表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

六話

「どういう…ことだ?」


「そういうこと。私は死んでいるの」


 何を…何を言っている?

 つまり、弥生は…


「幽霊…?」


「うん。そうなの」


「それっ…じゃあッ…」


「ごめん、言い方を間違えたね。

 死に掛けているの。

 私は事故にあってね。

 それで今、眠っているの。

 目覚める確立は…ゼロに近い」


「でもっ!ゼロってわけじゃッ!!!」


「うん。でも生きていても眠っている状態。

 それで今は…幽体離脱の状態」


「…」


 それじゃあ、ここは…

 ここは何だ?

 何なんだ?


「疑問に思っているでしょ?ここのこと」


「ッ!」


「ここはね…。夢の中だよ。私たちの夢」


「俺たちの…?」


「うん。でももっと正確に言うと三途の川…かな」


 つまり、この場所は…


「死んでいる人しか来れないはずじゃ…」


「うん。だから夢なんだよ」


「夢…」


「死者と生者の夢が行き交う道。夢行路」


 夢行路。

 それは三途の川。

 それは死者が生者を導く夢の場所。

 夢。

 幻。


「夢香露…」


 夢香露。

 あの飴だ。

 夢。

 香は行。

 露は路。

 あわせて夢行路。

 この場所に来るためのもの。


「夢香露。まあ、簡単にいうと…渡し賃」


「三途の川で船に乗るための渡し賃が夢香露か…」


 六文。

 六文だったはずだ。

 俺は彼女にもう、それ以上渡してしまっている。


「うん。ごめんね。言えなくて」


「いや、いいよ」


 良くない。

 全然良くない。


「それじゃあ、さようなら…」


「あ…」


 待て!

 行くな!

 逝かせるな!!

 まだ、まだ!!

 伝えていないじゃないか!!

 言え!!!

 言うんだ!!!


「コウちゃんと話した時間。とっても楽しかったよ」


「…い、行くな。逝かないでくれ!!」


「ダメだよ。もう、ダメなんだ…」


「そんなこと無いだろう!!

 まだ、完全に死んだわけじゃあ、無いんだろう!?」


「ううん。もう、無理だよ。私は死ぬの」


「諦めるなよ…逝かないでくれよ…」


 俺は弥生を抱きしめる。

 この手に…離さないように…


「無理なの…ごめんね…ごめんね…」


 弥生は震えている。

 おそらく泣いているのだろう。


「弥生」


「何?コウちゃん…」


「好きだ」


「え…?」


「弥生のことが好きなんだ…逝かないでくれ…」


「ありがとう。私も…私も好きだよ、コウちゃんのこと」


「たのむ。逝かないでくれ…」


「ごめんね…コウちゃん…大好きだったよ…」


「弥生ッ…!!」


「ごめんね。ありがとう、コウちゃん…」


 ふと、唇にやわらかい感触。

 俺はその感覚を…幸せを忘れないように…

 弥生を抱きしめた。


十時にエピローグ投稿。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