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混沌のディオス・ウォー  作者: 白沼 雄作
第二章 愚かな英雄
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第十一話秋葉編 一心同体



「アキレス! 馬鹿!!」


 ――神世界。

 ガイアはアキレスの頭に抱きついていた。


「ガイア、なんで泣くんだ? あいつはもうこの世にはいねぇ。もう終わったんだぞ」

「なんでって、体がグチャグチャになってまでやる必要ないじゃん!」


 アキレスの体は、頭以外原型を保っていなかった。内臓や骨が剥き出しで、肉が溶け紫色の泥が集まったような感じになっていた。

 しかし、アキレスはガイアを安心させようと笑っていた。


「安心しろって、この程度じゃ死なねえよ」

「つまらない冗談はやめてよ!」 


 ガイアは涙を流す。


「アキレスが死んだら僕はまた……」

「大丈夫だ。俺はお前を一人しねえよ」

「でも――!!」

「約束する! 俺はぜってぇーお前を一人にしない! だから笑ってくれ……」



   ※



 鋭太郎が学校の校庭にて。

 アキレスこと秋葉とウラノスは向かい合わせに立っていた。


「もうよせよ。はっきり言ってお前じゃ勝負にならねえ。一方的な殺しになる」

「くっ、たかが不意打ちで……!」

「おいおい、あっちでの戦いを忘れたのかよ」


 秋葉はやれやれと手を前に出す。


「……ありゃ?」


 別空間から『トランス・オールマイト』を出そうとした秋葉だったが、出てこなかった。


「おかしいな……………………あっ」


 秋葉はやっと気づく。荘夜によって自分の体は学校に送られたものの、弾き飛ばされていた『オールマイト』は転送されていなかったことに。


「あの野郎……気づいてくれればいいんだが――」


 秋葉が頭を掻いて言っている隙に、突如秋葉の左胸に強い風圧が当たり大きな風穴ができて血が流れ出る。


「残念だったねー、武器がなくて」

「全くだ。これじゃお前を瞬殺できねえ」

「…………」

「肉弾戦は苦手じゃないが、竜巻とか雷とか落とされるとなりゃ簡単に近づけねえから――ってどうしたそんなこの世のものじゃないものを見る目をして? まあこの世のものではないけどな」


 秋葉の言うとおり、ウラノスは驚愕の目で見ていた。


「お前……どうなってんだ? 心臓が逆の位置にあるとか言わせないよな?」

「あー、はい。なるほど。安心しろ、さっきので心臓は消し飛んだから」

「ならなぜ平然としていられる!? ガイアに腕を切られたときは足を崩していたじゃないか!?」


(そん時から影で見ていたのか)


「出血量がそっちの方が多かったのもあるかと。俺の体は心臓がなくても生きられるようになっちまったからイマイチそういうのがわからなくなっちまった」

「はぁ!?」


 秋葉がボソッと言った話に、ウラノスは声を出して驚いた。


「ゼウス戦で体をぶっ壊したのが原因でな。頭以外もう滅茶苦茶で、治療が間に合わず一度は死んださ。だがタナトスがなんやかんやしてくれて、脳さえ機能してれば生きていける体に――つまりゾンビ状態にしてくれたことによって俺は生き返った。その、なんやかんやっていうのは機密事項とか言って教えてくれねえけど。だがもちろん、痛覚とかは残ってるから痛みで動けなかったり失神したりすることはあるんだがな」


「ゼウス戦…………まさかお前!?」


 ウラノスは心臓なしで生きれる秋葉の事より、時空神であり『神世界最強の神』と呼ばれていたゼウスと戦った事が気にかかった。


「ゼウスは行方不明とされているが……お前が殺したのか!?」

「ん、そうだが」

「…………」


「仕方なかったんだ。ゼウスが何かに目覚めたように突然、ガイアを嫁にしたいとか言い出してさ。ゼウスはアイテールと互角の神。さすがに逆らうわけないだろーなと思って俺はガイアのことを諦めた。

 ……案の定、ガイアは申し出を断った。それにキレたゼウスがなぜか俺に八つ当たりしてきたんだ。『なんでお前みたいな童貞がガイアとイチャイチャできるんだよクソが!!』とか言って。

