第一話
果ての見えない大平原に大勢の人々が集っていた。炎天下であるにも拘らず、数千人の人々が嬉々とした風貌で円を作るように位置している。
そして、その中心には甲冑を身に纏い、馬に跨り、緊迫した表情で前を見据える戦士たち。
そう、今日は五年に一度の各諸国の合同闘技演習が開催され、上流階級の貴族や中流階級の商人が大勢集まり、賑わっている。
合同闘技演習とは戦争中であろうと不侵攻条約を各国が結び、今日の日の前後数ヶ月は闘争を一時中断し、各国の持つ武力を誇示する場でもある。
こんなにも人が集まるのにはもう一つ理由がある。それは‘賭博’だ。どの国がこの闘技会を制するのか、どの団が勝ち上がるのか、それを予想し、金銭を賭け、戦を楽しむのだ。
しかし、闘技会でのルールには‘生死問わず’と掲げている為、国の主戦力になる団が出場する事はリスクが高い。故に彼の国らは有力な傭兵団を金銭や物資で雇い、出場させた。
そして現在、闘技会は決勝を迎えていた。残っている傭兵団はカルコサ公国お抱えの『竜の尾』とレムリア王国が雇った常勝無敗の『黄金の夜明け』だ。大多数の竜の尾と少数精鋭の黄金の夜明けの二組だが、賭けの数でも竜の尾が多い。
五年前の闘技会でも優勝しており、各国との紛争でも多大な名声を得ている。だからであろうか、五ヶ国が交わる闘技会では最強と呼ばれており、賭けの対象になるのは必然だった。対する黄金の夜明けは数年前に突如として姿を現し、大陸を流れながら活動していた故にこの地では知名度が低い。しかし、常勝無敗でもあり、この闘技会を勝ち抜いた腕は本物であるのだから、賭けにするものもいる。
賭け率は竜の尾が七で黄金の夜明けは三。だが、黄金の夜明けは気にした風も無く、竜の尾と対峙している。この闘技会の出場人数には上限があり、その数は百名。多勢を武器にする竜の尾は不利に思われるが、その分選びぬかれた猛者達が出場している為、どうあっても黄金の夜明けは不利であった。
それもそのはず、彼らの出場人数は僅か四十名ほどであったのだ。