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月下の酒と神獣相手に愚痴……な父親

勇者が消えたその後と今を繋ぐまでの間のちょっとした話です。

~~ アルフレッド ~~


 月を見上げながら酒を飲む。割と贅沢な行為だなと思いながらも、これぐらいは認めて欲しい所だ。


 ここ最近……頭が破裂するのでは? と思う事考えすぎている。

 いや、方針は決まっているのでその点は楽なのだが……事実が事実だけに重すぎるのだ。リフレッシュする為にもこういった時間は必要と言いたい。


『ほう……月見酒か。なかなか洒落た事をしているな』


 そんなリフレッシュをしている中、悩みごとその一と言える神獣フェンリルが私の背後から声を掛けて来た。


「考え事が多いので、こうした時間が無いと休む事も出来ないのですよ。もふもふ様」

『ふむ。そう言えば我が父も何か考え事をしている最中は、夜中に月を見上げている事が多かったな』

「父ですか……勇者様でしたな」

『父は勇者と呼ばれたくなかったみたいだがな』


 勇者と呼ばれたく無かったか……彼の者と共にあったフェンリルが言うのだ。それは間違いないだろう。

 それに、日記にも多少その様な事が書かれていたしな。


 そう言えば、神獣であるフェンリルはサイズ変更が可能だが、今はその姿を小さい姿でなく通常の大きい姿へと変えている。

 たしか、小型化の状態だと人語を話さなかったな。もしかしたら、そこら辺が関係しているのだろうか?


「今は大きい姿なのですね」

『小さき姿だとどうやら人の言葉を話せない様でな。せめて大人の狼サイズは無いと無理のようだ。これは新発見と言う奴だな』


 どうやら、フェンリルにも小型化の弊害が予想できなかったらしい。……家に入る為にサイズを小さくしていたからな。

 とは言え、別に子犬サイズでなくても、成長した姿で良かったのでは? と思うのだが……まぁ、あの触れ合うシーンを見たらな。

 恐らく成長したサイズだと距離を取られるのでは? とでも思ったのだろうと勝手に予想しておく。

 このフェンリルは神獣と言われるのに、人との触れ合いを好ましく思っている様だからな。


『しかし、其処まで悩む必要もなかろう? 勇者の子だと公言するつもりも無いのだから』

「バレた時などを考えるとどうしても。まぁ、これまで真実は隠されていたので問題無いと思いますが」

『なるほど。確かにバレてしまえばこの国は荒れるな』


 まぁ、荒れる程度なら良い。いや、良くは無いが……それでもマシと言う話だ。

 ただ気になるのは、何時どのタイミングで真実が覆ったのか? という事だ。勇者の日記を見る限り……間違いなく人々は勇者が消えたままだという事を理解していたハズだ。


 だと言うのにも関わらず……今の歴史で習うのは〝勇者は愛する女魔族を失ったが、そんな勇者の心を癒した王女と結婚した〟などと言うストーリー。

 それこそが、この国の王家が勇者の血を継いでいると言う話のベースとなっている。


 しかし、そのような事実は無かった。一体誰が、どのタイミングで、どの様にして歴史を改竄したのだ?

 いや、勇者が戻り子を作ったという話は、二つほどの国で否定されていた。もしかしたら、その国で言われている勇者の歴史が正しい話なのではないだろうか。


『我は森から出てなかったからな。其処まで情報は知らぬが……勇者と言うワードが人を纏めるのに必要だったのだろう? たしか、我が子達の話だと……』


 酒を飲みながら、フェンリル相手に話していると、彼はまたとんでもない話を始めた。いや、我ら領主であれば知らされている内容も含んではいる。居るのだが……。


 フェンリル曰く。

 ある時、人の国で内乱が起きた。中央と辺境で対立したと言う話だ。まぁ、其処まではある程度の地位に就けば聞かされる内容だ。


 ただ、その真の内容こそ、我らは知らされていない話。


 内乱より少し前、王家の下には貴族と言う階級が有ったそうだ。身分制度と言う奴だな。まぁ、今も身分制度が無い訳では無いが……割と緩い内容だったりする。


 しかし、当時は身分こそが至上といった風潮だったらしい。


 中央の貴族は自らが王家に仕えていると、その権力を振るい自由気ままにしていたらしい。

 そして、領地に住む貴族。特に辺境の地に住む者達は常に魔物の脅威に晒されていて、それらから国や人を守っている。

 しかし、中央の貴族は領地の貴族を田舎者と見下し、自らの利権等の為にあの手この手で金を吸い取っていた。そしてまた、王家も中央の貴族に配慮していたようだ。


 辺境と言うのは常に魔物と隣り合わせの生活だ。彼らの税は基本軍事費に回される。

 だと言うのに……その軍事費すら、中央への税を増やせと軍縮運動が起きたそうだ。

 当然、辺境を主体とした領地持ちの貴族は切れる訳だ。


 図式としては、中央対辺境連合の完成する。


 当然、中央は劣勢になるのだが……此処で持ち出されたのが勇者の血という事なのだろう。

 王家は、中央貴族を排除し、勇者の血を全面に出し辺境連合を収めたのだろうな。恐らく教会も巻き込んでいたのだろう。




『その様な話が有ったと言うのは聞いた事がある』

「となると、貴族階級制度は腐敗の元だと、今の中央に王と内政官。周囲の領主と言う呼び方しかないのは、その内乱の結果ですか」

『だろうな。競争するのは必要だ。その競争のお陰で国が大きくなったのもあるからな。とは言え、急激に大きくなった国が腐るのもまた道理と言うモノだろう』

「故に、現状は緩い体制と言う訳ですか」

『それもそれで弊害が有るとは思うがな……何が良いのか我には解らぬ。人間では無いしな』


 荒れる人々を纏める為に利用した勇者の血脈。だが、そんな事実は無かった……。

 うーむ……歴史の裏を知れば知るほど、頭が痛くなるぞ。


 ただ、王家がこの事を知らぬはずが無い。……と思う。


 あぁ……悩ましいな。せっかくの月見酒が苦いだけの物になってしまったでは無いか。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!



ちょっとした解説。

この世界において、魔境の魔物が強すぎるぅ! 人間糞雑魚じゃん! と言う世界です。

しかし、内乱当時、魔境から離れている中央は魔物なにそれ怖いの? なんて認識でした。そして、対人戦争も無いので……思うがままに生活する。いわゆる平和ボケを満喫してました。

そして、その結果腐敗が蔓延した……っと。


ただ、辺境に住む者は平和ボケできません。魔物と戦いまくってます。

その結果の温度差が激しく……バカをやった中央および王家は四面楚歌状態に。そして、常に魔物と戦っている辺境軍に勝てるわけも無く。


ただし、勇者の血は神聖視されている世界です。結果、王家は何とか生き残りました。

そして、教会と組んで情報戦をしていく時代に入ります。ただし、完全実力主義の世界でもあります。

武も文も共に実力が物をいう世界ですから、貴族なにそれ美味しいの? ナーロッパとはまたちがうかんじですかね。腐敗貴族なんて居なかったんや……。いや、居なかったじゃなく居たけど既に消されてるんや。……恐らく。

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