第10章:生徒会長との初デートと、B70の真実
第10章:生徒会長との初デートと、B70の真実
生徒会長との初デート
週末、待ち合わせ場所に現れた麗は、いつもと違い、制服ではなく私服姿だった。風に揺れる柔らかなワンピースと、彼女の清楚な雰囲気にぴったりの白いカーディガン。その姿は、まさしく「可愛すぎる」の一言に尽きる。
「先生、お待たせしました。今日は、よろしくお願いします」
麗はそう言って、久我の冷えた手をそっと掴んだ。その小さな手は、久我の心を温かく満たしていく。まるで本物のカップルのように手を繋ぎ、二人はデパートへと向かった。
下着売り場での事故と告白の決意
二人はデパートの下着売り場へと足を踏み入れた。久我は少し気まずさを感じる。
「先生、どうしました?」
麗は、久我の顔を覗き込み、微笑んだ。
「あ、いや…こんなところ、初めてで…」
久我の言葉に、麗はクスッと笑った。
「ふふ、大丈夫です。今日は先生が、私に似合うブラジャーを選んでください」
麗は、いくつかのブラジャーを手に取り、試着室へと向かった。久我は試着室の前で待っていた。その時、きらびやかなレースやシルク、無数のカップやストラップが並ぶ下着売り場の光景が、久我の心をざわつかせた。過去に能力で人の心の闇を暴き、その人間関係を破壊してしまった記憶が、彼の脳裏に一瞬フラッシュバックした。能力は、久我にとって常に呪いだった。
すると、別の客が試着室のカーテンに手をかけ、久我に声をかけてきた。
「あの…すみません、この試着室、どなたか入っていらっしゃいますか?」
久我は慌てて「あ、いえ…」と答えかけたが、時すでに遅し。近くにいた店員がそのやり取りを勘違いし、「お客様、そちらでよろしいですか? はい、どうぞ!」と言いながら、カーテンを勢いよくスッと開けてしまった。
「せん…せぇ…!?」
久我の目の前には、ブラジャーを手に持ち、何も身につけていない麗がいた。彼女は驚きと恥ずかしさで顔を真っ赤に染め、両手で体を隠そうとした。久我は、生徒会長の完璧な姿とは違う、ありのままの彼女の、その幼い胸の完璧な美しさに、思わず息をのんだ。
麗は、すぐにカーテンを閉めると、中から嗚咽が混じる小さな声で言った。
「…先生…今のことは、内緒にしてくださいね…」
久我は、自分の心臓の鼓動がうるさいほどだと感じ、震える声に我に返った。そして、つい口から出たのは、思いもよらない言葉だった。
「君の裸も完璧な美しさだよ」
麗は、驚いて言葉を失った。久我もまた、自分の言葉に慌てて、自分の口を手で覆う。
「あっ、ごめん。ついね。あまりに美しすぎて、俺は…」
その言葉は、麗の心に深く響いた。
麗は、顔を赤くしたまま、意を決してカーテンを開け、少し俯き加減で久我の前に立った。彼女の手のひらは、冷や汗で濡れていた。
「…先生…今の姿も、本当の私じゃないんです」
麗は、悔しさと恥ずかしさが入り混じった表情で、久我にそう告げた。
「完璧なんかじゃありません!完璧なのは、あくまで外見だけです…先生が知っているのは、嘘の私なんです」
麗は、そう言って、自分の胸を両手で覆った。
「私の胸、先生はB70だって知ってますよね?でも、学校では、生徒会長として完璧な私でいなきゃいけない。だから、見せかけの自分を演じるために、無理してパッドを入れたり、胸を大きく見せるブラジャーを着けてたんです」
久我は、麗の言葉を聞き、震える彼女の冷たい手に、そっと自分の手を重ねた。
「麗さん、君は、そのままで完璧だよ」
久我の言葉に、麗は驚いて顔を上げた。
「僕の能力は、人の弱さを暴く呪いだと思っていた。過去にも誰かを傷つけた。でも、麗さん。君と出会って、それは『真実の自分を認めるための光』なんだって気づいた。」
「君が悩んでいるその胸は、君という人間を構成する、大切な一部だよ。無理に隠そうと、他人に合わせて大きく見せようとする必要なんてない。君が、ありのままの自分を誇れるようになるまで、僕はそばにいる。だから、君のその胸を、僕たちの未来を照らす、君自身の『自信』にしてほしい。」
久我の言葉は、麗の心を温かく包み込んだ。彼女は、久我の能力が、自分を傷つけるものではなく、自分を救うための「光」であることを、初めて心の底から理解した。
「先生…」
麗は、久我の言葉に感極まり、瞳に涙を浮かべた。
「ありがとう、先生。私、もう、無理して完璧な自分を演じるのはやめます」
