表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
混沌のディオス・ウォー  作者: 白沼 雄作
第四章 家族の温もりを知る
52/52

第七話 邂逅

大変お待たせしました! 続きを出すまで一年以上もかかってしまい、本当にすみませんでした!

こんな作者の作品でも続きを一年以上も待ち遠しくしてくれた人には本当に感謝です! 

まだ不定期な状態が続きますが、今後ともよろしくお願いします!!

 時計の針が2時を指す頃――


 鋭太郎達は、ユピテルの部屋でヘルメスから連絡が来るのを待っていたが……


「――おかしいな、2時より前には連絡しろと言ったんだがな」


 一向に、ヘルメスから連絡が来なかった。


「忘れてるんじゃないのー?」


 神奈が退屈そうに背伸びしながら言った。


「いや、あぁ見えてもあいつは連絡を怠るような奴じゃねぇぜ」


 恋侍がフォローを入れた。

 ヘルメスは元神衛部隊一番隊副隊。仕事に関しては他の神以上に熟せて当然のはずだ。


「ということは……?」

「どっかでくたばってる可能性が高いってことだ。まぁ、誰にやられたかは検討付くがな」

「――荘夜がヘルメスを倒せるとは思えないけど」


 そう言ったのは夏織。実の弟に対して厳しい発言をした。

 弟の事をよく理解しているからこそ、そのように言えるのかもしれない。


「さっき、ユピテルさんが言ってた『黒い煙』が、力を貸してるんじゃないか?」


 鋭太郎が言うと、秋葉が頷く。


「ま、そう考えるのが妥当だな」


 秋葉が言った後、ユピテルが咳払いして身を前に出して頼む。


「――ともあれ、ヘルメスに何かあったことに変わりはないだろう。悪いが、彼の捜索を頼めるか?」








「…………」

「…………」


 時刻は3時過ぎ――


 鋭太郎と夏織は、二人きりで街の中を捜索していた。

 二人は横に並んでいるものの、気まずさを表すかのように少し距離を置いて歩いていた。


(今はデートをしている訳じゃない! ヘルメスを二人で捜索しているだけなのに、なんでこんな空気に――デート……)


 鋭太郎は気づく。今がデートのチャンスなのではと。


(馬鹿野郎!! ヘルメスの身が危ないかもしれないっていうのに、何呑気なこと考えてん――だ……ってあれ?)


 ふと右脇に目を向けると、夏織の姿がなかった。


「夏織? どこに――」


 鋭太郎が周囲を見渡すと、後方の喫茶店をジッと見つめて立ち止まっていた。

 その喫茶店は、ココアが美味しいと有名なお店だ。


(……気分転換。あくまで気分転換だ)


 そう自分に言い聞かせた鋭太郎は、夏織にゆっくり歩み寄る。


「……夏織」

「!? ごめんなさい! つい――!」

「少し、休憩するか?」

「…………え?」






「ん~! 美味しい!」


 喫茶店の屋外席で、ココアを嗜む鋭太郎と夏織。


「ここのココアは最高ね! 他のと甘みが違うわ!」


 夏織は、ここを口にして満面の笑みを浮かべていた。


「あぁ、そうだな」


(……甘すぎるとか言えないけど。けど、夏織の口には合ったみたいだな。敬語も忘れるくらいテンション上がってる)


「そこのあなた、おかわりをお願いするわ!」

「え、えっと……」


 店員が戸惑っていると、鋭太郎が補う。


「すみません、ココアをもう一つお願いします」

「あっ、かしこまりました! 少々お待ちくださいませ!」


 理解した店員が、頭を下げた後その場を去って行く。


「鋭太郎さんはもう飲まないの? ――あっ!? 飲まないんですか?」

「あぁ、もう大丈夫だ。夏織は気にせず飲んでいいから。あと、敬語じゃなくていいんだぞ」

「ですが……」

「もう長い付き合いになる。気を遣うのは疲れるだろうし」


(むしろ、俺が敬語を使わないといけないはずなんですけどね)


