プロローグ
我々が『世界』と呼んでいるものとは別の、神話の神だけ生存する世界が存在した。
だが実際の神話とは全く異なり、皆が仲良く争いはほとんどなかった。
これは、そんな世界で起こった話――
ある『神』は、人間世界の一人の少年に恋をした。
だが神々の掟で人間との恋愛はおろか、人間世界に入ることすら認められていない。
それでもその『神』は少年を諦めることが出来なかった。
『神』は最後の切り札として人間に化け、人間世界に入った。
それを知った神々は連れ戻そうと、次々と人間世界に入っていく。
難航していくうちに気づけば、神のほとんどが人間世界に溶け込んでいた。
これをきっかけに、神々が戦争を起こすことになるとは誰も思ってなかった……。
そして『神』は今も少年に近づこうと、彼を見ていた。
「こちらガイア、アイテール様に報告があります」
制服を身に纏った少女がスマホを耳に当て、誰かと会話している。
一見すれば、中二病を拗らせた少女にしか見えない。
だがその少女は『神』を連れ戻すために人間世界に送られた女神――ガイア張本人である。神々の掟により、人間世界にいる時は必ず人間の姿で行動しなくてはならなかった。人間世界に入ることを禁じてるのにも関わらずこのような掟があるのはおかしいが、これはあくまで非常時のためであるらしい。
ガイアは今、女子高生に化けている。
「やつを見つけました。どうしますか?」
ガイアは人間に化けた『神』を発見できたようだ。それを上の方に報告し、指示を待っていた。
「……わかりました。様子を見ます。それともう一つ…………例の少年を特定できました」