表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
混沌のディオス・ウォー  作者: 白沼 雄作
第四章 家族の温もりを知る
49/52

第四話 阻止できぬ展開

お久しぶりです。

長い間休載してしまい、本当にすみませんでした。

今後もこのようなことが起きてしまうかも知れませんが、今後ともよろしくお願いします!

「ごちそうさまでしたー!」


 秋葉がアイテール達とのやり取りを振り返っている内に、神奈はバケツプリンを完食した。


「……マジで完食しやがった」


 気を戻した秋葉が正面を向き、その事実を確認し、引きつつも驚いた。


「えっへん! この位余裕余裕!」

「太っても知らんぞ」

「大丈夫! 神だからそう簡単に体型変わらないって! むしろ胸が大きくなったりするかも……!」


 そう言って、神奈は両手で胸を摩ると――




「ま、太ろうが関係ないがな。ありのままのお前が好きだ」



 突然、秋葉らしくない口説きが、彼女の耳に入ってきた。


「――ッ!?」


 神奈は顔を赤くし、勢いよく席を立つ。


「いッ、いきなり口説くとかッ! そんなこと言ったって何もないからな!!」


 神奈は秋葉に指を差し、嬉しい気持ちを隠すように慌てて言った。


「待て、今の俺じゃねえぞ…………誰だ?」


 本当は口説いていない秋葉は、その声の主を見つけるため辺りを見渡すと――


「どーも! 俺オレおれ!」


 気配を消して近づいていたのか、秋葉のすぐ右に立っていた。


「それにしてもチョロいなーガイアは。そんなんだから軽い男に騙されぶふぁ!!」






「ひでぇ……どいつもこいつも殴りやがって!」


 両頬に大きな痣ができていた恋侍

 秋葉と神奈は喫茶店を抜け、恋侍の後をついて街中を歩いている。


「しかも今回は二人同時にとか! お前らの中で俺を殴るの流行ってるわけ?」

「昔からそうだろ」

「タナトスは昔から問題児だったし、仕方ないね」

「黙れ! 秋葉は英雄、神奈はアイテールが目を付けていなかったら俺と同レベルだったんだぞ!」

「それはない」

「それはない」

「えぇ…………」


 秋葉と神奈が口を揃えて否定する。恋侍は何も返す言葉が出なかった。


「まぁいいや。ところで例の件は?」


 恋侍は少し下がって秋葉たちと足並みを揃え、改めて依頼の件を聞いた。


「わりぃな、今のところ目撃できてないな」

「あれま。結構目立つと思うから、すぐ見つけられると思ってたんだけどなあ……」

「もうこの街にはいないんじゃないの? そもそも、ヘルメスが見つけたときに捕まえれば早かったと思うけど?」

「その時接触はしたらしいんだがな、俺と秋葉が来るまで女と遊んでるとかいって場を去ったとのこと。少なくともこの街から出ることは――ん?」


 前方の少し遠くの場所で起きている騒ぎを目にした三人は、同時に足を止めた。


「あれは…………」




   ※




 まだ神奈がバケツプリンを食べている頃――


「……遅いわね」

「あいつのことだし、どっかで道草食ってそうだな」


 鋭太郎御一行は、道の片隅で恋侍たちを待っていた。

 待ち始めてから10分経過している。


「お兄ちゃん、お腹空いた」


 ネプチューンがポセイドンの服を引っ張り、そう告げた。


「もうそろそろで、お昼になりますね。何処か食べに行きたいところですが……」


 この場を動くわけにはいかない。

 困っていたポセイドンを見て、ゼピュロスが懐からクッキーを取り出し、ネプチューンにあげようとする。


「ネプちゃん、これで我慢できる?」

「えっ!?」


 クッキーを差し出されてパッと驚きを浮かべたネプチューン。


「あ、でもご飯の前にお菓子はダメだってお兄ちゃんが…………」


 兄との約束を思い出し、受け取るのを躊躇った。

 それを察したポセイドンが、優しく言う。


「今回は特別にいいですよ。あの人たちが、何時いつここに来るかわかりませんから」

「本当!? やったぁー!!」


 ネプチューンが等身大の少女らしく、はしゃぎ喜んだ。


「ありがとう! ゼピュロスお義姉ねえちゃん!」


 ネプチューンはゼピュロスからクッキーを受け取り、きちんと礼を言った。


「お、お義姉ちゃん!?」


 わざとなのか、無意識のうちなのか。

 ネプチューンが義姉あねと呼んだことに、ゼピュロスは顔を真っ赤にして戸惑う。


「お、おおおお義姉ちゃん!? 私が!?」


 挙動不審になり始めたゼピュロスを見て、ポセイドンは察してため息を吐く。


(ネプチューンが義姉と呼んだことで、許しを得たと思っているのでしょうね……)