 俺は戦い気なかったんだがー…………あっちが本気で殺しにかかってくるもんだからこっちも死ぬまいと本気で対抗したら、勝っちゃってとこ

 ――そういやお前スマホ構えてどうした?」


 秋葉が長々しく話している間、ウラノスはスマホを手に持ち何かをしていた。

 それを秋葉が指摘すると、ウラノスは微笑みながらスマホを操作し、何かを再生する。



『ゼウスは行方不明とされているが……お前が殺したのか!?』

『ん、そうだが』

『…………』

『仕方なかったんだ。ゼウスが何かに目覚めたように――』



 ウラノスは、ゼウスについての会話を録音していたのだ。


「……それを上に送ると」

「当然。何十年も未解決だったゼウス失踪事件がこれで解決するんだからね」

「そうかい。とりあえず、それ送った後でお前を殺すか」

「? それはつまり送っていいと?」

「あぁ、遠慮なく送って、どうぞ」

「正気か!?」


 秋葉が返してきた意外な言葉に、ウラノスは戸惑う。


「ゼウスを殺したことがバレれば、神衛部隊だけじゃない! アイテール様の側近のもの達もお前を殺しに来る! 勝ち目はないぞ!」

「敵のくせに心配すんな。俺はそれでいい。そうなれば鋭太郎やカオスへの被害が減る。それに側近がくるとなりゃ、エレボスの野郎も自ら顔を出してくるはずだし、一石二鳥だ」

「……そうか」


 ウラノスはスマホの画面を見せる。録音データを添付したメールを送る直前だった。


「――――――――」

「――――――――」


 真剣な眼差しで、互いに目を睨み合う。

 そしてウラノスは、そのままメールを送信。

 それと同時に秋葉は、跳ぶように一瞬でウラノスに近づき、攻撃を仕掛ける。それに対しウラノスは無反応。秋葉の素早さに対応出来ず、攻撃を受ける――かと思われた。


「っ!?」


 秋葉の体が、ウラノスに拳を当てる前に急落下した。まるで巨大なおもりが上から体に落ちてきたようだった。


「まさか、オレが本気を出してると思ってた? 僕の【ケイパビリティー】は天候を操っている訳ではない。空気そのものを操れるのさ。水をすくうように空気を動かすことで、風を起こし、雲を動かし天候を変えていただけに過ぎない」

「…………」

「そして今はアキレスがいる場所に大きく下に風圧をかけているんだ。もちろん、これが限界ではない」


 ウラノスがそう言って秋葉に手をかざすと、秋葉の体にさらに強く風圧が押しかかり、地面が大きく凹む。体を押され、内蔵を痛めた秋葉は血を吐く。


「これより上があるけど、そしたらさすがの英雄でも死ぬよ?」

「…………」


(普通にマズいな、策がゴリ押ししか思いつかねぇ……)


