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混沌のディオス・ウォー  作者: 白沼 雄作
第二章 愚かな英雄
21/52

第八・五話 エフェクトについて

大変遅くなってしまい、本当にすみませんでした!!


今回は解説が中心となっているため、そのパートでは台詞の前に人物の名前を付けることにしました(人物名「 」というように)

また、後半のパートには第八話で修正前にあった、後半パートを入れてありますので、エフェクトの解説が不要な方でもそこだけは読んでくださると助かります。(◆と■に挟まれているのが解説パートです。■から後が後半パートとなります)


 秋葉が夏織の隠れ家へ向かっていた頃――


 体育館にて、鋭太郎は柚乃の元で特訓を続けていた。


「それじゃあ、次はエフェクトの特訓を――」

「あのー、先生」


 鋭太郎が発言しようと、手を挙げた。

 場には柚乃と鋭太郎、ステージの上で寝ているヘルメスしかいないため、その必要はなかったが。


「どうしたの?」

「今になって聞いて申し訳ないんですけど、エフェクトってどのような原理で発動するんですか?」

「あら、それを解説してなかったわね。でも、発動させる分には必要ない知識だし、教えても混乱するだけかも知れないわよ?」

「俺は元々人間ですから、やっぱり『なんとなく』発動してるだけじゃ、中々身につかないと思います。それに、以前荘夜が『エフェクトは独学』と言ってましたから、原理を知ることで自分に合ったエフェクトを見出せると思ったからです」


 鋭太郎が理由を述べると、柚乃はうんうんと頷いた。


「随分と勉強熱心ね。いいことだわ! それじゃ、ご要望にお応えしてエフェクトの解説をしていくわ」




   ◆




柚乃「エフェクトについて。エフェクトとは、自分の魔力を元に発動する魔術。発動する際は『スペルコード<エフェクト名>』を唱える。そうすると、自身の脳に暗示がかかり、自然とエフェクトが引き出され、発動するわ。エフェクトのイメージと発動意識さえ持って詠唱すれば、誰だって発動できるものよ」


鋭太郎「それでも、普通の人間が使うのは危険なんですよね?」


柚乃「そうね。普通の人間、私たちの世界の<ヒューマン>も同様、エフェクトを唱えてしまえばその魔力消費に耐えきれず、体を壊してしまうわ。並の人なら、即死するわ」


鋭太郎「なるほど……つまり、神は人間とは比にならないくらい、魔力があるってことですね」


柚乃「えぇ。人間の魔力容量を100とすると、神は基本1000万。でも、私の容量が100億であることからも、神によって差はあるわ」


鋭太郎(100億……桁が大きすぎて逆にその実感がない…………)


柚乃「ちなみに、最も消費量の少ないエフェクトでも魔力を500も消費するから、まず人間がエフェクトを使うことは諦めた方がいいわ。と、言うけれど、汎用性の高いエフェクトも、それなりに魔力を消費するわ。

 広範囲の爆裂を起こす<エクスプロージョン>、

 竜巻を大砲の如く撃ち出す<トルネード・ランチャー>、

 空気と共に相手の体を圧縮させる<エア・コンプレーション>、

 神衛部隊の誰しもが一度は習うエフェクトでさえ、100万も魔力を消費するわ。ちなみに、今鋭太郎くんが特訓してる<アン・グラビティ>は、一見地味だけど魔力を150万も消費してるわ。重力系のエフェクトは、基本的に消費量が大きいから、連発は禁物よ」


鋭太郎「ちょっと待ってください!? 俺は既に<アン・グラビティ>を数十回も使っていますよ! 先生の言うことが正しいのであれば、俺はこれまでその何倍もの魔力を使ってたことになりますよね!?」


柚乃「でも、鋭太郎くんの場合は右手首にあるリストバンドのおかげで、半分ほど消費が抑えられてるわ。それと、これにも個人差があるけど魔力は半日も休めば回復するから、私の言うことに反抗しなければ特訓で体を壊す心配はないわよ」


鋭太郎「それでも十分超えますよ!」


柚乃「鋭太郎くんの魔力容量は、恐らく夏織さんの大半が受け継がれていると思うから……900万と100ね。100はあってないようなものだけれど。今の夏織さんの容量は100万。容量が一気に少なくなったことで、魔力循環に支障を来して、今はエフェクトを使えない状態なんだと思うわ」


鋭太郎(夏織……そんな無茶までして俺を…………)


柚乃「何にせよ、エフェクトをそのまま使用したら、戦いによっては数分も経たずに魔力が尽きてしまうわ」


鋭太郎「『そのまま』? ということは、魔力を低減できる手段がある訳ですね?」


柚乃「その通りよ! 魔力を節約し、効率よく使うために【スペルコード】があるの」


鋭太郎「スペルコード? 初耳です」


柚乃「【スペルコード】は、詠唱時にエフェクト名の前に付ける魔力導管の名称よ」


鋭太郎「えっと……夏織で言う『混沌』とかですか?」


柚乃「そうよ! それを付けることで燃費を良くし、尚且つエフェクトを強化することができるわ。魔力はエフェクト詠唱時に、己の魂から体全身に運ばれるけど、その道となる魔力導管は無数に存在するの。その多くが全く役に立たない導管となっていて、約3分の2が無駄に放出されてしまっているの。

