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仲良くなりたいユキ子さん


結局ノーコさんは私の配達についてきました。お仕事という面では私とノーコさんの合同でのお仕事として受け付けたとアルさんは言っていました。ちゃんと報酬も二人分出るそうです。


「うーん、どちらでしょうか」


アルさんにもらった地図を見ながら私が首をかしげていると、横からノーコさんがのぞき込んできました。


「ちょっと、地図見せなさいよ」


「ここなんですけど、分かります? 私はまだ街に来たばかりでどうにもよくわからないんですよね」


「アタシだって来たばっかよ! それでも地図くらいは読めるんだから……って何よこれ! ワームがのたくったような地図じゃないの! これ描いたやつ絵心なさすぎ!」


「万が一外部に流出しても大丈夫なように分かり辛くしてあるらしいですよ」


「地図の意味ないじゃん!」


配達仕事を受けたはいいものの、二人して道の分からない街の中をうろうろうろうろ。土地勘ないとやっぱり大変ですね。

ようやく一件目にたどり着いたころには私たち二人共肩で息をするくらいには疲れていました。


一件目は街の東側で八百屋を営むおっちゃんでした。


「お、リッツさんとこに出稼ぎ来てるユキ子ちゃんだな」


私はおっちゃんを知りませんでしたが、おっちゃんは私の事を知っているようでした。

最近、やけにいろんなところで声を掛けられると思ったのですが、理由を聞いてみるとどうにも私の事が街中で噂になっているようです。


可愛いだとか、不思議な衣装を着ているだとか。

なんだか可愛いといわれるのは照れてしまいますね。衣装も、雪女の伝統衣装なのですけれど、これ以外はあんまり着ようという気にもなれずにずっときているのですが、言われてみれば確かに。今のところ街中で似たような服を身に着けている方は見たことがありません。そのせいで浮いているというか、目立ってしまっているというか。