「そう、ですか……」


 夏織は恐れていた。

 鋭太郎の期待には応えたかったが、それに応じれば本来の自分を晒すことになる。

 冷たく口の悪い、本来の自分が。

 しかし――



「夏織、俺は何があっても夏織のことを嫌いにならないよ」



 鋭太郎は、それに気づけないほど鈍感ではなかった。


「!?」


 夏織が目を見開かせて驚く。


「無理に清楚ぶらなくていいんだぞ。予想以上に強気な性格で最初はビビってたが――いや、正直に今でもビビってる。けど、俺のために自分の身を投げてまで戦う姿を見たら嫌いになれない、むしろ惚れた」


「っ!?」


 夏織が顔を赤くし、体を震わせ始める。


「俺は、俺のことを本気で愛してくれるお前のことをもっと知りたい。だから、ありのままの夏織を見せてくれ」


「あっ……えっと……その……」


 夏織は数秒間目を泳がせた後、ゴホンと咳払いして凜々しく微笑む。





「――改めてよろしく……鋭太郎」





「!?」


 鋭太郎の心拍数が急上昇する。


(雰囲気が変わるだけで、こんなにドキッとするものなのか……!)


 改まった夏織に緊張し始める鋭太郎。

 それ以上に、改まった本人が緊張していた。


「……ちょっとコンビニ行ってくるわ」

「コンビニ……コンビニ!?」


 鋭太郎が驚いているのも束の間、夏織は立ち上がり、ぎこちない歩き方ですぐ近くにあるコンビ二の中に入っていく。


「……神世界では何かあればコンビニに行くのが当たり前なのか? つうか、神世界にもコンビニ――」


「おいゴラァ!!」


 突然、後方辺りから怒声が響いてくる。


(またチンピラどもか? ここ治安悪すぎないか?)


 そう思いながら後ろを向く。


「すまないな、久しぶりに外出したもので」


 車椅子に乗った銀髪の青年が、チンピラ四人に囲まれていた。


「オレ様の足を引きやがって! クソが!!」


 チンピラの男が車椅子を蹴り倒す。乗っていた青年は地面に投げ出される。


(なんて奴らだ! 止めない理由はない!)


 鋭太郎は考えるよりも先に、青年を助けに行く。


「おいお前ら、いくら何でもそれは一方的すぎないか?」

「あぁ?」


 チンピラ達が鋭太郎に標的を変えようと、彼の前に並び立つ。


「俺があの人の代わりになって相手して――」

「待て、少年」


 青年が起き上がりながら鋭太郎を呼び止める。足が上手く動かない様子で、地面を這いずりながら車椅子を立て直す。


「いいんだ、この人たちは俺に怒りをぶつければ気が済むのだから、君が庇う必要はないんだ」

「…………は?」


 青年の言い分に、鋭太郎は理解に苦しんだ。


「彼らが怒っている原因は俺になる。その怒りを無関係なものにぶつけられたくないんだ」


(この人……ドM――には見えないな……自己犠牲の精神が強すぎるだけか?)


「ほぅ……中々面白いこと言うな……」


 チンピラ達が青年の方に戻っていく。


「なら、遠慮なく痛ぶらせて――ぶふぁ!!」


 チンピラの一人が横に吹き飛ぶ。

 鋭太郎が横に殴り飛ばしたからだ。チンピラはコンビニのガラスを突き破り、店内で倒れる。


(力加減は上手くいったみたいだな……コンビニには申し訳ないけど、マジで)


「この野郎――ッ!!」


 チンピラの仲間二人が鋭太郎に向かって一斉に飛びかかる。

 鋭太郎も立ち向かおうと拳を構えるが――




「――――手を出すな」




 青年が重々しく告げると同時に、周囲にドッと謎の緊張が走る。


「!?」

「!?」


 その緊張にチンピラ二人は押しつぶされそうな感覚に陥り、鋭太郎に殴りかかる手を止めて、そっと後ろを向く。

 青年は二本足でしっかりと立ち、チンピラに向けて強く睨み付けていた。


「……その少年に、手を出すな」

「ひっ、ひぃ~!」


 チンピラ二人は情けない声を出し、この場から逃げ去る。


(この人が放つ殺気、尋常じゃないぞ! 俺に向けてないのにこの威圧かよ!!)


