第6話 年明け
悪霊の長の目的がついに明らかになる!
クリスマス、年末と、時が経ったが二度目の襲撃以来『悪霊の長』とユウヤたちが遭遇することはなかった。適当に幽霊を除霊し、受験勉強もし、そんなこんなでついに年が明けた……。
「あけましておめでとう」
「いえーい!あけおめ!そんじゃ、いこっかぁ」
「あけましておめでとう。近所の神社でいいわよね?」
「ああ、うん。そうだね」
元旦、ユウヤはユミとユウカと共に初詣に行くことにした。神社に着くと大勢の人がいた。
「ふぅー……人が多くて息苦しいね……」
「そう?それじゃあお参りだけにしとこうか?」
「そうね……私もこんなに人のいる場所だときついわ……」
お参りも手短にし、早足で神社を出る3人。
「しかし……今日みたいな日でも制服なんだね」
「ん?変だったかな?」
「い、いや……変ってわけじゃないけど」
(いつも制服着てるような気がするんだよなぁ……)
せっかくの元旦なので、ユウヤたちはそのまま遊んでから帰ることにした。ユウヤは年上の女の子との遊び方なんて知らなかったが、初めて撮ったプリクラや、ぬいぐるみのクレーンゲームなんかを楽しんだ。
「あっははは!」
「そ、そんなにいつまでも笑うこたないだろ!」
「だって……ユウヤくんの目が……こんなにキラッキラであははは!あーおかしい」
「うっふふ!まさかこんなすごいことになるとはねぇ……」
「あーもープリクラってこれくらいが普通なんじゃないのぉ!?」
「いや、でも……これは……やっぱダメ!あははは!ひーひー……」
(うーむ……まあ、違和感はすごいよね)
確かにユウヤもおかしいとは思っていたが、こうまで笑われるとさすがに恥ずかしくなった。
元旦は不思議なパワーがある。この日は霊たちもあまり動き回ることがない。
しかし、そんな中でも動き回っているものがごく希にいるのだ。
その一体が、『悪霊の長』であった。彼は今日、悪霊たちを集め自身の目的について語っていた……。
「諸君、私は神々に戦争を仕掛ける」
ざわっ、と悪霊たちの中でどよめきが起こる。
「悪霊のパワーをもってすれば、神々にもかなうだろう。それに、君たちはそれだけではなく、私のさずけた力も持っている……」
悪霊たちはまだ話の全貌を把握してはいない。自身を導いてくれる存在の言葉に耳を傾けてはいるが、理解まではしきれないようだ。
「その力があれば、神を堕とすこともできる!信じろ!私を、自分を!」
「あ、あの……長様、なぜ神に戦いを挑むのですか?」
1人の悪霊がおずおずと疑問を呈した。
「……詳しくは言うことは出来ない、だが、私は神に深い恨みを持っている」
「は、はあ……恨みですか……」
悪霊の長の面の奥の目がギラリと光る。
「どんな理由にしろ俺たちは長様について行きますよ……なんてったって存在するためにあなたが不可欠ですから」
「神との戦い……いつ始めるんです?」
「……最近、すばらしい霊力を持つ人間を見つけた……戦争を始めるのは、彼の血が流されてからだ!!」
「おおおーー!!」
「さっそく今日は、各々『霊力集め』をしてきてもらおうか……」
「え……今日、ですか?」
悪霊の長は首をひねった。
「今日では……何かまずいことがあったか?」
「今日は元旦でして……我々は動きがにぶります」
「む、そうか……そうだったな……」
悪霊の長は少し考えてからこう言った。
「それでは、正月明けから我々は本格的に行動を開始する!!」
「おおおーー!!」
新年早々、不穏な空気が街を包み込んでいた……。
悪霊たちが動き始める……