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混沌のディオス・ウォー  作者: 白沼 雄作
第二章 愚かな英雄
26/52

終話 日常



『次のニュースです。先日、文月学園高等部校舎から、隣の神無月市海岸にまで渡る、大きな地割れが発生しました。この現象は――』


「起きてたんですか?」


 翌朝の隠れ家――時刻は七時過ぎ

 誰よりも早く起きた鋭太郎がニュースを見ていると、次に起きてきた荘夜がリビングに入り鋭太郎に話をかけた。


「まあな。それにしても、これ秋葉の奴がやったんだよな?」

「そうだと思いますが……アキレスとて普通のやり方ではここまで被害は及ばないはずです。きっとガイア達と協力して戦った結果なのでしょう」

「それにしても派手にやったな」

「相手は神衛部隊隊長です。こうでもしないと死んでくれませんから。クロノスの時は、正直運がよかっただけです」

「だな……」


 鋭太郎が深刻な表情で時計を見る。


「……なあ、まだ時間になってないからだよな、夏織が起きないのは」

「そうかと……」

(夏織は昨日倒れた昼前からずっと寝たきりだ。先生曰く、俺に力を与えすぎた代償だとか……)

「……なんで」

「?」

「なんで夏織は、俺のことを好きになっちまったんだ?」

「いきなり何を――」

「俺よりも過酷な人生を送ってきた奴なんて大勢いるさ! たかが虐待されて、姉を見ず知らずの誰かに殺されただけだ!」

「十分に悲惨な人生です! そう自分を低評価しないでください!」

「俺がしなくとも、周りは当然のように低く見るさ! どんなに絶望しても前だけを見て生きていくのが当たり前の世の中だ! 俺はどうだ? 死ぬ勇気すらない臆病な俺は、周りに迷惑をかけながら生きている! 俺がいなかったら苦労しない人だっているはずだ!」

「今のお義兄さんは変わりつつある。僕たち――いや、姉さんと出会ったことで、心の拠り所ができたお義兄さんは生きる意味を――」




「その生きる意味を!! 俺以外の奴に与えればよかったんだ!!」




 鋭太郎は感情が高ぶり、自然と涙を流していた。


「…………」

「俺は無駄にしたんだよ…………与えられた意味を! 自分で投げ捨てたんだ! 今でも後悔している……俺があの時真面目に授業を受けてれば! 興味本位で行動しなければ! 俺に力があれば!! ……もう、今後の展開が読めてるんだ。夏織は完全に力をなくす。俺のせいで――」

 


 パンッ!!



「…………!」


 荘夜が、鋭太郎をぶった。


「……落ち着け。自分を追い込みすぎだ。人間の若者にはそういうのが多いのは知ってるが、裏を返せばそれは『自分を慰めてほしい』と哀れな信号を出しているだけに過ぎない」


 荘夜が敬語を使わずに話し始める。


「お義兄さん――いや、鋭太郎。男ならどうすべきか、わかるよな?」

「…………」

「わかってるはずだ。まさか、『俺じゃ夏織を守れない』などと思ってないだろうな?」

「……だってそうだろ」

「なら簡単な話だ。もっともっと強くなればいい。死ぬ気で特訓し、無駄にしてきた人生を、今補えばいい、ただそれだけの話だ」

「…………」

「偉そうなこと言って悪かった。だがこれだけは言っておく……自分を誇れ――お前は神を惚れさせた男だ」

 荘夜が言い終えると、朝食の支度を始めた。

「……………………」




(自分を誇れ――か…………)




   ※



「…・・・・・・・・・」


 秋葉がマンションの一室で目を覚ました。

 ガイアを追跡して、この場所を突き止める脅威だったウラノスがいなくなったため、当分はここを隠れ家にすることにしたのだった。

 なお、ウラノスの側近であったポセイドンは、妹を連れて同じマンションに住むようにした。予定では隣の部屋らしい。


「…………んげっ!!」


 秋葉は目覚まし時計で時刻を確認すると、既に九時を過ぎていた。

 いつも上の段のベットで寝ているガイアの姿がなかった。


「あいつ…………腹空かして――んぅ!?」


 秋葉がトボトボと台所に向かおうとしたが、既に朝食がテーブルに並べられており、ガイアは秋葉が起きてくるまで座って待っていた。


「どうしたお前、やっぱ<トラスト・コアレス>に問題が――」

「はぁ……僕だって女なんだよ。料理くらい作ってやれるさ」

「おう、それはありがたいが…………これは何?」


 秋葉は朝食に指差して言った。だが、その朝食は何故か七色に発光しており、どうも食べ物とは思えなかった。


「何って……どう見たってスクランブルエッグ」

「スクランブルエッグだぁ!? これが!? ふざけんな! 何混ぜたらこうなんだよ!!」

「えっと……なんだっけ?」

「…………」

「でもほら、紫とかじゃないし! 食べ物としては変かもしれないけど、いい色してるから大丈夫!」

「断る」

「えぇー、お願い! 食べたらなんか奢るから」

「……まあ食うか。珍しくお前が作ったんだしな。味見くらいは」


 そう言った秋葉は、テーブルの前に座りスクランブルエッグ(?)を食べてみる。


「…………」

「…………」


 秋葉は一口に時間をかけている。その間、ガイアは期待の目で反応を待っていた。

 秋葉が飲み込むと、突然微笑み出す。


「おお!! その反応! 美味しかったと見た!!」

「…………」


 秋葉の反応に喜ぶガイアだった。しかし、秋葉の表情は固まっていた。

 秋葉は微笑んだまま、後ろの窓を開ける。


「?」

 ガイアは不思議に思って見ていると、今度はスクランブルエッグ(?)が乗っている自分とガイアの皿を持ち、後ろの窓まで近づくと――



「ざっけんなああああああああああああああああああああああ!!」



 秋葉は皿を窓から遠くに投げ飛ばした。


「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 それを見て頭に来たガイアは、秋葉の頭を思いっきり殴る。

 しかし、効果はいまひとつだった




「それはこっちのセリフだよ! 彼女の料理を投げ飛ばすバカがいてたまるか!!」


「馬鹿野郎!! あれぜってぇ卵で作ってねえよな! なんでコーラの味がすんだよ! おまけになんでサクサクなんだよ! 普通のスクランブルエッグはふわっとしてんだよ!」


「他に言うことは?」


「ないね!!」


「はぁ!? 僕が命を削ってまで作った料理だぞ! 少しくらい褒めてくれたっていいじゃないか!」


「朝食ごときに命削るわけねえだろ! 強いて褒めてやるなら、こんな訳わからねえ料理を作る才能だけはあるってな!」


「それ褒めてないじゃないか! 大体、美味しい朝食が食べたければ――」




 ……相変わらず止むことを知らないアキレスとガイアの――秋葉と神奈の低レベルな口喧嘩。




 信頼してるから――愛し合ってるからこそできる喧嘩なのかもしれない。





第二章 完

 無事(?)第二章完結しました!

 第一章に比べ、長くなりましたが今後もこの程度の話数で進行する予定です。


 第三章に続きますが、その前に第二章の構成、誤字脱字、不適当な表現を見直すため、次回の更新は2/12の予定です。

 更新速度を上げろと言われたばかりにも関わらずに、すみません。

 その代わりというのもあれですが、今週中に新作を出すことにしました!

 もちろん、この作品も引き続き更新を続けますので、これからもよろしくお願いします!


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