いいのか?
隣町の小学校のプール解放二日目。
今回は、天気もあまりよくなく、プールで泳ぐには厳しかった。
だが、ミツルにとっては、仕事なのだ。
交通費と、一回だけとはいえ飲食代は、ジウルフマンから出ていた。
男の子たちの方が寒いのが苦手なのか? 女の子五人だけだった。
けして広い女子更衣室ではなかったが、ミツルを入れて六人は、余裕だった。
昨日、前で着替えをしていた女の子もいた。
顔よりも、身体的特徴で覚えていたという、ちょっと恥ずかしいことであった。
当然、昨日より更にプールの水は冷たかった。
その小学校の先生は、心配して、一時間早く解放をやめた。
ミツルは、義務は終わったと、女子更衣室へ。
濡れたスクール水着を脱いで、バスタオルで身体を拭いていると、あの女の子が、前にきて。
「このあとどこ行くの?」
ミツル「服を買ってから、家に帰る」
「嫌でなければ、付き合っていいかな?」
ミツル「うん。それより、恥ずかしくないの…毛生えてるのに?」
その女の子は、真っ裸で腰に手を当てて、ミツルの方を向いていた。
「他の女子は、恥ずかしがるかもしれないけど、私は、何でもないよ」
結局、服を買うのに付き合ってもらった。
正直、何を買っていいのかわからないところがあったので、助かったといえば助かったが…。
二組買うことになっていた。
一組目は、ジウルフマンから、洗い替え用と、女子の格好に慣れるように。
「これなんかどう?」
いわゆるパンツルック。
一枚ならいいかと、ジウルフマンからの金で購入。
「あと、こっちもいいかも?」
ミツル「ごめん、スカートでないとダメなんだ」
二組目は、ミツルママからだった。
必ずスカートと指定されていた。
ミツル「女の子のなかで流行ってるブラウスは?」
「これかな。でも、なんか、他人事みたいだね、女の子なのに」
ミツルは、ミツルで、女子になった真っ裸をしっかり見られていたのだ。
夕方、暗くなりかけたころ、その女の子と別れて、買った服を抱えて家路についた。
その女の子の真意を図りかねる。
ミツルママ「ちゃんと、お洋服買ってきた?」
ミツル「うん」
ミツルママ「買ってきたスカートに、穿きかえなさい」
ミツル「えっ?」
ミツルママ「学校は、男の子のままだけど、あなたはもう女の子なのよ」
必ずスカートという指定は、そのためだった。
女子になったことを後悔したとしても、女子として生きるしかないのだ。