第三話 未だ謎多き真相
大変遅くなり、すみませんでした!
今回から文の構成を変えてみました。
今回は会話が多いので、何とも言えませんが返って読みにくいとなったら元に戻しますので、よろしくお願いします!
「いっただきまーす!!」
水無月駅周辺――
秋葉と神奈の二人は、喫茶店で休憩を取っていた。
神奈は自分の顔よりも大きなバケツプリンを食べ始めた。秋葉は珈琲を頼んだものの、一口もつけず外を見ていた。
「アキレスも食べる?」
「いらねえよ」
元気がなさそうな秋葉に対して、神奈は元気づけようとプリンを匙ですくい、一口上げようとした。だが秋葉は神奈の顔を見ることなく遠慮した。
「そう? んじゃ遠慮なく!」
「それ全部一人で食うとか正気かよ……」
秋葉は困惑しつつもまだ外を眺めていた。
ある出来事を、頭の中で振り返っていたからだ――
※
――数日前
「どういうことだ!?」
明白な場所もわからぬ地下室にて。
記憶違いをしているという柚乃の発言に、秋葉は戸惑いを隠せなかった。
「今感じた違和感でそうであるのは理解できる。ならなぜユノはその影響を受けてないんだ!?」
秋葉が問うと、柚乃は率直に答える。
「私とアイテール、そして恋侍くん……タナトスは、記憶の改ざんが発生した際に神世界にいなかったからよ」
「!?」
「えっ!?」
秋葉だけでなく、後ろで聞いていた神奈も柚乃の衝撃発言に度肝を抜いた。
(やはり恋侍の正体はタナトスか。だがそれよりも――)
「神世界で何が起きたって言うんだ?」
「それは俺の方から説明しよう……」
アイテールが、身を震わせながら立ち上がる。
心配した柚乃が手を貸そうと動くが、彼は必要ないと手の平を彼女に突き出し静止させる。
「俺達は、秘密裏にある研究をしていた。神が人間世界への移住が可能かどうか」
「何のためにだ?」
「神世界の次元が歪みつつある。もうあの世界は長く持たないだろう。恐らくあと百年程で、無に帰るであろう」
「えっ、嘘!? 異常みたいなの全然起きてなかったじゃん!?」
神奈が驚愕すると、それには柚乃が答えた。
「私たちがエフェクトや【ケイパビリティー】を使って次元の崩壊を止めたり、誤魔化していたりしたからよ。けど、私たちが去った後、神世界の崩壊を止める者はいないでしょう」
(誤魔化したって――あぁでも実際必要な事だな。一般人がパニクられても困るし)
秋葉と神奈が納得すると、続けざまにアイテールが口を挟む。
「神世界の崩壊……実はアキレス、君と大きく関わっているんだ」
「ん? 俺?」
アイテールに名指しを受けた秋葉がキョトンとした顔をする。
「なんかやったっけ…………あっ」
秋葉は、自分が何をやらかしたのか悟った。
世界そのものが安定して存在し続けるには時空を安定させる必要がある。
神世界でその役割を果たしていたのは、ゼウスである。
しかし、そのゼウスを秋葉は殺してしまったのだ。
そのおかげで神世界の時空が歪み、天候が安定せず、昼夜の長さが不均等となった。それに伴い、世界そのものが荒れ始め、もってあと百年程である。
「あー……あの件につきましては、誠にすみませんでした!!」
秋葉が深く土下座して謝った。
アイテールの土下座に比べれば非常に雑なものではあるが、思いは伝わっていた。
「顔を上げてくれ。少なくとも俺は責めない。好きな神を奪おうとする奴に黙ってるなんて、男失格だ。もし彼が柚乃に手をつけていたのであれば、その時は俺が殺していたから」
アイテールは叱ることはなかった。秋葉の立場をわかった上で許したのだ。
(……こんなにも優しい男が、俺の妹を人質に取るわけねぇよな)
秋葉は姿勢を戻し、顔を上げた。
「話の続きを頼む」
「わかった」
アイテールは頷き、話を続ける。
「人間世界への移住ができるか、俺自ら試そうとした。すぐにでも入界しようとしたが、我々の力は人間を遥かに超えるもの。俺一人入っただけでも何千万人も突然死を迎えてしまう」
(そこら辺の理屈は知ってる。なんで知ってるのかはわからんがな)
「俺が望むのは平穏な暮らし。人間世界へ移住できたのなら、人間と同様の生活を送るのが理想だ。侵略したい訳ではないから、無駄な犠牲は出したくない。そこで、我ら神々の力を抑える薬を、ユノと調合した。その薬を、君たちも人間世界に行く時に飲まされただろ?」
「あー、確かに飲まされたっすけど、あれ人間化の薬じゃなかったんすか?」
神奈が首を傾げる。続けざまに秋葉が口を開く。
「俺も飲んだな。俺は『人間』に近い種族だからあんま意味ねぇんじゃないかと思ったら、単に力を抑えるだけだったって訳か」