   そこで、必要な導管だけに魔力を送るために、スペルコードを使用するわ。すると、自身の潜在能力――言い換えるなら個性が引き出され、魔力が自然と決まった導管に、自分に適した導管に運ばれていくの。これにより、無駄に消費していた魔力もエフェクトの源となり、威力が跳ね上がるわ。

   しかし、それだと大量に消費することに変わらないから、その場に応じて魔力の加減をしていく。これについては特訓すれば何気なくできるようになるわ。加減を行ったとしても、スペルコード無使用時の本気と同格の威力が出せるわ」


鋭太郎「なるほど……先生、その【スペルコード】は俺にも存在するんですか?」


柚乃「うーん…………ごめんなさい、それは私にもわからない。でも、神に限らず、感情を持つ生命であれば必ず魔力導管は存在するわ。その中の適合導管を、エフェクトを使っていく上で、自力でそれを認識するしかないの」


鋭太郎「その間は、【スペルコード】なしでエフェクトを使わざる負えない。となると、実戦では使い所を考えて置かないといけないわけですね」


柚乃「そうね。だから、できる限り特訓中に掴みたいところね。もし魔力導管が把握できたら、その導管に名称を付けて暗示で引き出せるようにしておいてね。神は基本的に自身が司っているものから取ってるけど、あなたの場合何もないから、自分で考えておいてね」


鋭太郎「わかりました」

   

鋭太郎(自分で考えろって言われてもなぁ……中々難しい)


柚乃(本当は分かっているのだけれど、今は……教える訳にはいかないのよ)

  


柚乃「そろそろ、説明だけじゃ飽きてきたと思うから、実演を入れるわね」


鋭太郎「実演? 何をするんですか?」


柚乃「【スペルコード】の有無で生じるエフェクトの差を見せるわ。今から使うエフェクトは、<スナイプ・ボルト>。電撃を弾丸のように放ち、遠距離の相手を仕留めるのを目的としたエフェクトよ。それでは、初めは【スペルコード】なしから」


鋭太郎「せ、先生……その指、ヘルメスに向けてますよね? 大丈夫なんで――」


柚乃「<スナイプ・ボルト>」


 ――バチッ!

 柚乃の右手の人差し指から電撃が放たれ、寝ているヘルメスの体に直撃する。


ヘルメス「いったぁ!!」


 ヘルメスの体が反射的の飛びはね、目を覚ます。


鋭太郎(容赦ないな…………)


ヘルメス「寝ているところを襲うのは、外道だろ!」


柚乃「今のように、【スペルコード】がない状態だと、魔力が上手く運ばれていかず、威力が弱いものとなってしまいます。そこで――」


ヘルメス「おい! 無視すんな!」


柚乃「月<スナイプ・ボルト>」


 ――ドゴォン!!!

 再び柚乃の指から電撃が放たれるが、先程よりも電撃が大きく、高速でヘルメスに着弾する。


ヘルメス「あぶぁぶぁぶぁぶぁぶぁぶぁ!!」


 ヘルメスは失神し、倒れる。


柚乃「【スペルコード】を使用することで、このように強力な一撃に変わります。安心して、ちゃんと手加減してあるから、あのクソガ――ヘルメスが死ぬことはないわ」


鋭太郎(お、鬼だ…………)


柚乃「また、適した【スペルコード】は1つと限らないわ。神がそれぞれ司っているものが複数あるのが、その証拠よ。そうね……今回は――」


 柚乃は右手を真横に向け、人差し指を立てる。


柚乃「結婚<スナイプ・ボル――くしょんッ!!」


鋭太郎「!?」


 柚乃は詠唱の途中でくしゃみをしてしまう。

 本来であれば最後まで言えてなければ失敗となり、不発もしくは性能が劣った状態で発動するが、柚乃が詠唱せずともエフェクトが出せるほどの実力者であるが故に、エフェクトの発動に成功、右手の人差し指から電撃が勢いよく放たれる。




 なぜ、柚乃は詠唱せずにエフェクトが出せるのか。

 この場で彼女が解説することはないので、代わりに語り手(?)が解説する。


 そもそもの話、エフェクトを発動するのに詠唱など必要ないのだ。

 エフェクトを引き出す暗示さえ脳にかけられれば、どのような動作であってもいいのだ。

 その暗示をかけるのに一番手っ取り早いのが、『エフェクト名を声に出すこと』だったため、神世界ではそれを学校で習うほどの常識であると、認識されていた。

 そのため、エフェクトを思い浮かべただけで発動できる柚乃は非常識。

 神世界においてもイレギュラーな存在だった。


 だが、そのような神は柚乃だけではない。

 ある神は食べ物を口にすることで。

 自傷行為で。

 音を奏でることで。

 異性とキスすることで発動できる、おかしな神もいるのだ。




 話は戻る――


 ――ドォバババババァン!!!


