1話 旅立ち
私が幼い頃から膨らませ続けた厨二病物語。
ここはどこだ……。
どれだけ歩いた……。
どこに行けばいい……。
とにかく歩き続けた。
1ヶ月ほど歩き続けて現在、森の中を彷徨っていた。
「これちゃんとまっすぐ進んでるよな?」ポツリと独り言を呟いた。
進んだ道の木には印を残しているが、周りを見ても印は見つからない。きっとまっすぐ進めれているのだろうと安堵する。
この1ヶ月で山を2つは越えたはずだ。8歳の子供にしてはよく歩いた方だろ。なんて自分を励ましながらひたすら進み続けていた。
旅に出る時に事前に用意した食料や水分は1週間ほど前に底が尽きていた。川の水や木の実を腹に入れているとは言え、もう限界が近い。夜は、魔法で火を起こし過ごしていた。
「やばい。腹減った。もういつ倒れてもおかしくないな……」立ち止まって、空を見上げたーー
木の枝や葉の隙間から光が刺していた。そして俯きながらまた足を前に進めた。
ーーここ1ヶ月、人に遭遇することはなかった。そのせいか、とにかく独り言が増えた気がする。
◇◇◇
それから数時間過ぎただろうかーー
なにかしらの気配を感じ、立ち止まった。
「なんの音だ……」独り言を呟いた。
耳を澄まし、目を閉じ気配を感じ取ろうとした。正直、体力の限界だ。いつ倒れてもおかしくない状況で熊とかに遭遇したら死ぬ気がする。
嫌な予感がした。これは動物の足音だな……。今回ばかりは声には漏らさなかった。
足音は着々とこちらに近づいてきた。近づくにつれ、足音が明確になっていく。
熊だ。ーー最悪な気分だ。
黙々と目の前に現れて、熊と目を合わせた。
「グルルッ」熊が唸りながら前足を浮かせ、立ち上がる。
なんかしたっけ?
頭の中がはてなでいっぱいだ。熊の領域にでも踏み込んでしまったのだろうか。
戦う体力はもちろん無い。だからと言って、逃げる力も残ってない。だが、そんなことはお構いなしに熊は襲いかかって来そうだ。
襲いかかってくる前に左手を前に出し、手の平を熊に向け、右手で左腕を押さえて火の魔法を発動した。素手で戦うよりも勝算があると思ったからだ。しかし、それと同時に体力の消費が激しく、地面に膝が付く。ー「クソッ」
消費量とは真逆に手の平からは火の粉がヒョロヒョロと熊に向かっていった。
「まじかよ……」
熊は火の粉を切り裂き、そのまままっすぐと向かって走り、避ける暇も与えず腹をえぐるように下から上に向かって切り裂いてきた。
「カハッ……!」口から血を吐きながら吹っ飛び、地面に叩きつけられた。
あー、おれ死ぬのか……。声もまともに出ない。
俺は朦朧とした状態でうっすらと熊を見る。最後の力を振り絞り、立ち上がろうとした。
身体を押し上げる腕も言うことは聞かずに、おれは倒れ込んだーーーー