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小型化に成功しました。いえ、勝手に小型化されました。

~~ ミリア ~~


 お父様が連れて来た狼さん。どうやら神獣のフェンリルと言うそうです。

 絵本などでお話を聞いたことが有る存在です! これはもうお母様もお目目を大きくするほど驚きました。……私は少しちびっちゃうかと思いました。


 ただ、そんなフェンリル様ですが。お父様の腕の中に居る男の子を大切そうに見守っています。

 どうやら、彼はフェンリル様にとって宝物のようで……お父様は一体どうするのでしょうか。


「フェンリル様はお名前が無いのですか?」


 優しい目で男の子を見ていたフェンリル様。そんな姿を見ていると、最初の恐怖は無くなり話かける余裕も出来て来たので、私は彼に名前を聞いてみました。

 ……しかし、思わぬ返事が返ってきてどうしたら良いのか悩む結果に。


『我か? 我の名前ならば……はて? これは名前だったのだろうか? 一応だが、我の育ての親は〝もふもふ〟と呼んでおったぞ』


 〝もふもふ〟です。それは名前ではないと思うのです! 毛がふかふかでもふもふで気持ち良さそうだからそう呼んでいたに違い有りません。

 ……確かに、姿は大きく畏怖すら感じますが、その毛はふかふかしていて気持ち良さそう。もしこれが小さい頃であればもふもふと呼びたくなるかもしれません。


 ですが、それは名前では無いはずです! いえ、もしかしたら名前を考えた結果、実にもふもふしていたから、そのまま呼んでいたのでは?

 ただ、もしこのフェンリル様がその呼び方を気に入っていたのであれば……それを突っ込むのは愚策でしょう。


「……では、もふもふ様と呼べばいいのでしょうか?」

『何やら変な呼ばれ方な気もするが……まぁ、好きに呼ぶが良い』


 好きに呼べですか……困りました。好きにしろと言うのは一番悩む話です。

 でも、フェンリル様は〝もふもふ〟と言われると嬉しそうなお顔をしている。……敬称を付ければ問題ないでしょうか? お母様とお父様をチラリとみてどうするべきかを窺ってみましょう。


 ……駄目ですね。何やらお母様は放心してますし、お父様は男の子を見ながら考え事をしておられます。これは……まさか……フェンリル様の対処は私がしなくてはいけないのでしょうか。


「えっと、もふもふ様。その、もふもふ様は今後どうするのですか?」

『ん? 我の事は気にしなくても良いぞ。その子の様子を見ながら過ごすだけだからな』


 様子を見て過ごす? でも、男の子は父の腕の中。という事は、父がと言うか此処で育てる事に成ると思いますが……そうなると。


「もしかして、もふもふ様は、このお屋敷で過ごされるのでしょうか?」

『ふむ……確かに少しこの姿だと狭いか』


 等とフェンリル様は仰られました。いやいや、姿の問題じゃありません! 神獣が居るという事が問題なのです! と、思いながらも口には出せません。

 そんな事を言って、フェンリル様の期限を損ねる訳にはいかない。


 何故なら、フェンリル様と言うか、神獣は国を一つ潰せるぐらいの力を持っていると言われています。

 更に、神獣の中でも我が領地にある森に居たフェンリルは特別。何故なら……伝説の勇者と共に居たと言われて、勇者と共に教会のシンボルと為られている存在です。


 当然……信者がいるわけです。無碍に扱えば……信者の一揆が起こるでしょう。実に恐ろしい話です。


「えっと、それなりの場所を恐らくお父様が用意されると思いますが……」

『それには及ばぬ……どれ、ちょっと小さくなってみせよう』


 ピカリと周囲が輝くと、フェンリル様が……実に小さな子犬サイズに! これは……まさにもふもふです!! フェンリル様が言った育ての親がもふもふと呼んだと言うのも解る話です!


 そして、今の光で放心していたお母様やメイド達も意識を戻しました。


「か……可愛い!! もふもふしてますよ奥様!」

「え、えぇそうね! もふもふね! ところで……神獣様はどちらへ?」


 お母様、その目の前に居るもふもふが神獣のフェンリル様です。そう告げたいのですが、お母様やメイド達は放心していた為に、フェンリル様の小型化シーンを見逃したのか、全く理解しておらず……。


「実に素晴らしい毛並みですねぇ……」

「ブラシを……高級のブラシが有ったはずです。持って来てくださいな」


 などと、その神獣のフェンリル様を撫でまわし愛でてます。実に恐ろしい!!

 とは思ったのですが、何やらフェンリル様はお母様たちの手を拒否する事なく受け入れておられる様子。

 これは……慣れているのでしょうか? 何やら、懐かしそうにしておられますし。


「お父様、あれは宜しいのですか?」

「あ、あぁ。大丈夫だろう。大体の話は既に聞いているからな。……それよりも、今後どうするかだな」

「あの、その子は此処で育てるのですよね? 因みにお名前は?」

「そのつもりだ。っと、名前は聞いている。〝エル〟と言うそうだ」


 エル君ですか。さて、彼は何時目覚めるのでしょうね。

 フェンリル様との関係なども聞きたいのですが……彼はまだ目を覚ましてませんし、フェンリル様に至っては……。


「ワフゥ……」

「奥様奥様! 子犬ちゃんがあくびをしました!」

「まぁ大変! 寝床を用意しなくては!」


 何やら、自由気ままにしておられます……いや、お母様。その子犬がフェンリルですからね? 後で知り、今やっている行為を思い出して失神しないと良いのですが……。

事実を知ったら卒倒しそうですよね。

……まぁ、知らされる運命が待ってるわけですが。

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