弓兵ラカン
敵国の正規軍が攻めてくる。この辺境の村に、初の実戦から2日後のことだ、村の警備人員は、俺ら含めて35人。
通常なら撤退すべきところだ。だがこの世界の戦は、剣や魔法の実力に差があれば、数が少なくとも逆転が可能でもある。
つまり撤退する以前に、相手の実力を計るのが、俺たちのすべきことなのだ。
弓兵ラカンはその方針を聞いて、やるしかないかと感じていた。
ラカンは王都のスラム街の生まれ。
父は飲んだくれで、よく暴力を振るってきた。子供の時は殴られっぱなしだったが、13歳ぐらいで、やり返して勝つことができてからは、何もしてこなくなった。同時に親とも感じなくなった。
ただの哀れなおじさんだ。
母は逃げ出した。故に自分の母など知らない。
父に勝ってからは、独立した、スラム街で、盗みや恐喝などで生計を立てた。
そんな日々にも終わりが来る。スラム街がそのまま兵士学校の敷地になることになった。
俺は生まれながらのチンピラだが、ここでの訓練により生まれ変わったと思ってる。
仲間だってできた、今のチームも日は浅いが仲間だ、裏切ることはないだろう。なぜなら戦場で裏切った時点で自分も死ぬからだ。
生まれ変わった俺の、最初の役目が今回の派兵。
相手の実力を見るのが俺たちの仕事だ!
敵国の本体がこちらに向かってきた。
俺たちの隊は村から離れ、まずは相手の数を把握することにした。
相当沢山いる、ように見えた。
奇襲だの実力差だのという要素はあるが、基本的に大軍で潰すのが一番確実な方法であることは間違いない。
「目視だから分からんけど、700から3000ぐらいだろ」
ラカンは誇張と冗談半分でそういった。
どっちにしろ数が多いので動きが鈍そう。
村に到達する前に奇襲をかけて進軍を遅らせよう。
俺たちの隊が、敵の背後をついた。
ラカンの放った矢が敵の白魔道士と黒魔道士を射抜いた。それを合図に俺たちは突っ込んだ。完全に敵側の虚を突いたようで、敵軍は混乱しているようだ。
もし実力差がなければ、虚を突いてもここまで崩れはしない。手薄な部分をうまく狙えたようだ。が、俺たちより強い隊がもちろんいるリスクもあるので、俺の弓で牽制しつつ、引くことにした。
適度に打撃を与えることができ、そのまま退却も成功した。
遠目から見ても大群が混乱してるのがわかる。
続いて2回目のアタックをかけることにした。次もうまくいくよう、俺の役目を果たそう。弓兵ラカンは気合を入れ直した。