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混沌のディオス・ウォー  作者: 白沼 雄作
第三章 最狂の幼馴染み
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第十二話 無力

ここ一日遅れの更新が続き、本当にすみません!

スランプを言い訳にしたくないので、今後も頑張りたいと思います。

いや、頑張るしかないんだ・・・・・・

「ボレアス兄さん!?」


 崩壊した町の中で、エウロスと戦っていた鋭太郎とカオス

 鋭太郎はエウロスの風をごり押し、木刀で攻撃を狙ったが――


「…………」


 そこにボレアスが現れ、割り込んで鋭太郎の攻撃をレイピアで防ぐ。


「ちぃ!!」


 鋭太郎は宙に浮いたまま、レイピアを押す。その勢いで、後退を図るも、それに合わせてボレアスはレイピアで連続突きをする。


「うぉお!?」


 残像で無数の針が飛んでくる様に、鋭太郎は変な声を上げつつ素早く横に弾き続ける。その間に、鋭太郎の足が地に着く。それと同時にボレアスが足をすくう。


「しまっ――」


 レイビアを防ぐのに必死だった鋭太郎は、対処できずに横に倒れる。そこにボレアスが瞬時にレイピアで首を貫こうとする。


「混沌<リペル・バリア>」


 遠くから、夏織の声が聞こえた。すると、ボレアスのレイピアが首に当たる寸のところで反発され、その衝撃でボレアスの右腕が上に押されると同時に手からレイピアが離れる。

 その隙に鋭太郎は、倒れた状態のまま体を転がし、距離を置いたところで立ち上がる。


「悪いな」

「主人を助けるのは、当然のことですよ」


(しゅ、主人!? いや、今は気にしてる場合じゃないな)


 鋭太郎は夏織の言葉に動揺するが、気を取り直して木刀を構える。

 ボレアスはレイピアを拾う。そこにエウロスが歩み寄る。


「ボレアス兄さん……その――」

「気にするな。下がっていろ」

「…………はい」


 言われるまま、エウロスは後ろに下がる。

 ボレアスはレイピアを鋭太郎に向けて構える。


「驚いたな、『二号』に早くも【ケイパビリティー】が発現するとは……それも、デウス・エクス・マキナの上位互換――クロノスやウラノスがやられたのも当然だな」

「待て、俺が【ケイパビリティー】を得たのをどうやって調べた? その口ぶりじゃ今知ったような感じだが」

「――オレの【ケイパビリティー】は、自分に触れた『物』を吸収し、我が物とする。間接的にもできる。だが、オレのレイピアがお前の木刀に触れた際、オレは【ケイパビリティー】を発動できなかった」


(武器を奪えるってまたチートもんだな――っておい、自分の能力を敵にバラしていいのか? あー、でも夏織は武器使わないから問題ないのか)


「さて、こうなった以上は白兵戦に持ち込まざる終えないが……『二号』、運が悪いな」

「?」


「オレは、能力を使わなくとも強いぞ」


 ボレアスが言い終えると同時に、一瞬にして鋭太郎の前に移動し、レイピアで突く。


(速い!!)


 鋭太郎は間一髪右にかわす。


「混沌<フィジカル――」

「暖気<ゲイル・プッシュ>」


 夏織が<フィジカル・アップ>で鋭太郎の身体能力を上げようとしたが、それよりも早くエウロスがエフェクトを唱えた。夏織は強い風に押され、後ろに引きずられる。体勢はそれ程崩れなかったものの、詠唱が途切れてしまったためにエフェクトが発動しなかった。


「兄さんの邪魔はさせない!」

「殺る気? 相手をするわ」


 夏織とエウロスのエフェクト合戦が幕を開けた。夏織は攻撃の八割が拳であるが、エウロスは避けながら風のエフェクトや、【ケイパビリティー】を用いて迎撃を試みている。

 それを他所に、鋭太郎は木刀を片手で横に振る。ボレアスはそれをレイピアで防ぐと同時に、流れるように剣先を鋭太郎の右肩に突き刺す。

 だが、レイピアは鋭太郎の肌を貫けず、折れてしまう。


「!?」

「!?」


 予想外の事にボレアスは宙に舞いながら素早く後退する。鋭太郎も、何が起きたか理解できずにいた。


「馬鹿な……カオスの<フィジカル・アップ>は不発のはずだ。それ以前に、<フィジカル・アップ>で武器が折れるほどの硬化上昇はないはず……!」


(確かにレイピアは俺の体に当たった。その感触も残ってる。俺は何もしてないのに、なぜ――)


 この時、鋭太郎は思い出した。

 訳のわからない理由でヘルメスと戦った時の出来事――

 自分の右足に刺さるはずだったナイフが、刺せずに折れたことを――


(神の力で耐性が付いたって事か……ますます人間離れしてきてるな)


「人間とは言え、神の力を得た『二号』。甘く見るべきではなかったな」


 そう言って、ボレアスは、折れたレイピアを地面に捨てた後、右腕をゆっくりと左から右に、水平に移動させる。すると、手品のように徐々に新たなレイピアが姿を見せ、柄頭が見えたところで握った。


