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混沌のディオス・ウォー  作者: 白沼 雄作
第四章 家族の温もりを知る
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序話 選ばれし『哀れな』少年


 最初からわかっていた


 自分が弱いことは


 逃げる勇気すらない者が


 他の誰かを守れる力を持っている訳ないんだ




「鋭太郎!! しっかりしろ!!」


 文月市と異なる街の風景――

 だが、そこも地獄絵図と化していた。

 そこら中から煙を上げ、数々の建物が瓦礫の山に。そして、一般市民の死体が街一面に散らばっていた。死体のほとんどに傷も異常も見当たらず、不自然な状態である。


 その街の中――鋭太郎だけは、全身に血を流していた。

 体に力が入らなくなり、視界がぼやけ、耳が遠くなっている彼は今、姿勢を低くしている恋侍の体に背を当て、体を横にしていた。


「くそっ!! <リウィンド・ヒール>が通じねえとかふざけるな! ユノの話と違ぇじゃねえかよ!!」

「鋭太郎!! 私を見て!!」


 また夏織が――皆が心配している


 何やってんだ俺……俺が守ってやる立場なのに――


「夏織、鋭太郎を見ててくれ」


 恋侍は鋭太郎の身を、隣にいる夏織にゆっくりと託した。


「秋葉の援護に向かう。流石のあいつでも、一人じゃ野郎に手こずるはずさ」

「……わかったわ」


 恋侍は風を切りその場を去った。


「…………」


 その姿を見た鋭太郎が無意識に立ち上がる。


「鋭太郎!? ダメ! 安静にして!!」


 夏織も慌てて立ち上がるが、鋭太郎が間もなくして前に倒れる。

 気が動転しているのか、また別の理由があるのか、鋭太郎だけにする敬語が抜けていた。


「鋭太郎――!!」


 夏織が鋭太郎の体を支えようとした瞬間――別の誰かがそれを為した。


「!?」


 謎の男の出現に、夏織は身を構える。


「よく、人間の状態でここまで頑張って来れたな」


 その銀髪の男は、鋭太郎の頭を優しく撫でた。


「その声…………あなたは……!?」


 男の正体を悟った夏織は構えを直した。

 夏織に反応した男は、彼女の方を向いて微笑んだ。


「久しぶり、カオス。君にも会いたかった」




 この日――やっと少年の物語が、動き出す。





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