第十三話 鋭侍
間を置きすぎたにも関わらず、更新が遅れてしまいすみません!
ここまで更新が遅れるとなると、更新日を月曜に変えた方がいいのかも知れませんね。もしかしたら、第四章から月曜更新に変わるかもしれません。
また、前話のあとがきにて、次で最終話と言いましたが、あまりにも長くなってしまいましたので、二つに分割しました。
でも実際、この十三話はいらなかったかも・・・・・・重要回ではあるけれども
「恋!! 恋!!」
――十五年前
建物が崩れ、砂埃が舞い、街一面が火の海と化していた中――
一人の青年が、誰かの名を叫びながら走り回っていた。
「どこだよ!! エロス!!」
青年が別の呼び名を出した。
その人のあだ名なのか、真名なのか。
とにかく青年は街を駆け回る。
無残な焼け死体。下半身を失い、両腕で這いつくばって助けを求める少女。木柱に腹を抜かれ絶命した母の腕を、ぎゅっと握りしめ泣きじゃくる幼い子供……
地獄絵図そのものの街を、青年は息を切らしながら駆け抜け――
「…………鋭侍?」
遂に、探していた少女――恋を路地裏で発見した。
正確には、路地裏であった場所だが。
「恋!!」
青年鋭侍は、滑り込むように彼女の元へ寄り、体を起こす。
「なんだよ、この傷!?」
恋の胴体には、手では塞ぎきれない程大きな穴がきれいに空いていた。
「早く治療を――!」
「ごめんね……もう、魔力が…………」
「は? 何言って――っ!?」
鋭侍は冷や汗をかき始める。自身の【ケイパビリティー】で確認したところ、恋の魂は今にも消えそうな懐中電灯のように、青白い光が弱々しく点滅していた。
「鋭侍は、治癒エフェクト使えないんだったよね――ごほっ!!」
「もうこれ以上喋るな! すぐに応急処置でも――」
血を吐く恋侍に、焦燥に駆られた鋭侍は彼女をそっと横にし、せめて体の傷だけでも防ごうと自分の服をちぎり始めるが――恋が彼の右腕を掴んでは、首を横に振る。
「もう……見たでしょ? 私の魂は…………」
「…………」
何をどうやっても、恋は助からない。
その現実を自身の目で確認し、悟っていた鋭侍の頭が真っ白になり、全身の力が抜けていく。
「私、馬鹿だよね…………」
「!?」
「ずっと気づけなかった……私の事を、こんなに大切に想ってくれているあなたの存在を……私が人間に興味なんて持たなければ――」
「間違ってなんかいない!!」
鋭侍は涙ぐみながら、恋の体を抱きしめる。
「恋は! エロスは間違ってない!! 神だろうと人間に恋したっていいんだよ! 好きになった人を追いかけていいんだよ! 自分に素直でいいんだよ!! エロスが幸せなら、俺は傍にいられなくても……それなのになんで、なんでだよ!!!」
鋭侍は大粒の涙を流しながら、恋に叫び伝えた。
「…………」
その声を聞いた恋は、鋭侍をギュッと抱き返す。
すると、恋の体が緑色に光り始める。
「!?」
鋭侍が驚く間もなく、その光は恋から鋭侍の体へと、吸い込まれていった。
「恋……お前今……!?」
察した鋭侍の声が震え始める。
「やっと、あなたの役に立てた気がする……」
恋の体から力が抜けていき――
「ありがとう……タナトス…………だい――す――――き――」
「おい、恋……!」
「――――――――」
「おい! 返事してくれよ!!」
「――――――――」
「エロス!!」
恋ことエロスは、完全に息を引き取っていた……
しかし、諦めきれなかった鋭侍は、彼女を再び地に寝かせ、彼女の体に触れて唱え始める。
「恋<ソウル・リバイブ>!」
<ソウル・リバイブ>
死して間もない者の魂を、強制的に体に引き戻すエフェクト。体に魂を戻した状態で治癒エフェクトをかけ、心拍、呼吸、血液の流れを戻すことで蘇生を成し遂げられる現代技術では不可能なことを可能とするエフェクト。
このエフェクトは、恋が最も得意とするエフェクトであった。
「――――――」
しかし、彼女の魂は戻ってこない。
「<ソウル・リバイブ>! <ソウル・リバイブ>!! <ソウル・リバイブ>!!!」
やけくそに唱え続けたが、恋の魂は戻ってこない。
その理由は、鋭侍が死にたくなるほど良く知っていた。
エフェクトが発動しないのではない。
戻ってくる魂がないのだ。
正確には――その魂は、自分の体に…………
「…………」
鋭侍は、恋を抱き上げ、何処か遠くへ去って行った。
これが、『鋭』侍の――恋物語の閉幕であった――
そして、『恋』侍の――復讐劇が開幕したのだ……
数年後になってから、神衛部隊によってエロスの死が判明した。
しかし、その遺体の場所は、未だ不明である。




