もう一人の自分
「もう一人自分がいればなぁ…」
この言葉を聞いた地蔵は青年に力を授けた。
「また知らない間に喧嘩しないでよ」
「うるせぇ人の勝手だろ!」
「この体自体は僕の体なんだから好き勝手に使わないでよ!」
僕は怒っていた。この男…いや実体は持っていないが何故か僕の体に取り憑いてる
もう一つの人格。名前は「モミジ」というらしい。1年前に路地裏で喧嘩してる最中に腹を刺されて死んだという事だけを聞いた。
この話が本当ならこれは幽霊なのか…。
「つーか俺を呼んだのはお前だろ!文句言うな!」
「君以外の人格なら文句言わないけどね…」
この人格がこの世にきた理由は今や代表的な都市伝説「こっくりさん」を使って
霊界に穴を開けたのが原因で未練がある霊を成仏するために来たとか…。
正直言って嘘くさくて廚二っぽい事を言われた所で「他の人に憑けば?」としか思わない。
しかもこっくりさん自体をした時には何も憑いていなかった。
では、何故憑いたのか。それは通学路にある摩訶不思議な地蔵にこっくりさんの時に使った
十円玉を供えて「もう一人の自分が居ればなぁ」と呟いてしまったせいで憑いたのだ。
「でさぁ君が言っていた未練の残った霊を成仏って無理ゲーに近い気がするんだけど…」
僕には霊感が欠片も無い。だからこっくりさんを試したのだ。
しかも何も起こらなかったという…。
「実体がお前に見えなくても俺が見えるから大丈夫だ!」
「部屋に誰かいるのー?」
部屋の外から母の声が聞こえた。
「今電話してるー」
と言うと
「声小さめにしてねー」
と返って来た。親にもこの人格の話をしたいのだが言った所で無視されるだけだししていない。
「で、話戻るけど実体が見えたとしてその霊をどうやったら成仏できるの?」
「掃除機で吸って回収すればいいんじゃないの?」
「それは別のゲームの話…」
「―ってのは冗談で霊自体は『物体』または『人体』にしか憑かないから異常があったらすぐ分かるんだ」
「物体に憑いたら『からかさオバケ』のようなものになるのは分かるけど人体に憑いた場合はそうすれば分かるの?例えば超能力が使えたりするとか?」
そう聞くとコノハは首を横に振り
「見た目じゃなく内側だけ…心が変化するって事だけだから…一目じゃ分からないからお前に憑いたんだ」
「つまり僕が人と交流すれば何か分かると?」
「話が分かる奴だなー」とテディベア(モミジ)が腕を組んで頷いている。
「見つけても不用意に刺激すると攻撃してくるから気をつけろよ?」
「分かった」と言い。学校に行く支度をした。
まさかあんな事で僕は成仏戦線の一員になる事という事はこの時の自分は知らなかった…。