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混沌のディオス・ウォー  作者: 白沼 雄作
第三章 最狂の幼馴染み
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第二話 恋する少女を助ける者 その1

次話への区切りを良くするために今回はとても短めになっております。遅刻ながらすみません。

また、一話の修正をしましたが、見やすくした程度で特に話の変化はありません(後にまた修正が入るかもしれませんが)

 鋭太郎と夏織が初めて顔を合わせる朝――


「よう! 鋭太郎!」


 恋侍は予定通り、登校中の鋭太郎を見つけ話しかける。


「なんだ、お前か」

「なんだよその鬱陶しいですみたいな反応!」

「よくわかってるじゃないか。さすが幼なじみ」

「マジかよ鋭太郎最低だな」


 いつも通りの会話を進めながら、恋侍は気づかれぬよう後ろを見る。


「…………」


 夏織が鋭太郎達の後ろを少し距離を置いて歩いていた。緊張で表情が硬く、話しかけられずにいる。


「そんなことより俺の彼女がさー」

「はいはいそうですか」



「ちょ、ちゃんと聞いてくれよ! 実は先週彼女と喧嘩になってさー、カッとなった彼女が俺の左腕をへし折ってきたんだよ。見た目がか弱い乙女のようだったから完全に油断して左腕を関節の逆方向に百八十度曲げられちまった。『次はもぎ取ってやるから覚悟しとけ』とか言ってたなー……冗談抜きで怖かったですはい。ところで鋭太郎は彼女がこんな怪力野郎でも受け入れてられる? 俺は防御力高いから別に――っておい、もしもーし? さっきから相づちが適当すぎて話聞いてないのバレバレだぞー! おーい! 無視すんな!!」



 恋侍がどうでもいい話を鋭太郎にするが、彼は耳を塞ぐようにあーあーと適当に相づちを打っていた。

 夏織がまだ話しかけて来ないと思い、恋侍は後ろを確認する。

 か弱い乙女(?)の面影はなく、今にも殴りかかりそうな鋭い目で恋侍を睨み付けていた。


 ――後で殺してやるから覚えておけ


 そう言ってるように見えた。


(これ以上話されたくなかった話しかけるがいいさ)


 恋侍はそう念じ返した。

 それを察したのか、夏織はため息を吐いた後、大きく深呼吸をして鋭太郎に話しかける心の準備をする。

 恋侍もそれに合わせ、話を続ける。


「それでさー」

「あの…………」


 夏織の声を聞いて二人は振り向く。グルであることを察されないためか恋侍はわざとらしく驚いていた。

 夏織は緊張した顔で鋭太郎だけを見ていた。


「?」

「これ………………」


 夏織は手を振るわせながら、鋭太郎の生徒手帳を本人に返す。


「俺が昨日なくしたやつだ」


 鋭太郎が手帳を受け取る。


「ありが――」


 夏織は成し遂げた恥ずかしさと緊張のあまりか、その場を小走りで去る。


「………………」

「――お前、運がいいな」

「え? あぁ、落とした生徒手帳が見つかって――」

「そっちじゃない! あの人と話せたことだぞ!」

「なんかすごい人なのか?」

「は?」


 恋侍は素で驚く。


(ありゃ、夏織は学校じゃ超有名人だから流石の鋭太郎でも知ってると思ったんだが……)


「お前彼女を知らないでここに入ったのか!? 彼女は薊夏織先輩だぞ! 高等部二年の学園トップの美女で、他校でも噂が流れるほどの有名人だぞ! それに、俺たちと中学校同じだったぞ!」


(あっ、やべ! 中学同じってそれ神世界の話で鋭太郎関係ねぇ! 気が動転しすぎて神世界の時の感覚で話しちまったじゃねえか! 夏織は今月転校してきたばかりのはずだ!)


「まじか! 先輩だったのか! 立場わきまえなかったから機嫌損ねて行っちゃったのかー…………」

「いや驚くとこそこじゃねえよ!」


 二人はその後も会話を続けながら学校の中へ入っていく。


(何がともあれ、嘘がバレずに済んでよかった。まあ鋭太郎は過去を振り返らない――いや、振り返りたくない奴だからな……)



   ※



 秋葉が柚乃の元へ向かっている頃――


「はぁ!!」


 人目につかない町外れの山奥で、荘夜は一人で特訓をしていた。

 自分で用意した数々の丸太を標的に、刀で素早く斬っていく。


「…………ダメだ、速さが足りない」



「それで十分じゃね?」



「っ!?」


 何者かの声に荘夜は辺りを見渡す。

 後方に、木によりかかってこちらを見ている恋侍の姿があった。


「……お前か」

「なんじゃいその反応――まあともあれ、人知れず特訓だなんて真面目だな」

「こうでもしないと、やってけないからな」


 荘夜は恋侍のことを気にせずに特訓を再開しようとする。



「『自分が足手まといになってる』と思ったからか?」



 恋侍の言葉に、荘夜は動きを止める。


「…………」

「お前は元々暗殺者だし、真っ向勝負が苦手であることも皆知ってるから気に――」


 恋侍は励ますが、荘夜は突然に刀で恋侍の首を斬り飛ばそうとした。

 恋侍は表情変えず冷静に片手で白刃取りする。


「ん、気に障っちまったのなら謝るが――」

「やはり、ダメか……」


 荘夜は残念そうに刀を引き下ろす。


「この世界に来てから、俺の攻撃を当てられた記憶がない。力を得たばかりの鋭太郎にすらかわされた」

「…………」


 悲痛の声を聞いた恋侍は考える。


「んー……そうだなぁ……」


 何か思いついた恋侍は、近くに落ちていた木の枝を拾い、素振りしてみせる。


「これなら問題なさそうだな」

「?」

「荘夜、お前は多分実戦経験が多くてもそこまで特訓はしなかっただろ? 『暗殺の神童』って呼ばれてた時期もあったしな」

「……その通りだが」


「今から俺が相手になってやる。殺すつもりでかかってこい。ほぼ不死身だけど俺」







「はぁ…………くそっ!!」


 数時間後――

 荘夜は大量の汗を掻きながら倒れていた。その体は傷だらけでボロボロだったが、重傷という訳でもなかった。


「歯が立たなかった……!」

「初回にしては頑張った方じゃね?」

「まだだ! 僕はまだ――」

「よせよ、体を壊すだけだぜ」


 無理に立ち上がろうとする荘夜を恋侍は止める。


「んな一日頑張った程度で変わるほど、人生甘いもんじゃねえぜ。かと言って無茶はダメだ。スランプ時の特訓は闇落ちに繋がりやすいから――って、元から闇そのものだったな。とりま、特訓したいときはいつでも来いよ。ここら辺に来れば自動転送の如くやって来てやるから」


 そう言うと、恋侍は木の枝を投げ飛ばし、立ち去ろうとする。


「待て」

「?」


 何かを聞き出したくなった荘夜は恋侍を呼び止める。


「どした?」

「……お前、いつまで――」

「それ以上言わなくていい。言いたいことはよーくわかった」


 荘夜の問いを最後まで聞くことなく恋侍は聞きたいことを理解できた。


「ったく、どいつもこいつも鋭太郎に正体バラせって……何十年も神どもから雲隠れしている俺の身にもなれって。でもなぁ…………その内明かすかもな」

「いつ頃になるんだ? 四星神が来てからではフラグだぞ」

「なんか似たようなことを柚乃先生から言われた気がする。まあそうだな――」


 恋侍は少し考え、答える。





「鋭太郎の初体験を終えた頃辺りか?」





「…………」

「悪い、今のナシ。もうちょっと考えさせてくれ」


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