聖女の忍法は万能です!伝説の忍者、聖女に転生す。〜皇太子がわたしに抱き着こうとしてももう遅い。それは変わり身でござる……ですわ!
某が長い眠りから目を覚ますと少女であった。しかも金髪の南蛮人である。
「解せぬ……」
某は染み1つない手を見ながら呟いた。
その手で胸を揉む。
「柔い」
その時、扉を叩く音が。某は慌てて周囲を見渡し身を隠した。
「失礼いたします。お嬢様、お早うございま……お嬢様がいない!」
騒ぎになったでござる。
そしてしばらくして天井に張り付いているところが見つかり、さらに騒ぎとなりもうした。むう。
数日間調べていて分かったのであるが、某は仏教で言う三千世界のどこかに転生したようだ。
今世の親父殿は侯爵とかいう、大名のような地位についておられる。なんと某はその娘であるようだ。
前世では田舎忍者と馬鹿にされながら大名の密偵として使い捨てられたのが、何の因果か。そもそも女になっておるしな。
親父殿の元には揃いの鉄鎧を着た旗本衆がいるので、戦でもしているのかと思いきや、魔族なる妖から領土を護るためとのこと。
そして某は聖女とかいうものであり、魔族を追いやる力があるらしい。
……坊主か祓い屋の類であろうか。
「聖女の力を示せと」
さらに数日後、皇帝からの使者を名乗る禿が屋敷を訪れて言った。
親父殿やお袋殿は憤慨している。
どうも最近言動が怪しくなった聖女……まあ某のせいだが……が聖女として適格なのか他の貴族共から疑問視されているらしい。
「某……わたしが力を示せばおさまりましょう」
王宮はうちの屋敷より遥かに広く、その庭には立会人として先代聖女やら、貴族やらが並んでいた。
すらりと背の高い美丈夫、皇太子殿下が話し掛けてくる。
「ははーっ」
某が平伏すると、くすくすと笑い声が聞こえた。
「楽にして」
先代聖女は、聖なる浄化の光を出すように求める。
出し方を尋ねると、自分のやりやすい様に精神を集中すれば良いとのこと。ふむ。
「いざ参る」
某は手早く手を組み替えて印を結ぶ。九字を切るのだ。
「臨兵闘者皆陣列在前!忍法光遁の術!」
城の庭は浄化の青白い光で満ちた。それは王都全てを暖かく包んだという。
「素晴らしい!」
殿下は感極まったように某に抱き着いてきた。
しかしそれは某の用意した木人形だ!
既に庭の木の梢に立っている某は腕を組んで叫んだ。
「かかったな、それは変わり身でござる……ですわ!」
木人形を抱えて殿下は呟いた。
「……面白い女」
こうして某は何故か皇太子殿下に気に入られ、翌日殿下から届けられた婚約の申し出に、某と親父殿は頭を抱えるのであった。
「解せぬ……」
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