 柚乃が放った電撃が轟音を立てながら、壁、天井、床を反射して宙を飛び交う。

 本来であれば、最終的に失神しているヘルメスに直撃するように計算して放とうとしたものであるが、くしゃみをしてしまったせいで全く別の場所に放ってしまい――


鋭太郎「うおッ!?」


 鋭太郎の背中に直撃してしまった。


鋭太郎「…………?」


 鋭太郎は違和感を覚える。

 電撃を体に受けた感触はあった。

 だが痛くもなんともなかったのだ。


柚乃「鋭太郎!?」


 柚乃は慌てた様子で、鋭太郎に近づいては体を触り始める。


柚乃「大丈夫!? 痛くない!?」


鋭太郎「全然平気ですよ! そんなに心配しなくても――」


 柚乃の様子に返って焦る鋭太郎。

 彼の身を案じた柚乃は、その勢いのままギュッと抱きしめる。


鋭太郎「先生!? 何を!?」


柚乃「……ごめんなさい…………私が不甲斐ないせいで、あなたに辛い思いをさせて……」


鋭太郎「先生、それは大袈裟で――」


柚乃「私が、あなたを一人にしなければ…………こんなことには……」


鋭太郎「せ、先生…………一体、何のことを――」


 ズォン――ドンッ!!


 何かが天井を破り、床に落ちた音がした。

 その音で我に返った柚乃は、鋭太郎を放し落ちたものを見る。

 鋭太郎も、そちらに気を取られ後ろを向いて確かめる。



   ■




「いてて…………」


 落ちてきたのは、夏織を抱えてきたガイアだった。


「!?」


 鋭太郎はその姿を確認してすぐに構えるが、柚乃が鋭太郎の前に腕を出して制止する。


「大丈夫よ。彼女から殺気はないわ」

「ですが――っ! 夏織!?」


 鋭太郎は夏織を見て、体に異常が起きていることに気づいた。

 彼は無我夢中で夏織に駆け寄る。


「大丈夫か!!」

「ぅ…………鋭太郎さん…………?」


 夏織は鋭太郎の方を向いているが、顔を認識出来ていないようである。

 柚乃は夏織に近づき、手を彼女の額に当てる。


「やっぱり…………こうなっちゃうのね……」


 柚乃がそう呟くと、突然手が光る。

 光が収まると、夏織の顔色が元に戻り気持ちよさそうに寝ていた。


「エフェクトで体の状態を良くしたけど、再発する可能性があるから今日は私が預かるわ」


 柚乃はガイアから夏織を譲り受ける。


「あっ、そうそう! 先生! ポセイドンがここに来なかった?」

「えっ?」


(ポセイドン……ゼウスに次ぐ最強の神と言われているが、もうこの世界に来てるのか)


「今日は鋭太郎くんと、あそこで寝ているクソガキしか来てないわよ」


 柚乃は、ステージの上で気絶しているヘルメスに指差した。


「マジ!? てことはやばいじゃん!」


 ガイアの表情に焦りが出た。


「何かあったの?」

「実は今アキレスとウラノスが戦ってるんだよ! ここにポセイドンの奴が来てないってことは、あっちに援護しに行ってることになるんだよ!」

「秋葉が!?」


 鋭太郎は振り返って、ステージ側に向かって走る。

 ステージの上に置いといた木刀を手に取ると、近くの扉から素早く外に出ようとする。


「待ちなさい!」


 柚乃が呼び止める。


「ウラノスとポセイドンは神世界の中でも上の上よ。クロノスに勝てたのはただのマグレ。今のあなたとでは格の差が大きすぎるわ」

「…………」


 鋭太郎は柚乃の方を振り向く。


「それは分かってます。それでも、俺は親友を放ってはおけないんです」


「親……友………ですか」


 柚乃は鋭太郎の言葉を受け、考えを改める。


「……行きなさい」

「すみません! 行ってきます!」


 鋭太郎は走って外に出た。


「行かせて良かったの?」


 ガイアが聞くと、柚乃は笑顔で答えた。







「問題ないわ。だって、私の息子ですから!」







「……………………………………………………え?」



「あっ」



構成の都合上、今回【ケイパビリティー】の解説は行いませんでした(第一章にて、クロノスが少し解説を入れているので、一旦はそちらを参考に)

そのため、第三章の解説編を改編して、【ケイパビリティー】を中心としたものに変えたいと思っています。

後日、修正しますのでお待ちください!

また、本編の次話は来週の月曜日までには更新します。


更新が大分遅れてしまうなど、調子が取り戻せていない状態ですが、

今後とも、よろしくお願いします!

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