「もし、カオスをオレに譲ってくれるのなら、すぐにでも解放して――」

 ウラノスが調子に乗っていると、秋葉周りの地面から無数の砂が弾丸のようにウラノスに向かって飛んでくる。


「!?」


 ウラノスは慌てて自分の前に空気の壁を張り、砂の弾丸を防ぐ。


「一体誰が――ぐはっ!!」


 ウラノスが弾丸を防ぐことに専念していると、後ろから何かがウラノスの体を貫いた。ウラノスの隙を狙ったように、後ろから太い木の枝が生え、貫いたのだ。


「これ……は……ッ!!」


 木の枝は後ろに勢いよくウラノスを抜き飛ばす。ウラノスは痛みで受け身が取れず、転がっていく。


「何黙ってやられてんだよ」


 秋葉のすぐ近くに木が生えると、その木がガイアへと姿を変えた。


「余裕なんでしょ? さっさと片付けてよ」

「俺も無敵じゃねえんだ。下手なことすりゃ死んじまうぜ」


 風圧から解放された秋葉は立ち上がり、首を鳴らしながら言った。


「あいつの【ケイパビリティー】はとんでもねえ速度で発動できるから非常に厄介だ。ニュクスの野郎が『オールマイト』を忘れていなきゃなんとかなったが」

「――だったら、久しぶりに『あれ』やる? この世界で使えるかわからないけど」

「『あれ』か……別にいいが正直あんな雑魚相手に使う必要はねえんだよなぁ……」

「さっきまでやられてた人がよく言うよ」

「阿呆、遊ばせてただけだ。いつでも抜け出せることはできたがその前にお前が――」


「雑魚……だと…………!!」


 二人の会話を聞いていたウラノスが傷口を押さえながら立ち、しかめっ面で二人を見ていた。


「ん? 言ったまんまだが」

「……………………」

「まあ勘違いすんな。強いと思ってたから――最初は。実際戦ってみると案外そうでもなさそうだなーって」

「ちょ、アキレス!」


 ウラノスを見下す秋葉に対し、ガイアは焦り始める。


「何バカなこと言ってんのさー!」

「今の状況なら隠しても隠さなくてもキレると思うから」



「ふざけるな!!!」



 ウラノスは怒りを露わにする。

 すると唐突に突風が吹き、厚黒い雲が晴天を隠し、これまでの暴風雨の状態――それ以上に悪化した。

ウラノスは自身を囲むように竜巻を起こす。その勢いは凄まじく、校舎はおろか近くの建物も巻き込んでいく。校庭の地面も崩壊し、不安定な状態になる。


「ほらな」

「ほらって、あのねぇ…………」


 秋葉とガイアは吸い込まれないように姿勢を低くし、様子を伺う。


「あー、こりゃユノも大変だなー。これ終わったら全部復旧しなきゃいけねえから――おっと!」


 秋葉が意味のない同情を口にすると、秋葉の真上から雷が落ちてくる。秋葉は体勢を低くしたまま左に回避した。


「アキレス、あんだけ大きい竜巻じゃ僕の攻撃も通らない。やっぱり『あれ』をするしかないよ!」

「……んだな。あんなのに巻き込まれたらまた、体がグチャグチャになりそうで怖いからな」



 秋葉とガイアは互いにじっと見つめ合う。



「……………………」

「……………………」

「……………………」

「……………………早くしなよ」

「わかってる! わかってるんだが! 今まではあまり意識しなかったんだが!」

「今更照れてんの? そんなんだから僕以外の女は寄って来ないんだよ」

「うっせー! 俺はお前以外の奴なんて知ったこっちゃない!」

「へへ、ありがとう……好きだよ」

「…………あぁ、俺もだ」


 秋葉はガイアの頭の後ろに手をかける。


「くっ……こんなところでイチャイチャしやがって!!」


 二人のやり取りを見てさらに怒りがこみ上げてきたウラノスは、自分を囲っていた竜巻を放ち、二人に向けて飛ばした。

 二人はそれに目もくれずに続ける。



「俺と」



「僕は」





「一心同体!!!」

「一心同体!!!」





 二人は目を閉じ、唇を合わせる――



 すると謎の光が二人を包み始める。その光に触れた竜巻は元から存在しなかったように消滅した。


「!?」


 ウラノスは何が起きてるのか理解できずに見ていた。

 光が消えると、秋葉が一人立っていた。

 しかし、その秋葉の姿は変貌しており、橙色の髪に黄色と赤のオッドアイ、服装は秋葉が着ていたものと変わりなかったが、青白い光が纏っていた。

 そして何より不思議なのは、ガイアの姿がどこにもないことである。

「…………」


【秋葉】は両手を見て、閉じたり開いたりして動きを確認していた。


『体に異常はない?』

「あぁ、全然」


 【秋葉】の体からなぜかガイアの声が響く。その声は外にも聞こえ、ウラノスの耳にも届いていた。


「どうなってるんだ……まさか、噂でしか聞いたことがなかったが、融合したとでも言うのか!?」


 ウラノスが一人で驚き震えていると、【秋葉】がそれに答える。


「あぁ、その通りだ。まあ……『俺達』は<トラスト・コアレス>と呼んでいるが。名にあるように、互いに信頼――つまり絆が深くなければできない技だ。とは言うが、実際どういう原理なのかは俺にもわからん」

「バカな!? 神と合体、融合はできないと証明されたばかりだぞ!!」

「その証明はあくまで『神同士』だ。俺がヒューマンであることを忘れたか?」

「うぐっ! アキレス……お前は何者なんだ!!」

「ただの一般人ですよ。お前らが好き勝手に英雄呼ばわりしてるが。あと余談だが、この姿の時は俺とガイアで紛らわしいからな。【サイハテ】、そう名をつけることにした」

(ガイアがつけたこの名前……未だに意味がわからねぇんだが)

(いいだろ! かっこいいんだから!)

