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ごぉすとばすたぁず!  作者: Jの者
第1章 ようこそ
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第2話 はじめてのおはらい

ユウヤくん、幽霊とご対面。ドッドドレミファドレミファソラシド

 あの後、今日はもう遅いからと帰ってきたが、ユウヤは眠れそうになかった。とりあえずおにぎりを食べ、ずっと考えていた。

 ユミとユウカ…彼女達はなぜ除霊師になったのか、除霊師は夜中でないと活動できないのか、僕に本当に除霊ができるのか……ユウヤの考え事は尽きそうになかったが、いつの間にか眠ってしまっていた……。


「そういえば……あの二人ってどこに住んでいるんだろう」

 彼の疑問は結局これに落ち着いた。二人に会えなければどうしようもないと、そう考えているからだ。

(そういえば、じゃないよ!ユミとユウカに会えなければまだなんにもできないじゃないか!)

 その日一日考えて、結局彼は幽霊を探すことにした。幽霊に会えば、彼女らも除霊しにやってくるかもしれない、と思ったからだ。

 そして夜の十時、彼はコンビニに行くと言って出かけようとした。玄関のドアを開け、空気の冷たさに身震いしたその時である。

「ほら!やっぱりここだった〜!」

「こんばんは、ユウヤくん。あなた、ここに住んでたのね」

「ユミさんとユウカさん!?なんで僕の家がわかったの!?」

 ユウヤは、ユミとユウカに家を教えてはいない。

「ふっふーん、女の勘という名の神通力よ」

 ユミが冗談ぽく笑う。その笑顔を見てホッとしたユウヤは思わず吹き出してしまった。

「すごいんだね、女の子って」

「あーっと、ユウヤくん?コイツの言うことは話半分に聞いといて」

「えっ、ひょっとして嘘なの?」

「いやーごめんごめん。あの後家聞いてなかったって気づいてさ……ついてったの」

 一転、ユウヤはユミの笑顔を恐ろしく感じた。

「それってほとんどストーカーだよ」

 ユミとユウカは、「女が男のストーカーするって危険〜!」と大笑いしながら言った。


 夜の街を歩きながら、ユウカは言った。

「今日はユウヤくんの除霊師体験ね。軽め〜にいくから肩の力抜いていいよ」

 どうやらユウヤが緊張していることは、二人にバレていたようであった。なにしろ初めて除霊師として夜の街をうろついているのだ。緊張するなという方が厳しい。

「軽め〜っすか、それなら安心だね」

「ユウカ、ユウヤくんに結構優しいよね〜。ひょっとして……」

 ユミがいたずらっぽくそう言うと、ユウカは顔を赤くした。

「ち、違うわよ!そういうのじゃないから!」

「じゃあなんで私と態度がこんなに違うかな〜?」

「それはあんたがいつもドジするからでしょ!」

「そんなにドジしてないよ!」

「ふ、二人とも……喧嘩しないで……」

 ユウヤは苦笑いした。二人はどこにでもいそうな女の子であるが、除霊師である。ユウヤには、まだどこか信じられないところがあった。


 最初に気付いたのはユウヤだった。

「……!二人とも!なんか聞こえない?」

 公園の近くを通っていると、ブツブツと呟くような声が聞こえたのだ。

「たしかに……なんか声が……」

「あそこ!」

 ユウカが指さしたのは公園の砂場である。体が少し透けた女性が砂場に穴を掘っているのが見えた。

「あれは、幽霊……だよね?」

「そうだよユウヤくん……それじゃ行ってらっしゃい」

「……は?」

 ユウヤは素っ頓狂な声を出した。まさか自分がすぐに出るとは思っていなかったのだ。なにしろ初めてなのだ。ユミかユウカが除霊するのを見て学ぶのかと思っていたのである。

「え、こういうのっていきなり一人で行くもんじゃないよね?」

「え?別に一人で平気よぉあんなの。ユウヤくんならできるって」

 ユウカもうんうんと頷いている。

(僕がおかしいのか!?一人でって……この業界では当たり前なのか!?)