「久しぶりに、こいつを使うか」


 ボレアスがレイピアを構えたところで、先に仕掛けたのは鋭太郎。素早くボレアスの元へ走り、敢えて刀身の届かない所で右足を強く踏み込む。それにより、砂が舞い、ボレアスの視界を潰す。そこに鋭太郎は木刀を、ボレアスの頭に叩き込もうとする。


「――残念だ」


 ボレアスは目を瞑ったまま、感覚だけを頼りにレイピアで鋭太郎の左胸を貫いた。不意を突かれたような、目に捕らえられない速度で適確に――今度は確実に、鋭太郎の体を貫いていた。


「ごばッ!」


 その痛みで、鋭太郎の体が硬直。木刀は当たる寸前で止まっていた。

 ボレアスがレイピアを抜くと同時に、鋭太郎の左胸から血が溢れ、血反吐を吐いて膝を着いた。


「木刀を使うから、武士道とやらがあるのかと思ったが、目潰しなどと卑劣な手を使うとは……生き残るために手段を選ばないのはいいが、失望したぞ」


 ボレアスは服の袖で目を擦って砂を落とし、目を開く。

 冷たく鋭い目で鋭太郎を睨み、トドメにレイピアで首を貫こうとする。


「!? 鋭太郎さん!!」


 他所でエウロスと戦っていた夏織が、事態に気づいて駆けつけようとする。


「雨<ブラスト――」

「混沌<バースト>!!」


 エウロスは<ブラスト・ボム>で夏織を食い止めようとするが、それよりも早く夏織は<エクスプロージョン>を略唱し、右手から小さな赤い球をエウロスの足下に投げる。すると、ゴルフボールほどの球が放つとは思えない、一軒家を軽く吹き飛ばすほどの大爆発が起きる。エウロスは後ろに避けたものの、爆風で体が運ばれ、頭を建物の壁に打ち付けられ、気絶する。


「……!?」


 その爆風はボレアスにも影響があり、トドメを刺す手が止まった。

 ボレアスは爆風がした左を確認して間もなく、夏織の鉄拳を顔面に受け、吹き飛ばされていく。


「鋭太郎さん!!」


 夏織はしゃがみ、焦った顔で鋭太郎の顔を覗く。


「夏織……ごほぉ!! やっぱり俺弱いわ……置いて逃げ――ごぼッ!!」


 鋭太郎は血を吐きながらも、夏織にそう告げた。


(情けねえ……たった一刺しの痛みで動けないなんて…………!)


「そんなことできません! 安心してください、あなたは私が守ります。この世界に来る前から、そう決めてましたから」


 夏織は立ち上がり、ボレアスが吹き飛んだ方を向く。

 ボレアスは鼻血を出しながらも、こちらに向かって歩いていた。


「あの人間には何度も驚かされる。この武器には特製の毒が仕込まれてな、神であっても解毒しないと十秒は持たないぞ」

「ッ!?」


 夏織の焦燥が増す。


(私は魔力導管の関係上、治癒系のエフェクトが使えない。けど、あいつなら!!)


 夏織は助けに来る『あいつ』を信じ、ボレアスに攻撃を仕掛ける。

 右フックを敢えてボレアスの手前で空振らせ、レイピアの注意を右に向けさせると、夏織は回し蹴りを左側頭部にお見舞いする。


「うぐっ!!」

「オラララララッ!!!」


 この攻撃にボレアスがひるみ、体勢が崩れたところを夏織は彼の腹に、両拳の連打を入れた。最後の一発をアッパーにし、ボレアスを空高く打ち上げた。


「うぼぉあ!!」


 ボレアスは血を口からも出しながら、無様に宙を舞う。


「混沌<パニッシュメント・ネメシス>」


 夏織がそのエフェクトを唱えた。以前から発動しなくなったため、ダメ元ではあった。しかし、今度ばかりは夏織の想いが届き、右腕が金色に光り出す。赤黒でないのは、鋭太郎と性質が異なるからである。