 

 <トラスト・コアレス>中は、互いの思考が共有されるため、互いにだけなら声を出さずに会話ができる。


「だが調子に乗るなよ! 誰にもできない技ができたところで、オレが負けるとは決まってない!」


 ウラノスは真剣な表情で、右腕をあげる。


「天空<バニシング・アブソーブ>」


 ウラノスがエフェクトを唱えると、前に作った竜巻の倍以上の大きさ――校舎の面積と同じくらいの竜巻が、ウラノス中心に現れる。吸い込まれた建物は竜巻の周囲を回ることなく、触れた瞬間火花をあげ、跡形もなく消えていった。

 【サイハテ】の現位置では簡単に巻き込まれてしまう位置だったが、後ろに瞬間移動して難を逃れた。


『あれだけの破壊行為・・・・・・このままじゃこの世界のバランスが崩壊する!』

「あぁ、ここは一刻も早くあいつを殺さねえとな!」


 【サイハテ】は地面に向けて右手をかざす。


「聖剣<アース・ブレイド>」

 【サイハテ】がエフェクトのようなものを口にすると、地面から緑の光に包まれた剣が現れる。【サイハテ】はその剣を両手で天に向けて持ち上げる。


「ここは本気で行かせてもらうぞ!」


 【サイハテ】は意思を強く固める。すると剣がレーザーのような波動を放ち始める。その波動は天を越え、オゾン層おも通過して大気圏外にはみ出すほどだった。



「ワールズエンド<オーバー・ライン>」



 【サイハテ】は剣を勢いよく振り下ろす。空を覆う雲を裂き、全ての物体をいとも簡単に消滅させるウラノスの竜巻を簡単に破り、ウラノスの体に波動が命中した。

 しかし、あまりにも波動の勢いが強く、遠く見えない街にまで斬撃が届き、被害が起きているだろう。


「……………………」


 【サイハテ】は剣を地面に刺すと、地面の中に剣は姿を消した。【サイハテ】はゆっくりとウラノスのもとへ足を運ぶ。

 校庭に底なしの断崖絶壁の谷ができるほどの威力で、ウラノスが生きているとは思えなかったが……


「ゴホッ!! ゲホッ!!」


 ウラノスは、左腕を失いながらも生きていた。両膝を地に着け、右手で左腕を抑えていた。さらに全身が小刻みに震え、血を吐いていた。


「……前言撤回。お前強いな」


 【サイハテ】がそう言うと、<トラスト・コアレス>を解除し、秋葉とガイアに分裂した。


「本来少しでも体に当たればその衝撃で頑丈な奴でもショック死する。今生きてるだけでも賞賛に値したいところだが、その様子じゃもう戦えねえな」

「ごばッ!! ぐへッ!!」


 ウラノスは大量の血を吐き続ける。


「無理もないな。左腕に当たった衝撃が体全身に伝わって、内臓が破壊されたからな。それだけじゃねえ、これは自身が一番わかってることだと思うが、おそらくほとんどの骨がバキバキに折れて動けないだろう」

「ぐばぁは!!」


 ウラノスが勢いよく血を吐いたところ、服の内側のポケットにあった一枚の写真が落ちた。


「!?」

「!?」


 それを見た秋葉とガイアは目を疑った。

 その写真には、ウラノスともう一人――見知らぬ顔の女性が写っていた。二人は仲が良さそうで、恋人のようだった。


「ちっ! こいつ!! 浮気してたのか!!」

「……まあ、噂ではユピテルに次ぐ女たらしだそうだしな」

「違……ぅ……それは…………姉……」

「!?」

「!?」


 ウラノスが口にした言葉に、二人は驚愕する。


「オレ、実は……シスコン、で――――ぐぼぉ!!」


 ウラノスが自身の秘密を、吐きながらも暴露した。


「はぁ? ふざけんなよ!! ウラノスに姉がいるなんて聞いてないよ! 浮気の言い訳か!!」


(確かに、言い訳に聞こえるが……姉弟があんな仲良く写真を撮るのは不自然じゃない。妹がいたからわかる)


