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そう、あれはもう一年以上も前になるだろうか。
一人の女の子が魔法研究板のオフ会に参加してきた。
とても、華奢で・・・。
繊細なガラス細工のように触れたら壊れてしまいそうで・・・。
寂しげな後姿が印象的な女の子。
それが夢香ちゃんだった。
今、思えば・・・。
あの頃から酷くイジメられていたのだろう。
しかし・・・。
気づいてあげられなかった。
そう、僕は気づいてあげられなかったのだ。
その事が酷く心残りで・・・。
僕はグッと唇を噛み締めた。
そう、ただ、それだけが、心残りだ。
「優輝さん・・・」
園子ちゃんのその声にハッと我に返る。
「そろそろ・・・」
そうか。
携帯で時間を確認すると、ここに来てから、すでに30分以上が過ぎていた。
ずいぶんと長居してしまったな。
迷惑になってもいけない。
そろそろ帰るとしようか。
「そうだね。
じゃ、そろそろ失礼しようか」
そうして、僕と園子ちゃんは、夢香ちゃんのお母さんに挨拶を済ませると、そのまま夢香ちゃんの病室を後にしたのだった。