「あぁ。記憶の改ざんを受けたから、誤認するのは仕方ないさ」
「あのー……ひとついいっすか?」
神奈が礼儀良く手を上げて質問する。
「話を聞いていると、記憶を改ざんした黒幕がいるっぽいけど、その黒幕はどうして僕たち神々の姿を人形じゃなく改ざんしたんすか? 僕の姿は醜くも人形ではあったけれど、僕の記憶のアイテール様は巨大な朱雀って感じだったっす」
神奈の話を聞いたアイテールがくすっと笑う。
「朱雀か……強そうだな。朱雀に準えたエフェクトなら使えるが」
アイテールの表情が変わり、真剣な眼差しで質問の答えを出す。
「人間と神を引き合わせないようにするためだ。人間と神は対等ではない。神は神聖な存在。人間はそれを称えるものでないといけない。そう思わせるには人間と姿形を違わせ、『自分は人間のような虫けらと馴れ合いはしない』と暗示をかけたのだろうな」
「まぁ自分がバケモンとわかってりゃ嫌われると思うもんな」
秋葉の解釈は違えど、アイテールの話に納得していた。
「ところで、アキレスは掟について文句があるようだね」
「ん、あぁそうだったが、今となっちゃ掟とか関係ねぇけど」
「掟の内容は覚えてるか?」
「あー、えっと…………」
秋葉が思い出そうとしている内に、神奈が代わりに言い始める。
「1.神は下等種族とも仲良くすべし
2.神は無闇に力を使用すべからず
3.神は世界の危機に対応すべし
4.神は自由に相手を選んで結婚してもよい
5.神は無断で別世界に行くべからず
6.人間世……あれ…………?」
神奈は途中で言葉を詰まらせてしまう。
「最後まで言ってごらん」
何か違和感を感じていることを察したアイテールであったが、あえて最後まで言わせようとする。
「は、はい!
6.人間世界には行くな
7.緊急で行く場合には人の姿であれ
8.神は人間に恋をするな
…………以上っす」
神奈は全て言い終えたが、表情が固まり、体を震え上がらせていた。
「ありがとう。流石だね。もしこの戦いが起きていなければ、今頃にでも俺の側近にしたかったさ」
「気づかなかった…………こんなわかりやすいこと、どうして……」
「仕方ないさ。改ざんが強力過ぎたって話だ」
アイテールは優しく慰めた。神奈の震えは止まらない。
「おい、どう考えてもおかしいよな? 特に最後の三つ、ぜってぇ別の誰かが作ったよな」
秋葉が違和感を指摘すると、アイテールが頷いた。
「そう、最後の三つを作ったのはエレボスだ」
「なっ!?」
アイテールの口から出た名を耳にした、秋葉の表情が険しくなる。
「やっぱり、あいつが黒幕か」
「そうだ。何が目的かわからないが、エレボスはカオスを捕らえようとしている。掟違反なら殺しても構わないのだがな。まあ俺も一度も違反者に処刑を下さなかったから、何ともいえないな」
「どうして敵になったんだ? 元は親友だったんだろ?」
秋葉が尋ねると、アイテールは言いにくそうに答える。
「――わからない」
「は…………?」
秋葉も、アイテールの発言の意味を理解できずにいた。
「きっかけとかないのか? 些細なことでも対立することはある。プリン横取りされて絶交した奴もいるしな」
「ちょっ、それ僕のことだよね! しかも小馬鹿にするような言い方して!!」
「………………」
正気を取り戻した神奈のツッコミが入るも、誰も反応しなかった。
アイテールが、エレボスについて詳しく話し始める。
「わからない……わからないんだ。あいつは他の奴よりも狂気染みてるが、情のある奴だって事くらいは俺がよくわかっている。対立することは多かったが、その度に仲直りしてきた。今回の人間世界への移住は反対しなかった。むしろ協力的で、忙しい時は息子を――ごはぁ!!」
突然、アイテールが吐血し体を崩す。
「あなた!!」
隣にいた柚乃が、倒れる彼の体を受け止め支える。
「すまないな…………久しぶりに、喋りすぎたかな」
アイテールは、柚乃の支えを借りながらベットに座る。
「頼みがある……エレボスを探してほしい」
「この世界にいるのか!?」
「あぁ…………それともう一つ……息子を――」
アイテールは気を失い、眠りにつくように横になった。
秋葉は、言葉が届かないとわかっていながらも答える。
「大丈夫だ。今は何とも言えんが、あいつは強くなる」
こちらの多忙で執筆に集中できず、文も話も滅茶苦茶になってるかもしれません・・・・・・すみません。
次回の更新が三日後に迫っていますが、学校のレポートと別作の更新が重なっていることから、次の更新は休載とさせていただきます。
休載しないといいながら、早くもこのようになってしまい本当にすみません。




