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1 冬子さん
翌日、僕は新宿駅東口の駅前の交番の前で手持ちぶさた気味に冬子さんが来るのを待っていた。
今、何時だろう?
携帯を取り出し、時間を確認してみる。
すると、午後12:55だった。
もうすぐ待ち合わせの時間だな。
そんな事を考えながら、僕はゆっくりと顔を上げた。
新緑の香りを纏ったさわやかな初夏の風がほほをなぜる。
空を見上げれば、雲一つない五月晴れ。
よい天気だ。
と、その時、
「優輝さん、お待たせしました」
と、聞き覚えのある、少しハスキーで知的な声が聞こえてきた。
背中まで伸ばした流れるように艶やかな黒髪が透き通るように透明感のある白肌によく似合う、和風の超美人、冬子さんだ。
今日はジーパンに白のチビTを着ている。
いつものように質素ないでたちだが、この飾り気のないところも彼女の魅力の一つだったりする。
「いぇ、僕も、今、来たところですから・・・」
そう言いながら、携帯で時間を確認してみる。
午後1:00ジャストだ。
あいかわらず時間ピッタリだな。
そうして、携帯の時刻表示を見ながら、そんな事を考えていると、急いで来たせいか少し乱れてしまった息を整えながら、冬子さんが言い継いだ。
「そうだ・・・。
冴子さんは少し遅れるそうです」
なるほど・・・。
何か急な用事でも入ったのだろうか?
しかたがない。
「そうですか。
解りました」
繁々とうなづきながら、了解する。
そうして、それから、しばらく、冬子さんと取り止めもない世間話をしていると、10分程遅れて、ようやく冴子さんが到着した。
薄く茶色に染めたサラサラの少し短めのハイレイヤーの髪。
少しだけエラが張った、丸みを帯びた、顔の輪郭。
キリリと引き締まった細い眉。
少し釣り上がった二重の目。
少し厚めの官能的な唇。
その肌は、抜けるように白く、瑞々(みずみず)しい透明感がある。
冬子さんに負けず劣らずの美人だ。
服装は、黒のスーツにパンツそれから白のシャツ、鍛え抜かれた筋肉美がその上からでもよく解る。
「すいません。
少し遅れました」
急いで来たせいか、少し乱れてしまった呼吸を整えながら、冴子さんがいかにももうしわけなさそうに口を開いた。
「いぇ・・・。
じゃ、冬子さん、行きましょうか」
「えぇ、そうですね」
冬子さんが、繁々と相槌を打ちながら、答える。
そうして、さっそく僕達は僕の行きつけの喫茶店へと移動したのだった。




