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漆黒の暗闇の中に、一人の少女が、スマホの液晶画面を熱心にのぞきこみながら、座り込んでいる。
彼女はそんなに熱心にいったい何を見ているのだろうか。
覗き込んでみると、その液晶画面にはいかにも不可思議な図形が映し出されていた。
上下逆向きの二つの三角形を組み合わせたような記号が二重の円の中に描かれている。
いわゆる魔法陣と呼ばれる図形だ。
黒魔術の儀式等で頻繁に用いられ、術者の術力を増すとも、召還した悪魔や悪霊から術者の身を守るとも、言われている。
そうしていると、やがてその魔法陣が何か人の不安を掻き立てるようなギラギラとした異様な輝きを放ち始めた。
その輝きはしだいにその強さを増していく。
そうして、やがて、辺り一面に、その輝きが満ち溢れた、その時、何か、黒い霧のようなものが、スマホの液晶画面から、モクモクと立ち昇り始めた。
それを見た少女が、驚いた様子で、口に手を当て、大きく目を見開く。
そして、その黒い霧は、天井近くまで立ち昇ると、そこでしだいに人の形を取り始めた。
やがて一つの人影が暗闇の中に現れ出た。
その人影は、漆黒のローブを身に纏い、そのフードを目深に被っている。
そして、そのフードの奥に見えているのは・・・。
仮面?
そう、それは真っ白な純白の仮面だった。
なぜだろうか、その理由はよく解らないが、真っ赤な血の涙がその頬をるいるいと流れ落ちている。
そして、耳元まで大きく裂けたその口、さらに、その、黒々とした闇を湛えた洞穴のような、二つの眼窩の奥では、鮮血のように真っ赤な瞳がランランと光り輝いている。
そうしていると、やがて、その仮面の向うから、まだ幼さの残る若い女の声が響いた。
「私の名は、死夢花、仮面の黒魔術師。
私を呼んだのはあなたですか?」
「はい」
すかさず、少女が、小さくうなづきながら、答える。
すると、仮面の黒魔術師は、ゆっくりと天井近くから降下してきて、少女のすぐ目の前へと降り立った。
そうして、そのランランと輝く真っ赤な目で少女をじっと見つめながら、少女に問いかける。
「気持ちは・・・。
変りませんね?」
「はい」
少女が、そう言いながら、深々とうなづいてみせる。
「解りました。
それでは・・・」
仮面の黒魔術師は、そこで、大きく息を吸い込むと、続けた。
「あなたの恨み、私が代わって晴らしましょう」