 鋭太郎の足が震えている。周囲にいる無関係な人たちも、体を震わせながら青年を見ている。


「……少し、りきみすぎたかな…………?」


 青年は優しい顔に戻り、足を崩して前に倒れる。


「!? 大丈夫ですか!?」


 それを見た鋭太郎は無意識に足の震えを抑え、青年の元へ。


「……君は勇気があるね。こんな俺を助けてくれるのだから」

「あんなの見たら、助けたくなりますよ!」


 鋭太郎は車椅子を青年の前まで運ぶ。


「ありがとう……けど、気をつけた方がいい」


 青年は車椅子に座る。



「君の優しさは、時に仲間を追い込むことになるかもしれない」



「え? それってどういう――」

「すまない、先を急いでいるんだ。また会った時にでも話そう」


 そう言って、青年は車椅子を動かし、鋭太郎を横切ってこの場を去って行く。


「…………」

「鋭太郎さん――じゃなかった、鋭太郎」


 コンビニから出てきた夏織が、不思議そうに辺りを見渡しながら鋭太郎に歩み寄る。


「何かあったみたいだけど、大丈夫なの?」

「あぁ、特に問題ない。ただ、あの男が――あれ?」


 鋭太郎は青年が向かった方に視線を送るも、既に彼の姿はなかった。車椅子では、僅か数秒で視界に写らない場所に移動するのは困難であるはずにも関わらず。


「……男?」

「あ、あぁ。車椅子に乗った銀髪の男がいてな。その男がチンピラに絡まれてたから助けに行ったんだが、その必要もないくらい強い人だった」

「そう…………」


 何か名残惜しそうに下を向く夏織。


「? どうした夏織? もしかして知り合いだったか?」

「いえ、何でもないわ」

「そっか。ただ、凄まじい殺気を放ててたし、神だった可能性はあるなぁ……」


 鋭太郎が背伸びしながら、喫茶店の席に戻る。

 夏織は何かを呟きながら、彼の後を追う。

 

「……あのプレッシャー…………いや、そんなはずは…………」



   ※



「…………」


 青年は、ひたすら車椅子を動かしていた。


「あなた!! こんなところにいたの!?」


 慌てた様子で青年に駆け寄る一人の女性――柚乃がいた。


「すまないな、ユノ。少しは外に出ないと体が鈍ってしまうからな」


 青年の正体は――アイテール。


「それならちゃんと私に言いなさい!」

「言ったら止めるだろ?」

「わかってるなら大人しくして!」


 柚乃は叱りつつ、アイテールを乗せた車椅子を押す。


「すまん、一言なかったのは本気で申し訳ないと思っている。だが良い収穫があってな。息子に会うことができた」

「!?」


 柚乃が足を止める。


「……あの子になんて?」

「安心してくれ、正体をバラすようなことは言ってないさ。息子も俺が神であること以外は気づいていないだろう。俺みたいな奴を助けようとしてたな、お前にそっくりだ」

「そう? キレる頭を持っておきながら後先考えず突っ込む所はあなたにそっくりだけれど」


 柚乃が再び歩き始め、車椅子を押し運ぶ。



「…………どこに向かうの? 私も同行するから」


「ひとまず真っ直ぐ向かってくれ。後々指示を出す」


「後々? 場所が定まってないの?」


「あぁ、ある神を追っていてね。今のところ前方にその神の魔力を感じる」


「ある神?」




「――エレボスだ」





次話の投稿日を明確にはできませんが、今月中にはもう一話載せられるように頑張ります!

また、新作の連載も始めたいと思いますので、そちらもよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