六話
「どういう…ことだ?」
「そういうこと。私は死んでいるの」
何を…何を言っている?
つまり、弥生は…
「幽霊…?」
「うん。そうなの」
「それっ…じゃあッ…」
「ごめん、言い方を間違えたね。
死に掛けているの。
私は事故にあってね。
それで今、眠っているの。
目覚める確立は…ゼロに近い」
「でもっ!ゼロってわけじゃッ!!!」
「うん。でも生きていても眠っている状態。
それで今は…幽体離脱の状態」
「…」
それじゃあ、ここは…
ここは何だ?
何なんだ?
「疑問に思っているでしょ?ここのこと」
「ッ!」
「ここはね…。夢の中だよ。私たちの夢」
「俺たちの…?」
「うん。でももっと正確に言うと三途の川…かな」
つまり、この場所は…
「死んでいる人しか来れないはずじゃ…」
「うん。だから夢なんだよ」
「夢…」
「死者と生者の夢が行き交う道。夢行路」
夢行路。
それは三途の川。
それは死者が生者を導く夢の場所。
夢。
幻。
「夢香露…」
夢香露。
あの飴だ。
夢。
香は行。
露は路。
あわせて夢行路。
この場所に来るためのもの。
「夢香露。まあ、簡単にいうと…渡し賃」
「三途の川で船に乗るための渡し賃が夢香露か…」
六文。
六文だったはずだ。
俺は彼女にもう、それ以上渡してしまっている。
「うん。ごめんね。言えなくて」
「いや、いいよ」
良くない。
全然良くない。
「それじゃあ、さようなら…」
「あ…」
待て!
行くな!
逝かせるな!!
まだ、まだ!!
伝えていないじゃないか!!
言え!!!
言うんだ!!!
「コウちゃんと話した時間。とっても楽しかったよ」
「…い、行くな。逝かないでくれ!!」
「ダメだよ。もう、ダメなんだ…」
「そんなこと無いだろう!!
まだ、完全に死んだわけじゃあ、無いんだろう!?」
「ううん。もう、無理だよ。私は死ぬの」
「諦めるなよ…逝かないでくれよ…」
俺は弥生を抱きしめる。
この手に…離さないように…
「無理なの…ごめんね…ごめんね…」
弥生は震えている。
おそらく泣いているのだろう。
「弥生」
「何?コウちゃん…」
「好きだ」
「え…?」
「弥生のことが好きなんだ…逝かないでくれ…」
「ありがとう。私も…私も好きだよ、コウちゃんのこと」
「たのむ。逝かないでくれ…」
「ごめんね…コウちゃん…大好きだったよ…」
「弥生ッ…!!」
「ごめんね。ありがとう、コウちゃん…」
ふと、唇にやわらかい感触。
俺はその感覚を…幸せを忘れないように…
弥生を抱きしめた。
十時にエピローグ投稿。