「はいよ、受け取り確認のサインだ。これをギルドの受付に見せればいいからな。手紙ありがとよ、また頼むぜ」


おっちゃんにサインをしてもらって、無事に一件目は終わりました。

あともう一件です。


またもや探しに探し回った挙句、ようやくたどり着いたのは酒屋さんでした。息も絶え絶えな私たちを眼鏡のお姉さんが笑顔で出迎えてくれました。


「あら、リッツさんのとこのユキ子ちゃんね。初めまして」


ここでも八百屋のおっちゃんのところと同じことが起こりました。私は知らなくても眼鏡のお姉さんは私の事を知ってくれているようです。


「お隣の子は、お友達かな? ここらでは見たことない顔だけど」


眼鏡のお姉さんはノーコさんの事を見て、不思議そうににっこり微笑みました。


「冒険者ギルドで知り合った出稼ぎの子です。私の後輩なのですよ」


えっへん。


私はセンパイですのでちょっとだけ偉そうに胸を張ってみました。山なりになるほどふくらみはありませんけれど私はまだ十五歳です。まだまだ成長の余地はあるはずです。


「なによ。先輩後輩って言ったって数日しか違わないじゃないの。それに友達じゃなくて、知り合いよ。し・り・あ・い」


ぷーっと口を膨らませるノーコさん。柔らかそうなほっぺたが随分と伸びて膨らんでいます。

どんな感触がするんだろうと、思わず指でつんつん。


「ぶっ! ちょっと! 何するのよ!」


ノーコさんは顔を真っ赤にして怒ってしまいました。

ごめんなさい。私だって同じ事されたらたぶん怒ります。怒りますけど……あまりにもほっぺたが膨らむおモチに似ていてつい触ってみたくなってしまったのです。


これを言ったら余計に怒られそうだったので、言わずに胸の中にとどめておきました。


「ふふふ、お友達なのね」


私たちの様子を見ていた眼鏡のお姉さんにくすくすと笑われてしまいました。


「はいこれ。受け取り確認のサイン。二人共、出稼ぎ頑張ってねー」


これで無事に二件目も終わりました。

あとはアルさんのところに行っておしまいです。


冒険者ギルドへと向かう道中、ぽつりぽつりと私とノーコさんはお話を始めました。



「貴女……ユキ子っていったっけ、どうして出稼ぎなんてしに来てんの? 村で働いたりとかすればよかったんじゃないの?」


「えっと、説明は難しいんですけど、私の故郷は一年中雪と氷におおわれてる村なんですよね。そんなだからあんまり仕事もなくて……」


お母さんたちにも楽させてあげたいですし。

それに、私も村以外の場所を見てみたかったというのもありまして。


「ノーコさんはどうして出稼ぎに?」


「アタシ? アタシは……」


一瞬ためらったのちに、ヨーコさんは元の表情に戻ると何事もなかったかのように答えました。


「アタシは、一族の落ちこぼれだからさ、故郷で働けなかったんだよね」


さらりと。

聞いてはいけないことを聞いてしまったような気がしてなんだか私は少し申し訳ない気持ちになりました。


けれどノーコさんは続けました。


「もともとさ、故郷にはそんなに、というかほとんど仕事がなかったからみんな外の世界に散ってくんだけどね、それでも全く仕事がないってわけじゃないから村に残る人はいるんよ。けどアタシは落ちこぼれだから村を追い出されちゃった。ってカンジ」


まぁ、そんなもんよ。とノーコさんは自嘲するように肩を竦めました。

出稼ぎというのは、それぞれに色んな事情があるようです。けれどそれが何であれ、今やることにはきっと変わりないのでしょう。

働いて稼ぐという目的には違いないのですから。


「けれど、ノーコさんまだお若いですよね。落ちこぼれなんてそんなことなさそうに思えるのですけれど」


「種族柄よ」


端的にノーコさんは答えてくれました。


「ちなみに、なんの種族か聞いてもよろしいですか? ちょっとした興味なんですけど」


「嫌よ」


こちらもまた端的に。けれど今度は否定の言葉でした。


「具体的な種族は言いたくないけど、アタシの種族は十歳で成人して、容姿が大人の容姿になるの。けれどアタシはそうならなかった。死ぬまでずっと子供のままなのよ。だから落ちこぼれ。分かりやすくていいでしょ」


「成人が十歳? それは若いですね。ということは、ノーコさんもまだ若いんですか?」


「十二よ。十歳になってからも二年は待ってくれたけれど、アタシの姿が一向に変わることがなかったからしびれを切らして追い出されたの。で、貴女はいくつよ?」


「私ですか? 私は十五歳ですよ。だから私の方がお姉さんですね」


「はぁ!? 十五!?」


嘘でしょ? とノーコさん。


「同い年くらいだと思ってた」


「私も冒険者ギルドでノーコさんを見た時は同い年くらいだと思ってました」


「…………ぷっ」

「ふふふ」


二人して、なんだかおかしくなって、どちらからともなく笑い始めました。


「あははは! 何よあんたアタシより年上なの? だったらアタシに敬語なんて使わなくたっていいじゃないの」


「ふふふ、これは癖ですよ。ノーコさん」


「ノーコでいいわよ」


「ノーコ……ちゃんさん?」


なんだか呼び捨ても恥ずかしくて、ちゃん、とつけたはいいですけれどなんだかそれも馴れ馴れしいような感じがして。不思議な呼び方となってしまいました。

そんな私の事をノーコさんは更に笑い飛ばしました。


「あっはっはっはっは! 何よノーコちゃんさんて!」


「むぅ……」


「はいもう一回、ノーコ!」


「ノーコ……ちゃん」


「……まあいいわ。アタシもあんたの事ユキ子って呼ぶから、よろしく。今更敬語使う気なんて慣れないし、いいわよね」


「はい、私もそっちの方がうれしいです。ノーコちゃん」







冒険者ギルドについて、私たちはアルさんに依頼達成のサインを見せました。


「はい、オッケー♡ こっちが報酬よ」


アルさんは私とノーコちゃんの手の上に幾らかのお金をのせてくれました。


「ところで、二人共随分仲良くなったみたいねぇ。お姉さん、嫉妬しちゃうわぁ♡」


アルさんの言葉に私とノーコちゃんは顔を見合わせて。


「「はい!」」


仲良くなったのだと、そう答えたのでした。




やっとこのキャラ出せました。種族名はそのうち出てくると思います。原典なにそれおいしいの?

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