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「ついにこの日がやって来ました!」
おはようございます!サキュバスのラズリだよ、鏡の前に立ってせっせと髪をとかしています、いつもより約2.3倍必死です、いつもは身だしなみがよくないなど大人達に怒られるから面倒ながら頑張ってるけど今度はなんと自主的にやっているのです!さらにさらに髪飾りを付けます!すごい!大人っぽい!
え?朝からなんでテンション高いかって?それはもちろん今日は私の成人式だからです!村の外に初めて堂々と出られるんだ!昔は子供は危険だからと外に出してもらえなかったけど今日から私は大人として外に出られる!わーい!成人式絶対に成功させるよー!でも昨日こんな事言ったら心配そうな目でみられたんだよな…うん!気を付けよう。
サキュバスとして一人前になるためにはまず成人式の日に気にいった男を虜にする必要があるらしい、特に自分の村から出たことがないわたしは男とは何なのか、どう気に入ればいいか検討もつかなかったが村長と挨拶をしたあと元気よく外の世界へと旅立った。
「火山、海、氷山、お城―――!」
行きたいところを順番に叫びながら青空を飛んでいく。
サキュバスは相手がどんな種族であれ男か女か無性別かなどを勘でわかるらしい、まず適当に男の前に行ってじゃんけんを仕掛けてみる。
「じゃんけんぽん!」
「ん?…あれ?今なんか音がしたような…?って食糧が減ってる!」
人に会うときは衝撃波が出ないように気を付けている、ケガさせたら大変だもんね。
「じゃんけんぽん!」
「…ん?うぇっ!グラサンがない!」
いろんな場所を観光しながら男の人達にじゃんけんを仕掛けていく、基本的に相手の手の形を見てから出していくから負けなし、ほとんどの人達は声どころか姿すら見えていない、私の存在にすらきずいていないかもしれない、ごめんね、ラズリは急いでいるんだ、気にいった男探し以外に観光もしなきゃいけないからね。じゃんけんを仕掛けるの理由?遊んでくれる方が嬉しいし観光のお土産(戦利品)も貰えるからだよ。
遊んでるうちに日が暮れてきた、最後についたのはレンガ細工のお城、大人達は今日は立ち寄らない方がいいと言っていた、理由は我ながらすぐに忘れてしまったけどそれが余計に冒険心を煽ってくる。よって慎重に入ってみる事にした。