「アキレス! さっさとこいつに止めを刺そう!」

「…………」

「何ボーッとしてるのさ! もういい!! 僕がやる!」

「待て!!」


 止めを刺そうと剣を出したガイアに、秋葉はやめるように言った。


「なんでさ! 殺すのに早いも遅いもないじゃないか!」

「ガイア、ユノを呼んでこい」

「………………………………は?」


 秋葉の信じられない指示に、ガイアは怒りが爆発し、秋葉の胸倉を掴んでくる。


「何考えてんだよ!! それってこいつを助けるってことなんだよな? ふざけんな!!」

「!?」


 ウラノスはガイアの言葉に反応し、顔を上げた。

 秋葉が自分の命を救ってくれる。そんな予想外の展開になぜか涙が出てきそうだった。


「……こいつには借りがある。こいつは正真正銘のクズだ。ガイアの心を弄んだあげく、結局は体目当てだった。だが、こいつがいなかったら気づけなかった、お前の気持ちに。それに、一応ガイアの恋人として一時的に世話になったしな」

「そうだとしてもこいつを生かしておく理由はないだろ!!」


 ガイアが納得できずに怒鳴りつけると、秋葉は耳打ちをする。


「安心しろ、許すわけじゃない。他の神の情報収集、上の奴らを誘き寄せるための餌として、恩を仇で返すつもりだ」

「…………なるほどね」


 秋葉のゲスな提案に納得したガイアは、怒りを抑え手を離した。


「オレ…………ぁ…………」

「あぁ、安心しろ。生かして――」


 次の瞬間――まるでギャグコメディのお決まりであるかのように、悲劇が起きた。




「ぇ…………?」





 突然遠くから斧が飛んできて、ウラノスの首を切断した。




「なん……………………で――――」


 ウラノスは自分に何が起きたのか理解できずに、そのまま命を絶った。

 ウラノスの命を奪った斧は、『トランス・オールマイト』だった。


「……………………」

「……………………」


 あまりにも突拍子な出来事に、二人はしばらく沈黙する。


「……アキレス、なんかごめん」

「いや、別にいいや。実際ユノも治療してくれるかわかんなかったし」


 秋葉は『アックス』を拾いながら言った。


(それにしても変だな。『オールマイト』は他人でも使用はできるが、変形は俺以外できない仕様になっているはず。だから、飛んできても『ライフル』のままのはずなんだが――)


「終わったみたいね」


 柚乃が突如後ろに現れ二人に声をかけた。


「あっ、柚乃先生! 校舎にいたけど大丈夫だったん?」


 ガイアが怒りを忘れたかのように話した。


「えぇ、ヘルメスを安全な場所へ移すためにここを離れていたわ。それにしても、随分派手にやったわね」

「悪いな。こうでもしないと倒せなかった」

「気にしないで、街を元に戻すくらい一週間でできるわ。それより、鋭太郎くん達がもうこっちに着いてるわ。合流しましょう」

「わかった」

「ウィッス」


 秋葉とガイアは、柚乃について歩き始める。



「アキレス、後でプリンよろしく」

「覚えてたのかよ……仕方ねえな」







「――仲直りしたみたいで良かった良かった!」



 学校から離れたビルの屋上から見ていた恋侍が、そんなことを口にしていた。

 焼きちくわを食べながら――。


大変遅くなって、本当にすみません。

・・・・・・正直に、分割する必要がないかと我ながら思いました(時間系列が同じなので同じ話としてまとめたかっただけです。すみません)

次回は第二章エピローグとなります。

内容は短くなりますが、更新は普段通り日曜日にします。

今後は体調管理もしっかりしながら続けたいと思うので、これからもよろしくお願いします!

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