麗はそう言って、涙を拭うと、パッド入りの派手なブラジャーを棚に戻し、新たに真っ白で、繊細なレースのブラジャーを手に取った。それは、彼女のありのままの胸を、優しく包み込むようなデザインだった。
「これにします」
麗は、久我に微笑み、新しい下着を手に、レジへと向かった。久我は、彼女の背中を、誇らしい気持ちで見つめていた。
映画館と食事
ブラジャーを買い終えた二人は、そのまま映画館へ向かった。映画館に向かう道すがら、麗は再び久我の手を握った。さっきよりも自然で、まるで二人の間に、下着売り場での事故が二人に特別な『秘密の繋がり』を生んだかのように感じられた。
二人が観たのは、一人の青年が不思議な能力を持つ少女と出会い、彼女の抱える秘密を知ることで、真の絆を築いていくというファンタジー映画だった。青年が知る「少女の秘密」は、彼女が自ら背負った『孤独』であった。
物語が進むにつれ、麗は久我の手を握る力を強め、時折、久我の顔をそっと見上げる。その瞳には、映画の主人公に自分を重ねるような、複雑な光が宿っていた。その横顔は、光の中では決して見せない、張り詰めた『生徒会長の仮面』を脱いだ、ありのままの少女の表情だった。
映画を観た後、食事をとった。麗は、映画の感想で口を開いた。
「少女が秘密を打ち明けた時、青年がそれを『呪い』ではなく『個性』として受け止めたのが、とても素敵でした」
久我は、静かに頷いた。
「秘密は、誰かに打ち明けて初めて、自分を縛る呪いから、二人を繋ぐ絆になるんだ」
二人の距離は、まるで本物の恋人のように縮まっていく。
運命のキス
デートが終わり、久我と麗は駅で別れを告げた。喧騒に包まれた駅の片隅で、二人だけの時間がゆっくりと流れていく。麗の顔には、もう生徒会長としての完璧な仮面はなかった。そこにあったのは、ただ一人の少女が持つ、ありのままの表情だった。
「先生、今日は本当にありがとうございました」
麗はそう言って微笑んだ。その笑顔は、これまでの彼女のどの表情よりも、温かく、そして、美しかった。久我は、心の底から安堵していた。彼の能力が、誰かの心の闇を暴き、傷つけるだけの「呪い」ではないと、心の底から信じられたからだ。
「俺も、楽しかったよ」
久我の言葉に、麗の顔が赤く染まる。すると、麗はそっと久我に近づき、彼の手を取った。その小さな手は、まるで壊れやすいガラスのように震えていた。
「先生…」
麗は久我の瞳を真っ直ぐに見つめた。その眼差しは、彼の能力が暴いた、あの幼い胸の秘密を、恥じるのではなく、受け入れた者の強さに満ちていた。
そして、麗は背伸びをし、久我の唇に、そっと、触れるだけのキスをした。
「先生、私の胸、聞いてください」
麗は、そう言って、久我の胸にそっと手を添え、彼の体を自分の方へと引き寄せた。そして、彼女の小さな胸を、久我の大きな手に、そっと重ねた。
「大丈夫です…先生の能力は、私にとって、もう呪いなんかじゃないから」
彼女の言葉は、久我の心を温かく包み込んだ。久我は、震える手で、彼女の柔らかな胸を、優しく包み込んだ。その瞬間、久我の脳裏に、彼女の記憶が、光の粒となって降り注いだ。それは、孤独な幼少期、生徒会長としての重圧、そして、誰にも言えなかった胸の秘密。彼女の人生の断片が、まるで走馬灯のように駆け巡り、そして、その全ての物語の終わりに、彼の存在があった。
久我の能力が、初めて、他者の『愛』と『希望』を映し出し、過去の『闇』を焼き消す炎に変わったことを確信する。
彼女は、久我の能力が、自分を救うための「光」だったことを知っていた。このキスは、久我への感謝であり、彼の能力が持つ「呪い」を、「愛」に変えるための、彼女からの祈りだった。
唇が離れ、麗は久我の耳元で囁いた。
「せんせぇ…ありがとう。あなたのくれた光が、私を救ってくれた」
彼女の言葉は、久我の心を深く揺さぶった。彼の「呪い」が、誰かの心を救う「光」になり得たのだ。
麗は、久我の頬に、もう一度、深く、温かいキスをした。
「今度、先生のお家行くね」
麗の言葉は、ただの誘いではなかった。それは、自らの全てを預けるという、彼女からの決意表明だった。
「その時は、今日買ってもらった下着、つけてくるから…」
麗は、そう言って、久我に背を向け、手を振りながら、駅の改札へと消えていった。
久我は、その場に立ち尽くし、ただ、彼女が去っていった方向を見つめていた。彼の心の闇を覗く「呪い」は、今、彼女という最高の「希望」と出会ったことで、誰かを守るための、何よりも尊い「光」へと変わったのだ。