 ユウヤは、とりあえず二人に従い一人で除霊活動を行うことにし、幽霊の女性に近づいていった。

「あ、あの〜」

「あ?何よ」

 女性が若干威圧的にそう言ったのでユウヤはビビったが、負けないようにがんばった。

「あなたは……ここで何をしてらっしゃるんですか?」

 なぜか敬語になっているが、ユウヤはいっぱいいっぱいなのだ。仕方がないことなのだ。

「穴掘ってんのよ」

「穴……ですか?」

「そう、ここに落とし穴作ってんの。誰か落ちたら笑えるでしょ?」

「……落とし穴……ですか」

 明らかに迷惑がかかっているので、ユウヤは除霊することにしようと思ったが、とりあえず経験者であるユミとユウカの方をチラと見た。するとユミ達は拳を突き出し、「やれ!」と言うように口を動かした。

「……落とし穴、誰か落ちたらその人には迷惑かかってますよね?」

 一応最終確認のつもりで聞くと、女性は立ち上がった。

「あんた、さっきからなんなの?ちょっとウザイんだけど。どっかいってよ!」

 女性が持ってるスコップで脅かしてきたので、ユウヤは肝を潰した。

「わぁっ、ごめんなさい!」

 防御として突き出した手がコツンと女性に触れると、その瞬間女性は消えた。

「え、あれ?」

「やったー!出来たじゃん、ユウヤくん!」

「おめでとう、見事だったわよ」

「え、あの……僕殴ってないっすよ?」

「えっと……それは生者であるユウヤくんのエネルギーが幽霊より大幅に勝っているからよ」

「エネルギー?」

 除霊師がどうして殴ったり切ったりするだけで除霊できるのか、ユウヤはまだ知らなかったのである。

「幽霊ってね、実は持っているエネルギーはとっても弱いの。だから自分より強い生きている存在に当たるとエネルギーを吸収されて成仏しちゃうのよ」

「へぇー……それで……」

 大変わかりやすい説明なので、国語のテストで60点程度しか取れないユウヤもすぐに理解出来た。原理的には分からなくとも、そういうことなのだと納得出来た。

「それじゃあ、今日は終わろっか」

「え、もう終わり?」

「私達も動き回ると疲れるじゃない?それと一緒で幽霊もそんなに動き回らないの。二日に一回除霊するくらいでいいのよ」

「へぇー」

「幽霊が人に迷惑かけるって言っても大したことはないしね」

「まあ、そうだね。触れたら消えちゃうのに、出来ることなんて少ないよね」

 帰り道でも幽霊を探してみたが、いたとしても大抵は何もせずじっとしているだけで、無害そうなのがほとんどであった。

 こうしてユウヤの除霊師体験一日目は、特に危険な目にあうこともなく終わったのだった……。


 次の朝、ユウヤが学校に行くため外に出ると、ユミとユウカがいた。

「あれ?二人ともなんで……」

「いやー、除霊報酬あげるの忘れてて」

「全くユミったらドジなんだから」

「ちょっとぉ!忘れてたのはユウカもでしょう!?」

「バレたか」

 長引きそうなのでユウヤは話を遮った。

「あの、報酬って?」

「ああ、これよ」

 差し出されたのは一万円札であった。ユウヤにとってこれは大金である。

「えっ、こんなに!?」

「そうよ〜一体につき一万円もらえんのよ〜」

 ユウヤは中二的な趣味のために結構出費がかさむことがあった。

「あ、あの……」

「なに?」

 そんなユウヤにとって、あの程度の仕事で一万円ももらえるのは相当大きいことだった。

「これからもよろしくお願いします!!」

「おっ、やる気になってくれたんだ!」

「はい!僕、除霊師がんばります!!」

「おう!その意気だぞユウヤくん!」

 ユウヤは単純な男であった。


 そんな彼らを見つめる怪しい影があった……。

「この街の除霊師はガキだけか……ふっ、やりやすそうな街だ」

 怪しい影はニヤリと笑い、ビルの影へと消えていった……。

怪しい影は、渋い声の声優さんで再生してやって下さい。

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