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混沌のディオス・ウォー  作者: 白沼 雄作
第三章 最狂の幼馴染み
28/52

第一話 知られざる裏側


 


 鋭太郎が、夏織に会う前日――



「気分悪いんで帰ります」


 授業中、鋭太郎は適当な理由をつけて早退する。


「待って、鋭太郎くん!」


 柚乃は止めるも、鋭太郎は無視して教室を後にした。


「はぁ……これで五回目ね」


 柚乃はため息を吐くと、教室がざわつく。


「鋭太郎ってさー、やばくない?」「入って早々早退するくらいなら学校来なければいいのに」「むしろよく学校は退学にしないもんだ」


「……………………」


 恋侍はその様子を黙って見ていると、近くのクラスメイトが話しかけてくる。


「なぁ」

「ん?」

「お前、確かあいつの幼馴染みだよな? 昔からあんなんだったのか?」

「あー……いや、あそこまでグレてなかったぜ。無愛想だったがあんな馬鹿げたことする奴じゃ――」


 突然、教室中に轟音が響く。


「ごちゃごちゃうるせえな……メンドクセーからとっとと授業を再開しろ」


 秋葉が机を蹴り壊した音だった。

 彼の行動にクラス全体が凍り付く。


「あら、意外と真面目なのね」


 その中柚乃だけは平常を保っていた。


「勘違いすんじゃねえ。学校サボってるガイ――神奈のためにノート取ってやってるだけだ」

「それを真面目と言うの――」


 授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。


「チャイム鳴りましたし、各自板書写し終えたら休み時間にしていいわ」


 そう言うと柚乃は教室を出る。

 間もなくして秋葉が教室を抜けると、再びクラスがざわつく。


「あいつって不良ぶってるけど真面目だよな」「話しかけてみれば意外と打ち解けられるタイプ? 怖いけど」「鋭太郎より百倍マシじゃね?」「てかこのクラス問題児多すぎ!」






 昼休み――

 恋侍は人目を盗み屋上に足を運ぶ。


「おまたせ!」


 勢いよく扉を蹴り開ける恋侍。その先に夏織の姿があった。

 この当時はまだ髪を縛っていた。


「元気そうね」

「おう! 元気と頑丈さだけがお前の取り柄だって鋭太郎が言ってたし」

「……それはいいけど、どうして私の隣に来るの?」

「いやほら、一応恋人設定だし、俺も協力してるわけだから見返りを――んぎゃはっ!!」


 恋侍は夏織の肩に体を寄せると、夏織は彼の左腕をもぎ取り、投げ捨てた。


「いってぇー!! てめぇ俺が超再生能力なかったらタダじゃ済まさねえぞ!」


 恋侍がふざけた態度ながら怒っていると、左腕が生えて元の状態に戻った。


「あるからやってるのよ。ストレス発散に」

「神の屑が――あー、そういや今日も帰ったぞ鋭太郎」

「そう…………」


 夏織は残念そうに瞳を閉じる。


「普通に押し倒した方が早くない?」

「その勇気があったらとっくにしてるわよ」

「あいつ俺と同じ童貞だから安心しろって!」

「…………」

「んーそうだな……まあ話す機会さえ作ればなんとかなるか」


 そう言って恋侍は制服のポケットから生徒手帳を取り出す。


 自身のではなく、鋭太郎のものだった。


「これは…………」

「あぁ、あいつの。隙を狙って盗んだ。明日の朝、『落ちてたのを拾った』ていう設定で渡せばいい」


 恋侍は鋭太郎の生徒手帳を夏織に渡す。

 夏織は受け取ると、黙って手帳を見ていた。


「…………」

「まあ話さなくてもいいさ。黙って渡すのも有りかもよ? 返って『自分に好意があるのかも』って思うかもしれないぜ。それに、俺は朝一緒に学校行くこと多いし、明日は必ず合流するからなんかあったらフォローするぜ」

「……わかったわ」

「よーし! んじゃ明日、忘れんなよ! 下手したら学校来なくなる可能性もあるわけだし」


 そう言って恋侍は屋上を後にしようとする。


「……ねえ」

「ん?」


 夏織は恋侍を呼び止める。




「ずっと気になってたんだけど……あなた、これからどうするの?」




「…………」

「私が鋭太郎さんと無事付き合えたのなら、奴らの攻撃が鋭太郎さんにも向くはずよ。その時はあなたも巻き込まれるはず。そうなればあなたの正体が――」

「別にいいさ」


 恋侍は振り向き、改まって言う。



「あいつのためなら、俺はまた狂ってやるさ」



   ※



 前代未聞の暴風雨から約一週間が経った。

「…………」

 神奈は部屋でゴロゴロしながら漫画を読んでいたものの、あの時のことが頭から離れずにいた――




(先生、今…………!)

