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話は進みましたか? いいえ、未だに悶えてます

~~ ミリア ~~


 エル君がもぞりとソファーから起き上がりました。そして、きょろきょろと周囲を見渡し……首を傾けました。


 さて、なんと声を掛けましょうか? と思っていたら、物凄い速さで白い毛玉がエル君へと飛び込んでいきました。

 何事! と思い、良く見て見ると、その白い毛玉は先ほどまでお母様達に弄られていたフェンリル様。


「くぅぅぅん!!」


 そして、そのフェンリル様は起き上がったエル君に思いっきり甘える様に、その体を擦り付けています。

 はっ! これがメイド達がお父様とお母様のやり取りを見ている時、口に出している言葉の〝尊い〟と言うやつでしょうか!

 そうなのでしょうか? とチラリとメイド達を見て見ます。そうすると……彼女達はお父様達のやり取りを見ている時と同じ顔をして……鼻を押さえてますね。これは、間違いなくこの感覚が〝尊い〟と言う物なのでしょう。


 なるほどなるほど……と考えていると、私を置いてきぼりに動きがありました。


「………………」


 エル君が周りを見て必死に口を開きますが、言葉が出ていない様子。これはどういう事でしょうか? 理由が解らないのでフェンリル様に聞いてみるべきか? と、フェンリル様をチラリと見ますが……彼は一心不乱にエル君へと甘えておられます。

 そして、お父様はこんな状態になっているにも拘わらず、思考の海へとダイブされておられる様子。

 お母様やメイド達は……駄目ですね。お母様もメイド達と同じ顔をしてエル君達を眺めておられます。


「これは……動きが起こると思ったらまた停滞してしまいましたね」

「カール、何とかできませんか?」

「お嬢様。いくら万能たる執事と言えど、出来る事と出来ない事もございます」

「……それは万能と言わないのでは?」

「おっと、これは手痛い返しを。お嬢様……出来るようになりましたな」


 私は別に突っ込みの道を目指していないのですが……それにしても、本当にどうしましょう。




~~ フェンリル ~~


 起きた! 遂に目を覚ました! 我らの宝が! エルが!!

 余りにもの嬉しさに、我はエルに飛び込み思いっきりじゃれついてしまったが……まぁ、其れも仕方ない事だと割り切る。

 うむ、何せもうどれだけの時間、この時を待っていたか……実に長かった。


 クンクンとエルの匂いを嗅ぐ。

 別に変な意味では無い。これはチェックだ。


 元はと言えば、エルを創り出した我の親足る存在は、二つの力をその体に有していた。

 ただし、それは猛毒でもあった。


 二つの種族の力。人族と魔人族の力を後天的に手に入れてしまったが故の毒であったのだが、その理由は一つの悲しい物語が有ったりする。


 まぁ、その事は割愛するが……と言うよりも、我が小さき頃の話なのでよく覚えていない。


 ただ、その二つの力は我の親代わりで有った二人の物。父と母と言っても良い存在だ。

 そして、その種族の違いが二つの因子は混じる無く毒となり……それを知った我が親は、一つの賭けをした。


 通常でもハーフであれば、その毒は発生しないのだ。

 ならばと、我が親はある者の技術を使い……二つの力が共存出来るようにと新しい命を創り出した。


 それがエル。


 エルは言うなれば、ホムンクルスの様な存在だろう。そういえば、母は精霊に作られたホムンクルスであったな。うむ、問題は無い。


 そして、此処で匂いが関係してくるのだ。

 二つの力が混ざり合ってない親の状態であれば、継ぎ接ぎと言った感じで匂いも雰囲気も歪な物となる。違和感がぬぐえぬのだ。片手からは人の匂いが、もう片手からは魔人の匂いがと言った感じで。


 しかし、エルの匂いは我が父の其れとは違う。

 しっかりとバランスが取れ、混じりあっていて、違和感が全くない。


 ……父よ。貴方様の試みは成功しました。我がしっかりと確認しました。

 今ここに、父と母の子が……その足を地に着け立ち上がる事に成功しました。


 今はまだ言の葉を発する事が出来ない様ですが、それもしばらくと言った処でしょう。

 我はこのままエルを見守ります。


 実に目出度い日ですが……出来るならば、この場にお二人が居てくれれば……くぅん。




~~ アルフレッド ~~


 様々な事を考えていると、事態は進展していた。

 目の前では男の子……エルが起き上がり、小型化したフェンリルと戯れており、妻達は何か不思議な盛り上がりを見せている。

 娘のミリアはと言うと、何やら達観した顔をして執事のカールと会話をしているようだ。


 しかし、目を覚ます事が出来たか。


 彼は……エルはある意味爆弾だ。

 彼の存在は我が国にとって致命的な刃になりかねない。誰が考えただろうか? 何処で情報が狂ったのだろうか?

 まさか、わが国の王家に勇者の血など一滴も流れていないとは……。


 それが有るからこそ、この国は存在できる。それが有ったからこそ、教会はわが国に一定の配慮をしている。


 だが、そんな事実など無かった。

 これは間違いない情報だ。何せ、フェンリルの言と勇者の日記により真実を知ってしまったのだから。


 国として考えるならば、さっさと処分するべき存在だ。

 だが……そんな事は出来ない。可愛い男の子では無いか、娘の良い友となってくれるだろう。と言うのが父としての意見。

 そして、人としての意見はフェンリルと敵対するべきで無いという事と、エルはまさしく勇者の血を引く者だ。勇者の血脈……処分できるはずもない。


 しかし、勇者の日記を見るに、彼を国の政に巻き込むなど出来はしない。

 勇者が国から、人から離れた理由が書かれた日記を見るとな。この子の血は公言するべきでは無いだろう。

 それこそ、フェンリル達と共に何処かへと居なくなってしまう可能性がある。下手に敵対国に流れてしまったら最悪だ。


 結論を出すのが難しい内容だ……実に重すぎる。


 しかし、この和やかな空気を維持できるのであれば、この事は私の腹にしまい込み、その重みに耐えるのも有りだろうな。

ブクマ・評価ありがとうございます!!


後々本編でも触れますが、少しだけ。


過去の勇者、いわゆるフェンリルの父と言える存在ですが、彼は有る戦いで腹に穴を左腕を無くすと言う致命傷を受けてます。その時に、そばにいたフェンリルの母代わりは同じように致命傷を受け、勇者を生かす為に全てを投げ出して勇者と融合? をしました。

ただ、種の違いによる弊害で、反発しあう種の因子が猛毒になり勇者の命を蝕み……と言った具合です。


まぁ、ここら辺は一応前作で触れてますが、知らない人用とお浚い用にという事で。


エル君実はとんでもない人やで……勇者と元・魔王(夜と闇の精霊)の娘の因子で出来た子供ですもの。

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