序話 菊恋侍という男
とても間が空いたのにも関わらずプロローグだけの更新ですみません!
多忙が続きますが、次の更新は通常通り日曜日(2/26)にします!
菊 恋侍。高校一年、十五歳。
鋭太郎の幼馴染みで、小学校からの長い付き合い。
心を開かなかった幼年期の頃から積極的に話し、自堕落的になった今も彼のフォローをしている。
そう、恋侍は鋭太郎にとって唯一『人間』の理解者であった。
人間…………最近になって、それが偽りであることが徐々に明らかとなる。
・トラックにひかれても無傷(鋭太郎曰く)
・夏織とタメ口で会話
・ウラノスを一撃で沈めた。
・神奈や秋葉を知っていた。
秋葉は恋侍を神だと見破ったが、鋭太郎はそれを知らないままである……
「…………」
朝方――
鋭太郎が住んでいたマンションの向かい側にあるもう一つのマンションの屋上から、恋侍は燃え尽きた鋭太郎の部屋を見ていた。
「――あなたがやったの?」
恋侍の背後から、突然柚乃が姿を現した。
「ん、何の話?」
「怒ってないわよ。部屋の爆破によって、鋭太郎くんは夏織さんと一つ屋根の下で暮らせるいい機会になったもの」
「そのためにやったからなー」
恋侍は焼きちくわを食べながら言う。
「あいつ元気?」
「ボチボチね。動けるようになるまでもう少しかかりそうだわ」
「なるほ。復活したらどうするんだ?」
「そうね……おそらく、戦争を仕掛けるわ。嫌でも……」
「あっちはサイコパス多いからなぁ……だりぃ」
「その時は、あなたも参加してね」
「もち」
恋侍は焼きちくわを食べ終えると、後ろを向き柚乃と顔を合わせる。
「あっ、そうそう。この傘あなたのよね?」
柚乃は右手に持っていた傘を恋侍に渡す。
その傘は、恋侍が秋葉に貸した(あげた)傘だった。
「んげ、あの野郎、次会ったら腹パン確定だな!」
恋侍は傘の状態を確認しながら言った。
「…………」
「ん、どしたん?」
柚乃が何か言いたげなことを恋侍は察した。
「……辛くないの?」
「?」
「――友達を騙すのは、辛くない?」
「あー…………」
柚乃の言葉を受けて、恋侍は傘を回し上を向きながら考える。
「辛くない――って言ったら嘘になるけど」
「そろそろ『四星神』が動く頃よ。打ち明けるなら今のうちがいいわ」
「わかってるって」
恋侍は後ろを向き、傘の先を地につける。
「でも今はまだ…………あいつの前では『人間』でいたい」




