 大地が両手で持つ銃器を召喚する。その銃もまた黒くアサルトライフルのような銃床がありそのすぐ先にの下部分に引き金がある。その先を見ていくと筒状にやや丸まった持ち手がついている。この持ち手を出前に引くことによって装弾することが出来る。この武器の何よりの特徴は弾丸の中に小さな弾がたっぷりと詰められている事だ。引き金を引くことで上段部分の銃口から弾丸の内部構造により小さな弾を放射状にばらまくことが出来る。そうショットガンだ。


「これでもくらいな!!」


 大地は迷いのない動作でショットガンの銃口をモンスターに向けて構えると即座に引き金を引いた。発射された無数の小さな弾丸はポイズンビーの体に幾つもの穴を開けた。


 アサルトライフルの時もそうだが、銃を撃っても反動が全く問題ないな。女神サポート様々だぜ。身体能力向上してるから自分の構えが素人でも問題ないのは楽だ。


「さぁいくらでも!……いや、多くない?」


 一体倒したことが引き金になったらしく、巣からどんどんポイズンビーが出てきた。その数は数えるのがバカらしくなるほど多く大地の顔がひきつる。


 そのポイズンビー達の羽音がけたたましくなり響きながら、大地に向かって飛んでくる。


「上等じゃねぇか!やってやんよ!!」


 ショットガンを再び構えるとポンプアクションを挟んでから一番近いモンスターへ銃口を向けて引き金をひく。


 いける。密集してるから流れ弾で複数同時に仕留められる。


 針をむき出しにしながら突っ込んできたモンスターを避け、他モンスターと斜線が被る位置に動き引き金を引く。


 右から来れば回り込むように右へ動きつつ少し斜めに向けて他の敵を巻き込む。


 サテライトバスターを使えば一瞬で終わるんだろうが、目的の……なんだっけ?女王蜂?まで残さず蒸発させたら意味がない。


 避けて、射線をあわせて撃つ。下がって射線をあわせて撃つ。飛んで、別の敵に射線をあわせて撃つ。カウンターで蹴りを決め、宙へ飛ばした蜂にあわせて撃つ。こちらの様子見ている蜂に向かって跳躍し、銃口を押し付けて撃つ。


 どれも、一発毎にポンプアクションを決めてから次の動作に移行する。もっともポンプアクションも即座に行えるし、弾を込める必要がないからこそ、危うげなく出てきた蜂を全て駆除することができた。


「ざっと、こんなもんよ」


 そんな大地の前に巨大な蜂がゆっくりと空中から降りてくる。それがアシッドマーダービーだとすぐにわかった。


「ゲームのボス敵かよ……」


 凶悪すぎるその顔といい、殺意マシマシの威嚇、既に出しっぱなしにされたボールペンサイズの針。

 骨溶かされる以前の問題じゃねえか。怖すぎるだろ!!


 そう言いながら大地はポンプアクションしてからショットガンを構える。怖かろうと強かろうとやるしかない。


「ショットガンは最強よぉっ!!」

 

 引き金を引いた。問題なく魔力で作られた散弾がばらまかれる。あの巨体なら避けられないだろう。

 その考えは当たっていたからこそ驚く他なかった。全ての散弾が蜂の風魔法によって纏った風に全て逸らされたのだ。


 そんなこと出来るのかよ。いや、たった一発防がれただけだ。


 大地はガシャンとポンプアクションを行ってから再度打ち出すが結果は同じになった。


 ショットガンでは倒せないっ……。


 そしてアシッドマーダービーが動き出す。凶悪で恐ろしい針の凶器がギラリと大地に向いた。羽をより速く羽ばたかせた。鳴らせていた歯をカッチリと閉じる。狙いを大地の腹に定める。準備は完了した。初速から最大速度まで一気に加速してその速さをもって一瞬で決める最速の突進。


 ――が、その前にアシッドマーダービーの風のバリアを突き抜けてその腹に風穴を開けた。


「一発じゃもの足りないだろ?」


 引き金にかけた指に力を込める。ショットガンを消して新たに出した銃。これは貫通力と狙撃に特化した代物で本来は近い敵に使用するものでは無い。それどころか立って持ったまま使用するものでもない。三脚を用いて

使われるのが一般的である。そしてその銃の総称はアンチマテリアルライフルと呼ばれる。


 ――ズドン。この世界ではあり得ない破壊音をたてながら弾丸は発射される。その二発目が発射されると即座にモンスターの腹に風穴を開いた。弾速など見えようはずがない。風で揺れ動くことがあろうとも近い距離で逸らせるわけもない。


「俺はとっとと帰りてぇんだ!」


 ――ズドン。この世界で起きた3回目の破壊音。それが意味をするのはアシッドマーダービーの腹に3か所目の穴を開けるということだ。

 撃たれる度に体を大きく落としそうになる女王蜂が反撃を考える余裕が無かったのか、フラフラになっている体を少しずつ後退させていく。


「人にモンスターをあんだけけしかけておいて逃がすわけないだろ?」


 銃の反動を問題なく受けられることにたいして女神に感謝しつつ、大地は最後の一撃を頭部へと見定めて放つ。

 ――ズドン。


 4回目の破壊音が盛大になった時、森の中は静寂を取り戻した。

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