「姉ちゃん……か…………」


 彼らのやり取りを、距離を置いて見ていた鋭太郎が思い出す――



 ――鋭太郎、お腹空いたでしょ? ほら、食べていいわよ。


 ――それ……最後の…………


 ――大丈夫。私はへっちゃらだから。



「…………」


(やっぱり、お姉ちゃんのことは忘れられない――いや、忘れちゃいけないんだ。お姉ちゃんが俺を守ってくれたから、今の俺がいる。だから、生きている『今』を大切にする。それに、文月市崩壊の犠牲者の中に、殺した犯人も紛れ込んでいる可能性もある。これ以上、憎しみを抱えてたら、お姉ちゃんに怒られるよな)


 鋭太郎は一人、決意を固めた。


「…………遅すぎるわ、何やってるんだか」


 一方、彼の隣にいた夏織は痺れを切らし、恋侍と連絡を取ろうと<コム>を唱えようとするが――



「そこの姉ちゃん、暇してるー?」



 彼女の左から、チャラチャラとした男二人が声をかけてきた。


「チッ…………鋭太郎さん、ここを離れましょう」

「おう」


 夏織は露骨に舌打ちをした後、チャラ男二人を無視して鋭太郎に場を去るように言った。

 鋭太郎もそれに従い、夏織の手を引いて去ろうとする。


(ここで面倒事を起こすわけにはいかない。それに、下手に関わると身に危険が起こるかも知れないからな……あっちが)


「ん? もしかして、そっちは彼氏?」


 チャラ男の一人が訊ねる。


(これに答えちゃいけない。彼氏や連れがいると引き下がるのはあくまでアニメや漫画の話。はいと答えても、夏織を強引に奪おうと暴力を振るってくるはずだ。そうなれば夏織が黙っている訳がない。早くポセイドンたちと――いや、あいつらを巻き込む訳にはいかないか……)


 鋭太郎は、事を穏便に済ませようと考え、ポセイドンたちを避けて逃げようとした。

 はぐれても連絡手段はあるからである。

 だが、鋭太郎の考えは甘かった。

 そもそも、絡まれた時点で何をどうやっても、穏便に済ますことなどできなかった。


「おいおい無視かよ。彼氏ちゃんと耳付いてんのか?」

「は?」


 チャラ男の挑発に乗ってしまった夏織は立ち止まり、男たちの方を睨みながら振り向く。


「夏織、構うな!」


 鋭太郎はなんとしてでもここを離脱しよう夏織の手を強く引っ張る。だが夏織はビクともしなかった。


「どうしたんだい? そんな顔して。せっかくの可愛い顔が台無――がっ!!」


 チャラ男が口説いている内に、狼が全速力で獲物を捕らえるように、夏織が男の首を右手だけで絞めていた。

 その速度に反応できず、鋭太郎は止められなかった。


「お前こそ、目ン玉付いてんのか? 鋭太郎さんの耳、ちゃんと付いてるわ……そんなのも見えない目なんて、必要ないわね……」


 夏織は目を大きく開け、怒りを男にぶつけていた。

 そして言ったとおりに、夏織は男の目を潰そうと左手の人差し指と中指を立て、男の眼球の前に構える。


「おいやめろ!!」


 鋭太郎は慌てて夏織の左手を降ろす。


「いッ!?」


 すると突然、鋭太郎の左脇腹に鋭い電流が流れた。

 もう一人のチャラ男が、隙を突いて鋭太郎にスタンガンを当てていたのだ。

 しかし――


「なんだ!? この時期に静電気!?」


 鋭太郎は、反射的に身を後ろに引いただけで、何ともなかった。

 その後、チャラ男の手にあるスタンガンを見て、攻撃されたことを知った。


「なんだよ……お前、バケモ――うぐッ!」


 スタンガンが効かなかった鋭太郎に、チャラ男は怖気づき体を震わせていると、密かに背後にいたポセイドンが当て身を喰らわせ、男を気絶させた。


「ナンパとは、愚かですね。それは置いといて、怪我はないですか?」

「あぁ、大丈夫だ…………」


(だがマズい、もう事が大きくなってる……!)


 辺りを見渡すと、スマホをこちらに向けてこの光景を録画している野次馬たちが、ここ一帯を囲んでいた。

 もう、後戻りはできない。SNSで拡散されれば、一般人にも目を付けられ、より刺客たちに居場所が特定されやすくなる。


(くそ! 恋侍を待ってたにしろ、もう少し目立たない所に行くべきだったか!)


 鋭太郎は、自分の詰めの甘さに嫌悪した。


「ッ…………!!」


 そして今も、夏織は男の首を絞めていた。目潰しは鋭太郎に止めたことで、それはやらないことにしたが、このまま男を絞殺しようとしていた。

 男は口から泡を吹き、全身の力が抜けて今にも息絶えそうだった。


(もう事は収まりがつかないが、夏織に一般人を殺させる訳には――!)


 鋭太郎が止めようと動いたが――




「その辺で許してあげるんだ、お嬢さん」




 それよりも早く、何者かが夏織に声をかけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