悪夢
俺はひたすら逃げていた。暗く月の光くらいしか明かりが無い真夜中の森でひたすら逃げていた。
「あはは、奏が悪いんでしょ?私の事だけを見てないからこうなるんだよ」
雪奈はそう言うと首を絞め始めてきた。
「ぐっ、は、離せ!」
「暴れるともっと強くするよ?いいの?ねぇ!いいの!?」
「うっ!や、やめろ!」
俺はそう言うと雪奈の腕を振り解き近くの木に向かって突き飛ばした。
「きゃっ!」
雪奈は木に当たり気を失っている。今のうちに逃げないと。
森を抜けると今は誰も住んでいないアパートに入り最上階の部屋に入り鍵を閉めた。
朝になっても帰ってこなければ親は心配して探しに来るだろうし朝まで耐えよう。
明らかに幽霊が出そうなところだが今は幽霊よりも怖い者に追いかけられてるから朝まで待とう。
――カン―――カン
嘘だろっ!あの森とこのアパートまで500mは離れてるぞ。
アパートの階段を登る音が近づいて来てる。やめろっ!来るなっ!
万が一の為に持ってきたサバイバルナイフで戦おう。
ドンッ!
な、何でこの部屋だと分かったんだっ!跡は残してないし何でここまで短時間で辿り着けたんだっ!
「奏の匂いがするなー。奏ー開けてよ。ねぇ!開けてよっ!」
に、匂い?森を出る途中で木の枝で腕を切った時の血か?そんなのであいつは分かるのか?頼む!来るな!
やめろっ!お前の言葉なんて信じるかっ!俺は襖に隠れて息を潜めた。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ドアを叩く音が強くなってきたドアを破壊するんじゃないかというほどの力で叩いてるようだ。
急にドアを叩く音が止まった。不安になって襖を開けたら
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「見いつけた!」
雪奈は襖の目の前に居た。
「今すぐ奏助けるよ逃げないでね」
「やめろっ!何が助けるだっ!この人殺しっ!美穂を返せっ!」
「あの女は奏を殺そうとしたから殺したのよっ!何度も言ってるでしょっ!」
「嘘だ!信じない!」
「そんなに信じてくれないならあの女のところに行けばいいじゃない!」
ザクッ!
腹を刺された。それもかなり深く。
「…。死んだの?ようやく奏も悪魔から助か…。え?」
ザクッ!
「はぁ、ようやく取り憑けたよ。余計な事をするんじゃねぇよクソアマっ!」
雪奈と言う奴はそのまま涙を流しながら気を失っていった。当然だ首を切られたんだからな。
「前のご主人は弱かったからこれくらいの男じゃなきゃな」
そう言うと悪魔が取り憑いた奏はアパートを出た。
経った1時間で起きた悲しい出来事であった。