(……何のことかしら?)

(明らかに言いましたよね! 今、息子って!)

(…………)

(どうなんですか!? 先生!!)



(――えぇ、そうよ。山茶花鋭太郎は……私の息子です)



(!?)

(『一号』が確認された頃に、産んだのよ)

(てことは、あいつは――)

(神じゃないわ。あの子は、私と夫が人間に化けていた時に人間世界で産んだ子なの)

(えっ、でも人間世界へ行くことは神々の掟で許されてないんじゃ!?)

(あら、そんな掟――アイテールは作ってないわよ)

(アイテール様は? それじゃあ誰が――)

(これ以上は今話せないわ。もし、どうしても気になるようだったら、後日アキレスと一緒に私の元へ来なさい)





「おーい、聞こえてるか?」

「!?」


 秋葉の呼びかけに神奈は我に返る。


「ったく、学校ないからってダラダラしすぎるなよ」

「……ごめん」

「ん、言い返さないのか」

「別に…………」

「なんかあったろ? ここ最近その調子だぞ。お前がそんなんだと、俺の調子が狂っちまう」

「……実は――」






「ガイアの話を受けた上で来てやったぞ」


 神奈の話を受けた秋葉は、彼女と柚乃がいる学校に足を運んだ。

 学校は一週間経った今でもウラノス戦の爪痕が残っており、校舎の半分も治っていなかった。

 それは学校だけに限らず、街全体が暴風雨による損害の復興作業に追われていた。


「あら、別に無理して来る必要はなかったのよ」

「あんなん聞かされたら誰でも気になって眠れねえよ。よくガイアは耐えたもんだ。耐える要素もないのによ」

「先生のことも考えたら無理な詮索はしちゃいけないと思ったからさ」

「気遣いありがとう。でも、貴方達には隠す必要はないと思ったから。特に、アイテールに忠実だった神奈さんと、復讐を誓った秋葉くんにはね」

「!?」

「!?」

「話をするから、場所を変えるわよ。二人とも、もうちょっとだけ私に近寄れる?」


 秋葉と神奈は言われるままに柚乃の近くまで歩み寄る。

 すると見える景色が一変――どこかの薄暗い施設内に変わった。


「テレポート!? 詠唱なしで!?」


 神奈は驚きながら辺りを見渡していた。


「……ここは?」

「ごめんなさい。ここの場所は誰にも知られたくないの」


 そう言うと柚乃は、懐中電灯を取り出し、その光を頼りに先に進み始める。

 その後を二人は追う。


「鋭太郎がユノの息子か……それならあの異常なまでの強さは理解できるな。ただ、どうしてあいつ自身から力が覚醒することはなかったのか――が、疑問だな」

「人に化けて出産したから、人間として生まれてきたの。でも、莫大な魔力を蓄えてあったから、自身の力に耐えきれず幼くして命を落とす危険があったの。だから私は鋭太郎の魔力を全て吸収したの。保持したままだと今度は私の命が危なくなるから、別のものに移して保管してあるわ。もし、必要になった時にいつでも返せるように」


 柚乃が話ながら歩くと、一つの扉が目前に迫る。

 柚乃はその扉を開け、中に入る。秋葉達も続けて入った。


「あなた、二人が来たわよ」


 柚乃が懐中電灯をしまい、ベッド近くのロウソクに火をつける。

 ベッドで寝ていた男が柚乃の声に目を覚まし、体を起こす。


「来たのか……あの二人がアキレスとガイアだね」


 銀髪で優しい顔をした男――アイテールが二人に微笑みかける。


「……どちら様ですか?」


 神奈が柚乃に聞いた。


「驚かないで聞いて欲しいの…………彼は、アイテール」

「…………………………え?」

「彼こそが、神世界のあるじ――アイテールよ」

「えええええええええええええええええ!?」


 驚くなと言われたにも関わらず、神奈は大声で驚きを表した。


「なんでこんなところに!?」

「事情は俺の方から――」

「アイ、テール……!!」


 彼の名を聞いた秋葉は顔をしかめ、拳を強く握りしめる。




「アイテール!!!」




 怒りを抑えられなくなった秋葉は、アイテールに襲いかかる――

 


投稿が遅れてしまい、すみませんでした!

忙しく書く時間が余りありませんでしたが、これ以上待たせるのは良くないと思い投稿しました。

もしかしたら後ほど大きく修正されるかも知れません。

勝手ばかりで本当にすみません!

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