 夏織はその一発に全身全霊を込め、落ちてくるボレアスに待ち構えていた。





 だが――現実は、簡単に理想を叶えてくれるほど、甘くはなかった。





「ぶふっ…………!」


 突然、夏織が大量の血を吐いた。その後、目、鼻、耳からも自然と血が流れてくる。全身に力が入らなくなり、右腕の光が消える。


「…………」


 ビクともしなくなった夏織。そこに追い打ちをかけるように、ボレアスが落下の勢いでレイピアを夏織の頭に刺す。


「夏織……!!」


 鋭太郎は駆けつけようにも体が痺れて動けなかった。よく見ると腕の一部が黒く染まっていた。本人からでは確認できない顔の半分も、既に黒く染まっていた。


「はぁ……はぁ……演技をするのも中々大変だ」


 ボレアスは息を切らしながらも、余裕の言葉を口にしてレイピアを抜いた。


「――――――――」


 数秒にして夏織の全身が黒く染まり、静かに倒れた。


「夏織!! ごはッ!! 夏織ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


 鋭太郎は必死に叫ぶも、夏織は動かなかった。


「カオスの拳は、一撃で肉体を砕く程のものと聞いたが、それが嘘のように弱かった……ん?」


 不思議そうな顔で、ボレアスは姿勢を低くして夏織の首を触る。


「……ハハハ」


 ボレアスが何故か笑いを堪える。が、抑えきれなかった。


「アハハハハハハハハハ!! 実に滑稽だ!!」


 不気味な笑いを浮かべたボレアス。鋭太郎はそれを見て悟った。


(さっきの行動は頸動脈を……そして、あの心の底から喜んでいるあの笑い方……嘘だろ……!!)



「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」



 鋭太郎の叫びが、虚しく街に響き渡る。

 ボレアスの嘲笑が、より鋭太郎に絶望を与える。





「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」







「…………………………は?」


 お分かりいただけただろうか?


 ボレアスの隣に突然現れた青年が、同じ笑いを浮かべていた。どちらかと爆笑ではあるが。

「アハハハハハ!! いやー一度は見てみたかったぜ、こいつの死にザマ!」

「は? は? お前誰――」


 ボレアスが理解できずに混乱しているところ、青年がさりげなく蹴り飛ばす。

 夏織がボレアスを打ち上げたのと比較にならない、音速で彼の体が遠く彼方へ吹き飛んでいった。その様子を青年は額に手を当て、じっくりと見ていた。


「おー! よく飛ぶなーってこんなことしてる場合じゃなかった!」


 青年は慌てて両手を夏織の体に乗せ、エフェクトを唱える。



「恋<ソウル・リバイブ>」



 すると、夏織の体が光り始め、今まで肉眼で捕らえられなかった魂が宙で青白く光り、体に吸収されていった。


「死<デトックス>」


 青年が別のエフェクトを唱えると、夏織の体の色が元に戻る。


「あとは……心臓マッサージに人工呼吸! ……したら後ほど殺されるから――恋<リウィンド・イグジステンス>」


 またも青年がエフェクトを唱えると、夏織の体が緑色に光る。


「おっけおっけ。いやー間に合って良かった」


 青年は夏織を横抱きにし――


「おっも!」


 ……無駄口を叩きながら鋭太郎の元へ。


「なんで…………!」


 鋭太郎が目を見開き、体を震わせ青年を凝視していた。


「ウイッス! 会うのは久しぶりか?」

「なんでだよ……!!」

「その顔どうした? 右半分黒い――って、お前もやられたのか。よく俺のことを頑丈頑丈言ってるけど。お前さんも十分頑丈やで」





「なんで恋侍がここにいるんだよ!!!」





「…………」


 親友の言葉に、青年――恋侍がやっと黙る。


「それに、お前今エフェクトを!?」

「……!?」


 鋭太郎の問いかけを他所に、恋侍は目を疑った。

 一部が黒くなっていた鋭太郎の肌が、徐々に元通りになっていったのだ。


(さすが、ユノとアイテールの息子。お前なら、きっとこの戦いを終わらせることができるさ)


「鋭太郎、持てるか?」


 恋侍は、横抱きにしていた夏織を渡す。鋭太郎は慎重に夏織を受け取る。その時に、自分の体から毒が消えていることに気がつく。


「あれ…………?」

「鋭太郎」


 自身の体を見渡す鋭太郎の名を、恋侍は優しく呼んだ。それに反応し、鋭太郎が恋侍の顔を見る。


「これから俺がやることは、絶対に真似するなよ。敵に救いの手を差し伸べ、味方を増やしていくお前のやり方。俺は好きだぜ。けど、俺はそれを真似できない。俺は……」


 恋侍の言葉が詰まり、沈黙が生まれて間もなくして、恋侍の背後に何かが落ちてきた。


「鋭太郎、下がってな」

「お、おう……」


 鋭太郎は夏織を横抱きにしたまま、後ろに下がった。


「……信じられん」


 落下してきたのはボレアス。

 ボレアスは恋侍を睨み付け、彼の真名を口にする。

 それには、鋭太郎も驚く――




「生きていたとはな……………………タナトス!!!」





遂に、恋侍の正体が明らかとなりました!

・・・・・・恐らく、読者の八割は知ってたと思います、はい。結構名前出してましたので。

なお、次回で第三章最終話となります

が、前回お伝えした通りテストなどの都合により、来週は休載とさせていただきます。

肝心の山場が先送りになってしまい、本当にすみません!


※※追記※※

ご存じの方も多いと思いますが、こちらの都合ミスで、更新が7/9に先延ばしになってしまいました。

本当にすみません!

基本Twitterの方で活動報告を行っているので、そちらの方で情報等を確認してもらえると幸いです。


https://twitter.com/yuitikuroda


また、今後はなろう内での活動報告も行う予定です。

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